映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年10月23日

『オリバー・ツイスト』デビッド・リーン

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OLIVER TWIST

先日観たベン・ウィショーの動画で彼が「初めて観たミュージカル映画が『オリバー』で」と言っていたのでつい気になって観賞。多分ベンが観たのはこれじゃなくてマーク・レスター主演のだと思うけどレンタルできる『オリバー』映画が3作あってマーク・レスターのは私も観賞済みだし、とりあえず昔のから観てみるかということで1947年作のこれから観てみる。監督はなんとあのデビッド・リーンだけあって、知っている内容とはいえ、非常に見応えのある映像だった。

陰影のきついモノクロ映像がロンドンの貧民街を描くのにはぴったりである。遠くから映した橋のある風景などまるでファンタジックな雰囲気を持っている。
過酷な運命が待っている幼い少年オリバー・ツイストの物語だが、ぽんぽんと進行していくせいかさほど深刻にはならず(と言うのは褒め言葉にならないのかもしれないが)楽しんで観ることができた。
孤児の少年たちにスリをさせているユダヤ人フェイギンのぎょっとするような怪異な容貌だとか、犬を連れた乱暴者サイクスとその愛人ナンシーなどのキャラクターは他の多くの作品にも影響を与えているのではないだろうか。
観賞した『オリバー!』のマーク・レスターはすこぶるつきの美少年だったのでこちらのオリバーはどうだろうかと思っていたのだが、同じように金髪でやや面影も似ているような可愛らしい少年でもっと痩せている分、本作のオリバー君の方がらしい気がする。
物凄く奇怪な鼻を持つフェイギンはなんとアレックス・ギネスであった。フェイギンというのは少年たちの親分と言うことにはなってるがそれほど少年たちを虐待しているわけでもないのだった。そのせいもあってこのスリの一味はなんとなく楽しげに見える。孤児院から葬儀店でのオリバーの生活が悲惨だっただけにロンドンのこのスリ集団は自由で面白そうに見えてしまう。
物語自体は可哀そうな運命に翻弄されるいたいけなオリバー少年が実は・・・というハッピーエンドでそれほど感銘を受けるようなものではないのだが、彼を取り巻く人々や街の描写などが魅力的で観てしまうのだろう。オリバーは何もしないという指摘もあるようだが、一応「お代り欲しい」を訴えたり、母親を侮蔑した男が自分より遥かに大きいにも関わらず飛びかかったり、スリ集団にも興味を持って仲間入りしているとは思うのだが。

映画としては極めて忠実に映像化しているという作品なのだろうが、重厚な味わいのある締まった作品になっているのはさすがにデビッド・リーン監督の手によるものだからだろうか。
細身の美少年を愛でる方にも必見の作品だ。

ところで、ベン・ウィショー、子供の時に演じるなら孤児のスリ少年ならまさにぴったりなのにフェイギンを真似たりしてた、っていうのが面白い。サイクスと比べても非常に陰影のある役だし、優しいような部分もあったり複雑で難しいキャラクターなのだが。さすが、ベン、風変わりな性格を感じさせる。

監督:デビッド・リーン 出演:ロバート・ニュートン アレック・ギネス ケイ・ウォルシュ ジョン・ハワード・デイヴィス アンソニー・ニューリー
1947年イギリス


posted by フェイユイ at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ミスティック・リバー』クリント・イーストウッド

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Mystic River

ティム・ロビンス作品を今回観続けている中で一度観たのだがもう一度観てみたいと非常に思ったのがこれなのだが、それは好きだったからではなく、面白いと思ったのにも拘らずすっかり内容を忘れてしまっていたからで、自分の記憶力のなさは自覚してはいるもののさほど時間が経ったわけでもないのにと自分自身にあきれ果てている次第である。
まあもう一度新鮮な気持ちで観れるんだから得であると言えばそうだが。
とにかく観直してもなかなか思い出せないまま最後まで観続けた。

記事も以前に書いていてどうでもいいようなことを書きならべているのだが、結局人生というのは悪い方に行くにしろ、いい方に行くにしろ、自分の思うようには進まない、ということなのであろうか。
冒頭の少年たちのちょっとしたいたずらが見知らぬ大人に見咎められ、子供の無知と無力さで言われるがままに車に乗せられてしまう。それは3人の少年のうちジミーでもショーンでもなくデイブだった。
とんでもない人生の貧乏くじを受け取ってしまったデイブは一生消えない心の傷を負ってしまう。それは11歳の少年が二人の大人の男に監禁され性的暴行を受け続けるという悲惨なものであった。
こんなに恐ろしい事件と比較して申し訳ないが自分も少女の時に公道である職業の器物破損をやってしまったことがあり、今思えばそれは公道に物を置いていたその人物が悪いので今だったら文句をまくしたててやれるのだが何も判らない少女だった自分はその大人にすごまれて真っ青になって帰宅した記憶がある。他人が聞けばどうでもいいような小さなことなのだろうがン十年経った今でもしょっちゅう思い出し苛々してそいつを殺してやりたくなる。子供だと思って怒鳴りつけるなんて、なんて卑怯な大人なんだろう。今でも同じ職業の人を見ると関係ないのにむかついて復讐したくなる。
また、ちょっとした事故でうっかり見知らぬ男の車に乗ってしまったこともあるし、怪しい男に声をかけられぞっとして逃げ出したこともある。
子供時代ってそういうもしかして一歩間違えばどうにかなっていたのかも、という事件がたくさんあるのではないか。そこを何事もなく乗り越えて行くのは稀であり、程度の差はあれ、何某かの傷は負ってしまうものではないだろうか。

勿論傷を負うのは子供時代だけではない。
そして成長し多くの人と関わりを持てばまた様々な事件に遭い傷を負う。子供時代と違い戦うことはできてもそれだけに複雑な骨折をすることになるんだろう。
ここに登場する人々は皆何らかのすれ違い、勘違いをしてしまい、人生を狂わせてしまう。皆同じように幸せになりたい、と願いながらも間違った選択をしてしまうのだ。
デイブは自分の悩みを秘密にしていたことで妻に疑いを持たせ、妻は無実の夫を密告してしまった。
ジミーは愛する娘ケイティーを殺害された疑いを彼女の恋人ブレンダンや友人デイブに向けてしまった。ジミーの妻は夫の前妻の娘に嫉妬心を持っていたし、夫の間違った行動を是認してしまった。ブレンダンが弟を可愛がるあまりに、弟は兄の恋人に嫉妬し殺害したのではないだろうか。
ただ一つ思わぬ行動が幸せに結びついたのはショーン(ケビン・ベーコン)の言葉で別れた妻が戻ってくることになったことだろうか。
そして残った幼馴染のふたりは失ってしまった3人目の友人の悲劇がもし自分のものであったらと考える。彼の運命は自分がたどったのかもしれない。
(とはいえ、加害者の好みを思えばはしっこそうなショーンやすれた感じのジミーよりおっとりしたデイブに目をつけていたんだとは思うんだが)
誰もが苦悩し、幸せを求めながらも人生は思うようにはいかない。町には大きな川が流れ、その川が彼らの人生を飲み込み流れていくかのようだ。

3人の幼馴染を演じているショーン・ペン、ケビン・ベーコン、ティム・ロビンスは同じくらいのバランスのうまさを持っている。とはいえ、アメリカ男性としてはショーンのような切れた男はやりたくても、ティムの演じた少年期に男から性的暴行を受けたトラウマから逃れきれず人生の敗北者となって死人のように生きている男、というのはあまり演じたくないのでは、と思うのだがどうだろう。
ここでのティムは彼が言うように吸血鬼のように死んでいるのに彷徨っている人間、なのである。彼はあの少年の時に自分を死なせてしまったのだ。もしもジミーが彼を殺害しなければ、生き返ることもできたのかもしれない。人生は自分の思うようにはいかないのだ。
ここでのティムはもう可愛らしさとかいうものもすべて失っているようだ。がっくりと肩を落とした抜け殻の男。彼にとっては息子を見守ることだけが生きがいだったのかもしれないのに。
ショーン・ペンは正直言って好きにはなれない俳優なのである。上手いのだが、何故か心惹かれない。しかしやはりこういう切れた男の役はぴったりである。
ケビン・ベーコンは逆に凄く好きでここでの役もよかった。幸せになれ多分、役者としては損だったかもしれない。

私自身、デイブと同じように自分を傷つけた犯人にはもうできない復讐を「同じことをやっている奴」にしてやりたい、と思っている。

監督:クリント・イーストウッド 出演:ショーン・ペン ティム・ロビンス ケビン・ベーコン ローレンス・フィッシュバーン マーシャ・ゲイ・ハーデン ローラ・リニー エミー・ロッサム トム・グイリー スペンサー・トリート・クラーク
2003年アメリカ
posted by フェイユイ at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | ティム・ロビンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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