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2009年12月01日

『刑事コロンボ 完全版 Vol.2』 「構想の死角」

Murder by the Book

パイロット版が終わり、本作が真に第一作となるのだな。
その一番目の物語がミステリー作家の殺人事件というなんだかちょっと内輪話みたいだね。
スピルバーグが監督したということもあってシリーズの最高傑作とも言われているらしい。そこまであるかな、という気もするし、普通に感想書いてもしょうがないんで脇道にそれてみよう。

本作に登場するミステリー作家は二人組という設定になっている。メルビル夫人という探偵を主役にして十何冊という作品を出す売れっ子小説家なのであるが片っぽのジムが「シリアスなものを書きたい」という理由でコンビ解消を申し出るのだ。
しかし一体何故彼はコンビを解消しようとしたんだろう。

ところでアメリカではコンビを組んで書いている小説家、というのは多いのだろうか。日本ではあまり聞かないような気がする。マンガ家なら何組か存在するが、やはり作家のコンビの存続というのは、難しいものなんだろうか。
本作ではしかも実際の小説を書くのは片方だけで、片方は出版社との交渉、TV出演、インタビューを受けたりすることを担っていたという不思議なコンビである。
無論、小説家の本領は小説のアイディアを出し文章を書くことだが、ケンがしつこく「僕らの本」だとか言うのは、彼は書かなくても自分がこの本を作り上げたんだという自負心を持ち続けていたんだろう。
だが、いざ相棒が独立宣言をしてしまうと自分には何もなくなってしまう、という自覚が彼に襲いかかってしまったはずだ。
コロンボ自身ケンに同情する、というようなことを最初に言っているのだが、作家でなくても同じようなコンビ、というのは他にもあり得るかもしれない。

このドラマでは登場人物の心理状態というのを細かく説明はされないのだが、ケンの心理はそれなりに探ることはできるだろう。コンビとしての自負心を持ちながらケンは収入をジムと分かち合ってきたのだろう。半々だったんだろうか。ケンはどこかで劣等感を感じることを打ち消してきたに違いない。またその反動で彼は豪華な生活や派手な女性関係を楽しむことで自分の仕事と収入を納得していたのではないだろうか。
持ち前の社交的才能でジムの書いた小説を売りだしたり、TV出演することでさらに人気を延ばしたかもしれない。想像するしかないが二人の人気の片棒は確かにケンが担いでいたのかもしれないのだ。
もしケンがジムを殺さないでいたらどうなっていたんだろう。ジムという人の人格はよく知る前にいなくなってしまうのでよく判らないが、それでも幾つかのエピソードで彼の性格が表現されている。
いきなり真面目な顔で相棒がピストルを向けても怒りもせず彼を信頼しきっているようだ。ジムは妻が待っているからと断るのをケンから唐突に別荘へ連れて行かれても言われるがままに電話をかけて嘘の言い訳をしたりしてる。しかもそれは5年前とは言えケンがアイディアを出したトリックなのである。
どうしてジムはここで「変だ」と思わなかったんだろう。作品ではジムは様々なアイディアを出す天才だが、ケンはたった一つしかトリックを思いつかなかった凡才だということになっている。
頭の良いジムが何故ケンの言いなりに行動してしまったんだろう。
若干二人の関係がホモセクシャルなものだったのかも、という気もするのだが、そうでないとしてもジムがケンに対して尋常でないほどの信頼感というか依存心を抱いていたに違いない。でなければ何故それほどの才覚を持った人物がただ他人と対応するだけの役割をする人間とコンビを組まなければならなかったのか。ジムという人間がそういった外交を全くできない人格だったからではないのか。
それなら何故ジムの方から解消を持ちかけたのか。結婚したことで何らかの自信を持てたのかもしれない。
随分時間はかかっているようだが。
それでももしかしたらコンビを解消した後、殺されてなかったらジムは一人で作家を続けることができず結局コンビ復活となったかもしれない。あくまでも「かも」だが。ジムはシリアスを書くことを理由に解消を申しでたのだが、果たして彼がシリアスで成功するのか、一人で作家活動をしていくことができるのか、は未知数なのだ。

ケンは早まったのではないか。それこそ推理ができなかったのかもしれない。

ジムの妻はケンのことを信頼しているようだし、「彼はとてもそんなことをするような人ではない」と言っていることから嫌な人間ではなかったはずだ。
小説家は本を書くことが基本だがそれ以外の煩わしい部分をケンが切り盛りしていたのだからそのまま続けてもよかったのではないだろうか。
ジムもまたケンの心理と行動を推理できなかった。それは彼との間に強い信頼があると信じ切っていたからなのかもしれないが。

一体何故優しそうなジムがケンを切り捨てるようなこと、つまり彼の収入がなくなるのが判るはずなのにそういうことをしたのか。
二人のケンカがどんな内容だったのか。コンビ解消を「離婚」と言ったのはケンのほうだったか。
殺人に至らず暫く期間を置いてみたら「再婚」もあったかもしれないのに、勿体なかった。

だからここで示されていないケンカ内容がそれでもコンビ解消しなければならないような「理由」に基づくものなのではないか、ってことなんだよね。

監督:スティーブン・スピルバーグ 脚本:スティーブン・ボチコ出演:ピーター・フォーク / ジャック・キャシディ / マーティン・ミルナー / ローズマリー・フォーサイス / バーバラ・コルビー
1971〜1972年アメリカ



posted by フェイユイ at 00:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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