映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年10月16日

『青髭』カトリーヌ・ブレイヤ

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LA BARBE BLEUE

カトリーヌ・ブレイヤ監督という存在をまったく知らなかったし、『青髭』というような童話を映像化した作品と言うのは当たり外れが大きいのでできるだけ期待しないようにして観たのだが、これはなかなか好みな出会いだった。ただ解釈としては斬新だとか衝撃的とかいうものではないようだ。

『青髭』というタイトルのみで観たのはこれがシャルル・ペロー原作だという理由ではなく、無論これがジル・ド・レイを意味しているのかも、と若干の狙いもあったのだが。
その点は全く外れていてジル・ド・レイのように少年を集めては惨殺する、という含みはなかったようだ。
ただ幼い少女が姉にぺローの『青髭』を読んで聞かせる(ちょっと変な設定ではあるな)場面が幾つかのパートに分かれて出てくるのだが唐突に少女が「結婚した後、二人は同性愛になるの」みたいな変なことを言いだすのが少しだけジル・ド・レイを意識したのかもしれないし、青髭が結婚相手を選ぶ場面があるのだが、何故か少女たちだけでなく綺麗な少年たちも集まっていたのは無意味だけどそういう含みもあったのか。またマリーたちの家に青髭の招待を告げに来た若者は青髭を好いていたようである。まあ本筋に関係ないことばかり勘ぐってもしょうがない。

さて本作は『青髭』を元にブレイヤ監督が独自の表現をしたということで昔、厳格な私立女子校で寄宿生活を送っていた姉妹が父親の死で学校を追い出され帰宅すれば父の残した借金のせいで家財道具は持ち出され食べるものもない、という生活を送ることになる。困窮した母娘に青髭の招待があり、姉は醜い青髭(と言う設定になってるがさほど醜くはないちょい太めな男性)を忌み嫌うが妹は何故かそんな青髭を気に入り結婚してもよい、と思う。青髭も彼女を妻として招き入れる。
ここまでは確かにかなり違うがこの後の展開は進行としては原作とあまり変わらない。青髭が長い間家を出ることになり妻に大きな鍵束を渡しどの部屋も自由に使って友人や姉を呼んで娘らしく楽しむがいい、という。やがて帰宅した青髭は妻が遊んでいるのを見てやや苛立っている。だが「自由にしていいと言ったでしょう。寂しかったわ」と言う妻の言葉に落ち着く。暫くしてまた青髭は家を留守にすると言いまたあの鍵束と今度は小さな鍵を一緒に渡し「これは地下室の秘密の部屋の鍵でお前は絶対に開けてはならない」と言うのである。
鍵を渡して絶対に開けるな、という童話にお決まりの約束ごとで勿論妻はこれを守らず鍵を開ける。
果たしてそこには青髭の前妻たちの死体がぶら下がり床は血の海になっている。彼女は鍵をそこに落とす。鍵についた血は決してとれないのだ。青髭はすぐに帰ってきて妻の裏切りを知り彼女を殺そうとする。
普通に考えて、これは権力的な夫が妻に従順性を求める、という物語だ、ということになる。
愛していると言う妻の言葉を信じ切れず、本当なのかテストしてみる、そして案の定彼女が裏切ったのを見て怒りで彼女を亡きものにしようとする。まったく理不尽な言動で多くの妻が夫のこういう横暴な言動を経験する、ということなのだろうか。
しかしこの後、青髭は駆け付けた男たちに取り押さえられ殺される。これは原作がそうなっているわけで皿の上に首が置かれている、とうのは絵としては幻想的だが、衝撃というものではない。
本作が独特に思えるのはこの本筋に現代の少女の姉妹の物語を絡ませていることで最も衝撃的なのは小さな妹が『青髭』を読み聞かせるのを怖いからと嫌がっていた姉が部屋の床に開いていた穴から下の階へ落ちて死んでしまった、という描写の方だろう。しかも奇妙なことに母親は落ちている姉にまったく気付かず、かといって「また苛められたの」とか聞いているから姉の存在がなかったのでもないようだ。一体これがどういう意味なのかは判らない。姉の死は、童話を怖がっていた姉が穴から落ちて死ぬという、すぐそばにある恐怖に気づいていなかった、という皮肉なのだろうか。

全体の雰囲気もとても好きだったのだが、青髭がどこへ何をしに行ってたのか、とか、何故彼は前妻たちを殺していたのか、とか何故「私は何の希望もない一匹狼だ」みたいなことを言っていたのか、何故彼はお金持ちなのか、などの解釈も聞きたかった気がする。

青髭、というのは本当の青い髭じゃなく、この映画で観ても判るように黒い髭のことであるらしい。
多分彼は西洋人じゃなく東洋人、極東じゃなくアラブ系なのではないだろうか。そこから来る謎めいた恐怖感や残酷性をイメージさせているのではないだろうか、と思ってしまうのだが。

フランス映画と言うのはいつ観てもどこか感覚がその他多くの国の映画とは違っている。しかもエロチックである。
も少し突っ込んだ表現もあって欲しかった気がするが、それでも非常に気になる映画であった。

監督:カトリーヌ・ブレイヤ 出演:ドミニク・トーマス ローラ・クレトン ダフネ・ベヴィール
2009年フランス


ラベル:童話
posted by フェイユイ at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ベン・ウィショーの詩朗読が聴ける!!『Words For You』発売予定

いつものことながらふぇでり子さんの「ベン・ウィショー情報」で慌てて検索したらば!

       下をクリックしてください  ↓

ベン・ウィショーの朗読が聴けるCD『Words For You』
ふぇでり子さんの情報によりますと
『ところで「Words for You」というタイトルで音楽と誌の朗読を組み合わせたアルバムが
発売されるらしく、収録される27編の詩のうちの2つ(一つはキーツの詩)でベンが朗読を担当するのだそうです』(『ザ・バンク 堕ちた巨像』トム・テイクヴァの記事のコメントより)
だそうです。
確かに4. To Autumn by John Keats (read by Ben Whishaw)
20. Dulce Et Decorum Est by Wilfred Owen (read by Ben Whishaw) となってますね!!!
わー!!なんてうれしい!!ふぇでり子さん素晴らしい情報ありがとうございます!!!!

This title will be released on November 16, 2009.となってますから11月16日発売ですか。興奮!!!これは絶対買わねば!!ですぞ。
ふぇでり子さん、感謝しきれません!!

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こういうのも出るそうです。
Criminal Justice (2pc) (Ws) [DVD] [Import] (2008)
ただしリージョン1。注意。
posted by フェイユイ at 00:40| Comment(5) | TrackBack(0) | ベン・ウィショー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ザ・プレイヤー』ロバート・アルトマン

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THE PLAYER

昨日の鬼才デ・パルマが唖然な内容だったのでより今回の鬼才アルトマンに期待したが、さすがにこちらは面白かった。
先日観た『ショートカッツ』同様皮肉たっぷり薄笑いを浮かべて眺める作品である。
本作のティムは若くてかっこよさげな業界人。お間抜けな表情と人の良さは今回は封印だが、根本的に気の小さい人間なのは彼の作品の共通点みたいだ。これが彼の体のでかさとアンバランスでおかしいのである。

映画業界の内幕話をくすくす笑いながら観て行くことになる。「映画に必要なもの・・・とにかくハッピーエンドだ」という台詞。『自転車泥棒』もハッピーエンドにしてくれと言ったり。
映画は娯楽か芸術か。さあてねえ。私にとっては作品によってその両方の要素が色んな配分で入っているものであって「映画」という一言ですべてを一括りにはできないだろうし。その上本作はそのどちらでもないが面白いのは確か。アルトマン監督はあえてそういう作り方をしたんだろうけど。
ティム・ロビンス演じるグリフィン・ミルは映画会社の重役で映画化する脚本を選ぶのが仕事である。1年に何千本という脚本を差し出され(全部読んではいないだろう)「OK」というのはそのうちの12本だと言う。
彼の属する会社は経営状況が危機にあり、彼自身は敵会社から引き抜かれたライバル出現で首になる恐れを感じていた。そんな折、ミルの元へ「お前は脚本家の敵だ。殺す」といった内容の絵葉書が続けざまに送られてくるのだった。
ティム=ミルは窮地に立たされた焦りと脅迫される恐怖から苛立っている。なんとか犯人と思える脚本家を見つけ出し、穏便に話し合いをしようとするが相手の傲慢な態度にかっとなったミルはその男を殺してしまう。
殺した男にはちょっと風変わりだが美しい恋人がいてミルは話をするうちに彼女に恋をしてしまう。

ストーリー展開はいかにも業界にありがちだと思えるものなのだが、語られる映画についての考えだとか、登場人物の顔ぶれの多彩さとか何と言ってもティム・ロビンスの小狡そうな表情だとかに惹きこまれてしまう。マルコム・マクダウェルが出てたのも驚いたがそういえばアルトマン監督の『バレエ・カンパニー』に出演してたっけ。ティムと恋に落ちるジューンはグレタ・スカッキ。ベン・ウィショーの『情愛と友情』でセバスチャンのパパの愛人の女性。ここではすっごく若くて綺麗なのだ。『情愛と友情』でも綺麗だったけどね。

私は映画の撮り方の違いだとか、見極める力がないので残念だが、映画のあれこれに詳しい人ほどこの作品、色んな仕掛けが見えるのかもしれない。
ティムとグレッタのラブシーンがいきなり濃厚な雰囲気だったのがびっくりであれも誰かの映画風なのかもしんない。

最後の仕掛け映画でホントにジュリア・ロバーツとブルース・ウィリスが登場したのも笑える。
そしてラストシーン。まったく幸せではないのに殺人者がお咎めなしで元の恋人も手酷く捨てたのに嘘のようなハッピーエンド。おなかの大きくなったジューンと熱いキスをするミルだが彼らが幸福になれるとは全然思えないのがおかしいのである。

この時期。ロバート・アルトマン監督、日本びいきだったのか、いつもそうなのか知らないけど、やたら日本と言う言葉が。没になった脚本が「日本に留学したアメリカ学生の物語」っていうのもなんだかうなづける。ヒットはしないだろうな。

監督:ロバート・アルトマン 出演:ティム・ロビンス グレタ・スカッキ フレッド・ウォード ウーピー・ゴールドバーグ ピーター・ギャラガー
1992年アメリカ
posted by フェイユイ at 00:21| Comment(2) | TrackBack(0) | ティム・ロビンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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