映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年10月07日

『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』マイケル・チミノ

year-of-dragon-bt1.jpgimg_540197_26155024_0.jpg
Year of the Dragon

私は男臭い映画が好きな割にはマフィアものが苦手なのだが、マフィアものが苦手というのは男臭い映画を好きとは言えないのかもしれないな。多分男の夢はマフィアものにあるのだろうから。
とにかく小さな街中で男の夢だとかプライドみたいなものを掲げていい気になっている物語というのがどうしても馬鹿馬鹿しくてうんざりしてしまうのだが、それでもマフィアものというのは一つの社会を描く幾つかの設定の中で底辺だとか闇だとかを描くにはもっとも判り易く効果的で強烈なのだろう。
アメリカ映画でイタリアンマフィア作品の数は多いし名作もあるが、チャイニーズマフィアをここまで描いたものはないだろうしこの後作られてもいないかもしれない。それは彼らが自分たちをアメリカ社会で大っぴらにするのはよしとしなかったのかもしれないが。
そして主人公スタンリー刑事と同じくらいのバランスでマフィアの新ボスを描いているというのもアメリカの他の作品にはないのではないか。

ある種の均衡を保っていたチャイナタウンと周辺と警察の関係がスタンリー刑事の着任と亡き義父に代わって新ボスとなったジョーイ・タイの過激な行動によって急変してしまう。
チャイニーズマフィアの様相はイタリアンのそれとは(映画で観る限り)かなり違う。上層部と下で働くチンピラたちの重さがまるで異なっている。イタリアンはチンピラでも人間だが、チャイニーズの下っ端は人間ではない。ただの虫けら。その命には何の価値もないのだ。まだ子供のような彼らが何の存在価値も与えられないまま殺されていく様子はチミノ監督『ディア・ハンター』に描かれるベトナム戦争でのベトナム人たちの死と同じように見える。

チャイナタウンの奥はよそ者であるスタンリーにもまたアメリカ生まれの中国系アメリカ人である女性TVリポーター・トレイシーにもよく見えないのだろう。すべては謎に包まれていて奥の奥、底の底があるように思える。祖国から移住してきた人々はアメリカが建設されていった昔鉄道を引く為に過酷な労働に従事しその名を残されることもなく死んでいった先人たちと変わりない。彼らは香港からの移住者が多かったそうだが、このチャイナタウンの住人も香港系なのである。カナダのマーは普通語を話しているので彼らとは違う出自になるのだろうか。
新ボスとなるジョーイはアメリカ生まれではなくやはり香港出身で苦労してこの座まで登ってきた男らしい。そのためにやり方が過激で波乱を起こしてしまったのだろう。

スタンリーはポーランド系で彼もアメリカではあまり優位な立場ではない。彼のチャイニーズマフィアへの入れ込みというのはそういう劣等感も関係しているのかもしれない。

カンフーと関係なしにアメリカで有名になった中国系男優はジョン・ローンくらいかもしれない。本作でのジョンのクールなかっこよさは当時人気のあったミッキーと互角であった。
あの美貌でもってアメリカ映画でも活躍するのでは、と思っていたがやはり東洋系の需要というのはないものなのだな、と気づかされてしまった。
しかしジョン・ローンのかっこよさもあるのか、この映画は日本ではかなり人気があるようだ。
私も『ゴッドファーザー』がその成り立ちが面白かったようにこの映画もチャイナタウンの混沌とした様相が垣間見えるだけでもとても興味深い作品だと思う。

監督:マイケル・チミノ 出演:ミッキー・ローク ジョン・ローン アリアーヌ ヴィクター・ウォン レナード・テルモ アリアーヌ ヴィクター・ウォン レナード・テルモ カロライン・カハ
1985年アメリカ


posted by フェイユイ at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。