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2009年11月15日

『今宵、フィッツジェラルド劇場で』ロバート・アルトマン

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A PRAIRIE HOME COMPANION

最近になってロバート・アルトマン作品をぼちぼちと観続けたのだが、晩年になるほど面白くなっていくような凄さがあるな。
これなんか、年寄りの為の年寄りによる映画という風情で思い切り渋いのだが作り方はエネルギッシュで情熱溢れると思うのだがどうだろう。

『ゴスフォードパーク』では素晴らしいオールドイングリッシュな世界を楽しませてくれたアルトマン監督がここでは戻ってじっくりアメリカの演歌的世界を堪能させてくれる。
実を言うとカントリーって凄く苦手で聞きたくはないのだが、もしこの映画をそのまま日本に置き換えて演歌というか昭和の歌謡番組の年取った歌手たちの話にしたなら(昭和歌謡曲も一部を除いてかなり苦手)どちらも歌もだがあの雰囲気というかあの人間関係というかあの感じがたまらなく鳥肌ものなのだ。
というとこの映画なんてまったく観れなくなってしまいそうだが、そういうゾゾゾ感も含めて極めて演歌調のこのムードを楽しませてもらったのだった。アルトマン監督でなければ、さすがに受け入れがたかったかもしれない。
最後のダイナーで出演者たちが今後の話をしている光景なんかも思い切り日本的演歌的に見えてくるのは何故なんだろう。あの雰囲気。

打ち切りになるラジオ番組の公開生放送の模様の舞台上と舞台裏をなんとも上手く取り混ぜながら出演者たちの人生を物語っていく。
歌手たちは誰もかれも年取った男女で打ち切りにならずとももう引退してもいいような年齢。だが、歌を愛し歌い続けたいと願っている。
長年続けてきた番組だから出演するのもなんだか余裕ありである。それぞれがそれぞれの持ち味を生かして歌っていく。
そこへ一人登場する若い娘。出演者の一人(メリル・ストリープ)の愛娘なのだが生き生きとした老人たちと違い自殺だとか殺人だとか死のことばかり興味を持っているのがおかしい。そういうものなのかもしれない。
だが突然の演出で娘が歌い始めるとこれが凄く愛らしくやはり瑞々しいのである。年老いた者から若い者へやはり歌は受け継がれていくんだろう。

アルトマン作品は前回でも唸ったが勢いがある半面実に細かい部分にも色んな細工をしているというさすが熟練工の腕前なのである。
登場する人の名前や台詞にも抜かりなく面白さを加えている。
美人の天使役も特別な意味があるのだろうなあ。無論彼女は天使で死へと誘うのであるから、彼女の姿を見た最後の彼らは。

これがアルトマン監督の遺作となったのだが、最期に我が身と重ねながらも彼らしい皮肉めいた面白い作品を作るとは。
まったく持ち味の変わらない技量にも感心するしかない。

監督:ロバート・アルトマン 出演:ウディ・ハレルソン メリル・ストリープ トミー・リー・ジョーンズ ケビン・クライン リンジー・ローハン バージニア・マドセン リリー・トムリン ギャリソン・キーラー


ラベル:人生 音楽
posted by フェイユイ at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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