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2009年11月29日

『チャイナタウン』ロマン・ポランスキー

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CHINATOWN

ポランスキー観賞シリーズもこれで4作目になる。今までの感想がどれも「優れた演出だがどうしても嫌悪感を覚えてしまう」というものばかりだったのだが、本作はまったくそういうことを忘れてしまうほど面白かった。

とは言え、作品自体は彼の持ち味ではあるだろうが非常に重くやり切れない暗い影が覆っている。それはむしろ私には好ましい雰囲気であるし、ラストの苦々しい後味もどんよりとした空気もたまらない魅力であった。

不思議に思うのは、私は煩いほど言ってるのだがハードボイルドが嫌いなのである。
そこに登場する気だるさを売り物にしてその気になってるような主人公の男に反感を持つのが通例のことであった。
なのにポランスキーが作ったハードボイルドに今までにない好感を持ってしまったというのは一体どういうわけなんだろう。
マイナスとマイナスでプラスになってしまったということか。

というのは出まかせだが、一つは主人公が大好きなジャック・ニコルソンで彼はあまり男の美学みたいなものをちらつかせたりしないからなのと確かに本作では彼がいかにもタフガイというような活躍する場面もなく従ってかっこつける見せ場もなかったからかもしれない。
ジャックが演じるジェイクは社会の巨大な力に対しては個々の人々はどうしても抗えないのだという無力感を味わうだけの惨めな存在でしかない。
私は今まで観たポランスキー映画に登場する女性がいつも流されるだけでしかないのが嫌悪の対象だったし、本作はハードボイルドの定番として他以上に運命から逃れきれない女性の憐れさが描かれているのだが、この物語としてはそれこそが作品の堪え切れないほどの虚無感を生み出すことになっている。
一見凛としているように見えるイブリン(フェイ・ダナウェイ)が説明することもできない恐ろしく惨めな過去を持ち、好きになったジェイクにだからこそ言えない、という悲しさとやっともう少しで手に入れられる幸せが一瞬にして砕かれてしまう最後は他の映画でも感じたことのない悲しいものだった。
演出はいつものように冴えまくっている。
やっと出会えた愛する娘と車で走り去るイブリンが黒幕である父親の手先でしかない警官に撃たれ死んだことが、彼女が倒れて鳴りやまないクラクションで示される。
イブリンもその娘も権力を持つ男たちに翻弄されるしかない悲しい存在なのだ。そしてジェイクもまた己の惨めさを噛みしめるしかない。

『チャイナタウン』というタイトルにも惹かれてしまうのだが、一瞬先に何が起こるか誰も判らないという混沌とした街を思わせてくれるのだろう。
この作品だけでも私にとってポランスキーはやはり優れた映画監督の一人として数えてしまうだろう。

ずっと昔観ていたのに記憶になかったのはしょうがない。これはかなり大人の作品ではないだろうか。ポランスキー監督自身がチンピラヤクザに扮してジャックの鼻にナイフを突っ込んで切り裂く場面以外は淡々とした展開である。実に重厚な深みのある物語で苦い味が舌に残る、という映画なのである。

監督:ロマン・ポランスキー 出演:ジャック・ニコルソン フェイ・ダナウェイ ジョン・ヒューストン バート・ヤング ペリー・ロペス ロマン・ポランスキー
1974年アメリカ


posted by フェイユイ at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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