これはミステリーそのものより舞台設定というか登場人物というか、に物凄く惹かれてしまいミステリーそっちのけでもっと観たい気がしてしまった。
と。自分は凄く気に入った作品なのだが、一般的にな評判はいまいちのようだ。つまりロボットが出てきて殺人やらアリバイやらに関係してくることはミステリーファンの多くの方には芳しくないことなのだろうか。
私もミステリー好きではあるが同じくらいロボットが好きな人間なのだ。TVで「ロボット競技会」みたいなのがあると夢中で観てしまう。特に本作に出演の『禁断の惑星』のロビーはロボットおたくとしては(と言える資格はないが)シリーズ出演俳優として最大のゲストである。
コロンボとロビーが握手する場面なんてまさに感動ものなのだ。
そしてそのロボットを開発且つさらに教育しているのが天才少年スティーヴン・スペルバーグ。このネーミングにもにんまりだが、この科学の天才少年と推理の天才コロンボとの会話も大変楽しいもので、これにあのお馬鹿犬でお馴染みのコロンボの愛犬が登場し、ロボットに犬の世話をさせる、という珍妙な場面が出来上がり全く愉快この上なし、なのだ。
などとロボット&コロンボですっかり満足なのだったが、物語も今回はかなり他と毛色が違う。
天才ばかりがいるというシンクタンクの面々が出演者なのにも関わらず今回ほどしんみりとした話はなかった。今までの物語はほぼ己の欲望を満たすのが目的で己の嫌疑を晴らす為なら何でもやる、という話だったのが今回は息子の為の犯罪であり息子に嫌疑がかけられた時自分の罪を白状してしまう、という人情物になっている。
無論この父親は元々息子を支配下においており、息子の名誉や恥はそのまま自分に返ってくるわけだから愛情と言うものではない、と言われてしまいそうだが、それでも今までの冷酷な犯人像からすれば(名作『別れのワイン』の犯人など最も冷酷な人間だ)その愚かさも含めコロンボ作品の今までの中では最もお涙な物語だった。
また天才少年スティーヴン君も「怪物だ」と敬遠され今まで子供扱いされたことが殆どない、という可哀そうな少年でコロンボから「遊びたくてたまらない子供に見えるよ」と言われ一気に彼を好きになってしまう。「また会いに来てくれる?」と聞くシーンはちょっと悲しくなった。だってこの先もうコロンボは会いにいかないよな。しんみり。
さて今回の脚本は3人がかりのようだが中に例のスティーヴン・ボチコが入っている(おや彼もスティーヴン)いつも彼は他と違うセクシー路線、とからかっているのだが、今回はえー、「父の研究所の職員である年配の男性とは親子ほども年の違う女性」と多分彼女より年下の青年が何やらモーテルで密会していたのだが、皆さんが考えるようなふしだらな関係ではない、という奴(というのはコロンボの仕組んだ罠なのだが)と、天才少年とコロンボ、そしてロボットおたく的な感情、というところだろうか。ん、いや父親の息子への歪んだ愛情、というのが一番の変わった愛情(というほど変わってはいないかも、だが)かもしれない。
コロンボの駄犬への愛情、というのもあるが。
ま、セクシャル、と言っていいかどうか。
ロボットとミステリー。自分的には非常に心惹かれる組み合わせである。
監督:アルフ・ケリン 脚本:スティーブン・ボチコ ディーン・ハーグローブ ローランド・キビー
1973〜1974年アメリカ