映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年10月12日

『未来は今』ジョエル・コーエン

6a00c2251e13128e1d00fa96a27d390003-500pi.jpg005131_24.jpghudsucker_proxy.gifhudsucker_proxy_the_1993_685x385_jpg_595x325_crop_upscale_q85.jpghudsucker-proxy.jpgthe-hudsucker-proxy.jpg
The Hudsucker Proxy

ティム・ロビンス主演作品であるとともにコーエン兄弟作品としても大いに楽しめる。
時代のせいなのか、まだコーエン兄弟が若いからなのか若干どたばた騒々しすぎる気はするが、アメリカンドリームファンタジーと言うべき作品。
クリスマスではなく大晦日ではあるが雪の降るニューヨークはファンタジックな雰囲気がある。
生き馬の目を抜くビジネス街で田舎出身のよく言えばピュアはっきり言えばお馬鹿な男ノーヴィル・バーンズ(ティム・ロビンス)が職を求めてさまようが愚図な彼がようやく入り込んだのは大会社の郵便物の仕分けという仕事。一応田舎のマンシー大学卒だとはいえ都会の猛烈なスピードになかなか追いつけない。
ところが折も折、会社の創設者で社長であるハッドサッカー氏が謎の自殺を遂げたのだ。第二の男であるシド(ポール・ニューマン)は会社の株を一旦引き下げて買い占める為に最も馬鹿で言いなりになる男を社長にしようと画策する。そこで目をつけられたのが例のマンシー出身の駄目男ノーヴィルだった。

どうしてこうティム・ロビンスってお馬鹿な役が似合うんだろう。ちょうど同じ年にあの『ショーシャンクの空に』を主演しててこちらは物凄く頭の良い銀行家(ただしお人よしなのは同じだが)で複雑な心理状態を演じ分けて見せているのに。ここでのノーヴィルの間抜け顔を観てるとほんとにお馬鹿にしか見えないから凄いもんである。しかもあのでかい図体がほんとに邪魔っけで余計愚図に見えてしまう。与えられたエプロンがすんごく小さくてティムが着けてるとますます笑える(ちゃんと大きいのだってあるよね。わざとよだれかけのように見せてるんだろう)
共演のポール・ニューマンは悪役だがスマートで実にかっこいい。

だけど恋に落ちる女性エイミーとは「カルマ」だとか輪廻の話なんぞをするロマンチストでもある。前世、彼女がガーゼルで自分はアンティロープでちょっと角をこすっただけかもしれない、とか変てこな空想を広げて行くのがおかしい。
ちょい昔の映画になってしまうが昨今の経済情勢を表しているかのようにも思えるのは結局こういう話っていつも変らぬものなのかもしれない。
ちょいかっこいいティムも好きだけどこっちのお馬鹿ティムはもっと好きかもしんない私。時折見せる天才的なひらめきもまた素敵。
思い切り笑って少しロマンチックな部分もあって楽しませてくれる映画だった。

監督:ジョエル・コーエン 出演:ティム・ロビンス ポール・ニューマン ジェニファー・ジェイソン・リー チャールズ・ダーニング スティーブ・ブシェミ ジム・トゥルー
1994年アメリカ


posted by フェイユイ at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | ティム・ロビンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ショート・カッツ』ロバート・アルトマン

short_cuts.jpg
SHORT CUTS

群像劇の一人としてティム・ロビンスが出演している作品。浮気中で妻子とは上手くいっていない無神経な印象の白バイ警官という役だった。

昨日観たどうにも出来損ないのコメディに見せつけるかのように面白い皮肉めいたコメディなのである。登場人物も物語もそれぞれに分かれていながら判り易く楽しめる、上手い映画と言うのはこういうものだと思わせてくれる。冒頭などはいきなりロサンジェルス上空からヘリコプター数機が突如発生した「メドフライ」なる害虫駆除の為に殺虫剤を噴霧していく、というSFめいた異常事態から始まるのだが、それに続く登場人物の顔ぶれと生活はごく普通の人々のそれだった。
描かれていく家族・夫婦・親子たちの関係はよくある話ながらすれ違いや軋轢のある歪んだものが多い。それぞれの夫婦が浮気や別居や疑惑不満の中にある。子供たちはそんな両親の間で揺れ動く。
様々なエピソードの中で最も衝撃的なのは唯一固く愛し合っている夫婦の一人息子が自動車事故に遭ってしまう、というのではないだろうか。
というか、実は私はこのエピソードを以前短編集の一つとしてこの物語だけを覚えていて折につけ思い出すのだが作者が誰なのかをすっかり忘れてしまっていたのだ。この映画がどういう経緯で作られたかを知らず観ていたので突然知っている話が群像劇の一つとして描かれていくので驚いてしまった。観賞後にこの作品がレイモンド・カーヴァーの短編の幾つかとオリジナルを組み合わせで出来たものだと知って納得したのだった。
それで自分にとってはあの子供のエピソードが一番くっきりと印象付けらるのだが、小説の段階でも他のを忘れてあの話だけを覚えていたのだからやはり自分には強い印象を残す物語なのである。それはまだ幼い我が子が突然の事故で死んでしまう、という悲しみとそれを知らずに注文されたケーキを無駄にされたケーキ屋の主人の怒りという偶然から起きた悪意と悲しみそして和解の時の「こういう時には美味しいパンを食べることがいくらか悲しみを和らげてくれるものです」と言う言葉が賛同するという意味ではなく妙に気になって残っていたのだった。私としてはその言葉に賛同はしないが、もしかしたらそういうこともあるのかもしれない、とは思う。
そしてこれは小説にはなかったか、別の短編かオリジナルかもしれないが同じ夫婦の男性の方へ数十年来に訪ねてくる父親のエピソード。
数十年前この父親は息子の叔母に当たる女性と浮気をしていた時折悪しく息子が自動車事故にあって入院する。息子の母親は夫がこんな時に妹と浮気していたことにショックを受け離婚することになり、彼の弁明を聞いてもくれなかった、と彼は言うのだが、彼の孫にあたる幼子が事故で死にそうな時にそんな話をする無神経さと可愛い孫の怪我を前に動揺もみせない冷淡さを見れば彼が何故離婚し弁明も許されなかったのか。我が子の事故の際も自分の弁明だけを心配し息子の事故に慌てふためき嘆き悲しむような愛情を見せなかったからではないかと思うのだ。息子がその息子の事故で動揺している時に自己釈明をし、孫の事故に落ち着いている愛情のなさは彼が長い間疎遠になっていただけの理由ではない彼自身の薄情さにある。

そして他のエピソードにもそれぞれの愛情のすれ違い、欠けたものが描かれていく。妻に何の気なしにキャンプ中に若い女性の溺死体を見つけた話をする男なども無神経の一つで黙っていればいいのに。
そして妻がテレフォンセックスのバイトをしているという男性の物語。一見何の変哲もなかった彼が突如友人と共にナンパした若い女性を殴り殺す。何故か同時に大地震が起こりロサンジェルスの街を揺るがす。そして静寂が訪れ、街とそこに住む人々は再び日常を繰り返していく。
ニュースではあの男が殺害した事件が地震での事故として報道される。

害虫の大量発生の為の殺虫剤散布という異常事態から始まり大地震という異常事態で幕が下りるがその間の出来事は日常茶飯事の出来事なのだ。そこには笑いも涙もあり憎しみも愛情も存在し、それらは毎日繰り返されることなのである。
天変地異が起きても政府の陰謀がなされても人々の生活は繰り返されていく。
アルトマン監督と登場する俳優陣によって3時間に及ぶ群像劇を楽しむことができた。
ティムはここではまったく冴えない一人の警官になりきっている。彼の役として何度かバイクに乗っているのがちょっとうれしい。バイク乗りが好きなのだ。

監督・:ロバート・アルトマン 出演:アンディ・マクダウェル ブルース・デイビソン ティム・ロビンス ジュリアン・ムーア マシュー・モディン クリス・ペン ロバート・ダウニー・Jr トム・ウェイツ リリ・テイラー ジャック・レモン
1993年アメリカ
posted by フェイユイ at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ティム・ロビンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。