映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年12月01日

『刑事コロンボ 完全版 Vol.2』「指輪の爪あと」

Death Lends a Hand

いやあ、面白いね。こうやって続けて観てるとより特徴も掴めてくる、というわけで。
コロンボ作品の特徴は今更言うことでもないけど、まず先に犯人の動機が判り殺人現場と犯人がどうやってそれを隠していくかを観客が観ることから始まりコロンボ警部の登場となるのだが、コロンボ警部が犯人にあった瞬間ほぼその時に彼はそいつが犯人だと直感している。後はコロンボ流ののらりくらり戦法で犯人やその周辺の人物を嫌がられるほどしつこく嗅ぎまわって(失礼!)犯人を追いつめていくのである。
その手法は番組のパイロット版から説明されている通り小柄で貧相な容姿で相手を油断させどうにも間抜けな話しっぷりで相手をかく乱させながら少しずつ謎を解き明かしていく。
その話術が醍醐味なのでこのドラマだけはその訳の見事さと小池朝雄氏の話しぶりを聞かずしてはコロンボが成立しないのである。
あまりにもそこんとこがミソなので肝心のミステリーがややお粗末でもさほど気にならないうえに非常に優れたTV作品だと思い込んでしまうのかもしれない。

というと何だか少々作品を揶揄しているようだがそういう意味ではなくてそれほどコロンボというキャラクターと訳と声優の合わせ作られた魅力が比類ないものだと言いたいのである。
コロンボ作品を観てておかしいというか気になるのはコロンボにとっくに見破られている犯人がいつも同じようにコロンボを馬鹿にし、言わなくてもいいことを言ったり、しなくてもいいことをしたり、彼の挑発にまんまとかかってしまうことである。
やはり真犯人というのはこういうものなのか。それとも実際にはコロンボ以上にのらりくらりと挑発をかわす犯人もいるのだろうか。というか。まだシリーズ観始めたばかりだ。これから先つわものも出てくるのだろうか(皆さん!別に教えてくださらなくていいですよ^^;観て行きますか)
今回の犯人は用意周到な計画的殺人では全くない衝動殺人という設定が却って珍しい。犯人は被害者となる女性のスキャンダルを掴むことで彼女を利用しようと企む。新聞社社長の妻と言う立場を利用して政治スパイをさせようとしたのだ。だが生真面目な性格だった彼女はその申し出をはねつけ彼の要求を新聞社社長である夫に話すと逆に脅す。かっとなった彼は彼女を殺してしまう。
昨日の作品に引き続き謎なのは「何故殺したのか」ではなく「何故殺されたんだろう」ということである。
これを言ってしまうとミステリードラマにならないが、夫に全部打ち明けて彼の行いもすっぱ抜くつもりなら、その覚悟があるのだったら何故彼の家へ行く必要があるのか。そんなことを女一人で告げに言ったらただではすまないと判りそうなものだ。物語としては何らかの彼女がどうしても彼の家へ行かなければならない理由、もしくは彼が彼女のいる場所へ押し掛けるか、どちらかにしなければ納得しにくい。
今回、首をかしげたのはその点だけなので昨日の作品よりまとまっているが、だからと言って昨日より物凄く面白いというわけではなく、物語というのは一長一短あるものだなと思わせられる。無論これも面白い『コロンボ』作品の中で、という意味合いである。

コロンボは「かみさん」始め多くの親戚を話に取り入れるのだがよくもまあ色々と関連性のあるエピソードがあるもんだ、というわけもなくこれも皆コロンボの作戦なのだろうが一体どこまでが本当なんだろう。全部嘘だとしたら少し寂しいし。
最後も犯人の車がタイミングよく故障したのをコロンボは自分の少年時代いい車を見ると排気管にジャガイモを突っ込んでエンジンをかからなくする悪戯の話で匂わせる。被害者の夫がもしや、と犯人の排気管を覗きこもうとして止めるという演出がうまい。無論その通りだったんだろう。大人なら判るはず、という見せ方である。
昨日も「早とちりは為にならず」という教えをいただいたが今回も「短気は損気」ということであった。どっちにしたって犯人にとっては身の破滅ではあったろうが。被害者には行く必要もない場所へ行く必要はなかったのに、と格言をあげたい。

監督:バーナード・L・コワルスキー 脚本:レヴィンソン&リンク
出演:ピーター・フォーク ロバート・カルプ レイ・ミランド
1971〜1972年アメリカ


posted by フェイユイ at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『刑事コロンボ 完全版 Vol.2』 「構想の死角」

Murder by the Book

パイロット版が終わり、本作が真に第一作となるのだな。
その一番目の物語がミステリー作家の殺人事件というなんだかちょっと内輪話みたいだね。
スピルバーグが監督したということもあってシリーズの最高傑作とも言われているらしい。そこまであるかな、という気もするし、普通に感想書いてもしょうがないんで脇道にそれてみよう。

本作に登場するミステリー作家は二人組という設定になっている。メルビル夫人という探偵を主役にして十何冊という作品を出す売れっ子小説家なのであるが片っぽのジムが「シリアスなものを書きたい」という理由でコンビ解消を申し出るのだ。
しかし一体何故彼はコンビを解消しようとしたんだろう。

ところでアメリカではコンビを組んで書いている小説家、というのは多いのだろうか。日本ではあまり聞かないような気がする。マンガ家なら何組か存在するが、やはり作家のコンビの存続というのは、難しいものなんだろうか。
本作ではしかも実際の小説を書くのは片方だけで、片方は出版社との交渉、TV出演、インタビューを受けたりすることを担っていたという不思議なコンビである。
無論、小説家の本領は小説のアイディアを出し文章を書くことだが、ケンがしつこく「僕らの本」だとか言うのは、彼は書かなくても自分がこの本を作り上げたんだという自負心を持ち続けていたんだろう。
だが、いざ相棒が独立宣言をしてしまうと自分には何もなくなってしまう、という自覚が彼に襲いかかってしまったはずだ。
コロンボ自身ケンに同情する、というようなことを最初に言っているのだが、作家でなくても同じようなコンビ、というのは他にもあり得るかもしれない。

このドラマでは登場人物の心理状態というのを細かく説明はされないのだが、ケンの心理はそれなりに探ることはできるだろう。コンビとしての自負心を持ちながらケンは収入をジムと分かち合ってきたのだろう。半々だったんだろうか。ケンはどこかで劣等感を感じることを打ち消してきたに違いない。またその反動で彼は豪華な生活や派手な女性関係を楽しむことで自分の仕事と収入を納得していたのではないだろうか。
持ち前の社交的才能でジムの書いた小説を売りだしたり、TV出演することでさらに人気を延ばしたかもしれない。想像するしかないが二人の人気の片棒は確かにケンが担いでいたのかもしれないのだ。
もしケンがジムを殺さないでいたらどうなっていたんだろう。ジムという人の人格はよく知る前にいなくなってしまうのでよく判らないが、それでも幾つかのエピソードで彼の性格が表現されている。
いきなり真面目な顔で相棒がピストルを向けても怒りもせず彼を信頼しきっているようだ。ジムは妻が待っているからと断るのをケンから唐突に別荘へ連れて行かれても言われるがままに電話をかけて嘘の言い訳をしたりしてる。しかもそれは5年前とは言えケンがアイディアを出したトリックなのである。
どうしてジムはここで「変だ」と思わなかったんだろう。作品ではジムは様々なアイディアを出す天才だが、ケンはたった一つしかトリックを思いつかなかった凡才だということになっている。
頭の良いジムが何故ケンの言いなりに行動してしまったんだろう。
若干二人の関係がホモセクシャルなものだったのかも、という気もするのだが、そうでないとしてもジムがケンに対して尋常でないほどの信頼感というか依存心を抱いていたに違いない。でなければ何故それほどの才覚を持った人物がただ他人と対応するだけの役割をする人間とコンビを組まなければならなかったのか。ジムという人間がそういった外交を全くできない人格だったからではないのか。
それなら何故ジムの方から解消を持ちかけたのか。結婚したことで何らかの自信を持てたのかもしれない。
随分時間はかかっているようだが。
それでももしかしたらコンビを解消した後、殺されてなかったらジムは一人で作家を続けることができず結局コンビ復活となったかもしれない。あくまでも「かも」だが。ジムはシリアスを書くことを理由に解消を申しでたのだが、果たして彼がシリアスで成功するのか、一人で作家活動をしていくことができるのか、は未知数なのだ。

ケンは早まったのではないか。それこそ推理ができなかったのかもしれない。

ジムの妻はケンのことを信頼しているようだし、「彼はとてもそんなことをするような人ではない」と言っていることから嫌な人間ではなかったはずだ。
小説家は本を書くことが基本だがそれ以外の煩わしい部分をケンが切り盛りしていたのだからそのまま続けてもよかったのではないだろうか。
ジムもまたケンの心理と行動を推理できなかった。それは彼との間に強い信頼があると信じ切っていたからなのかもしれないが。

一体何故優しそうなジムがケンを切り捨てるようなこと、つまり彼の収入がなくなるのが判るはずなのにそういうことをしたのか。
二人のケンカがどんな内容だったのか。コンビ解消を「離婚」と言ったのはケンのほうだったか。
殺人に至らず暫く期間を置いてみたら「再婚」もあったかもしれないのに、勿体なかった。

だからここで示されていないケンカ内容がそれでもコンビ解消しなければならないような「理由」に基づくものなのではないか、ってことなんだよね。

監督:スティーブン・スピルバーグ 脚本:スティーブン・ボチコ出演:ピーター・フォーク / ジャック・キャシディ / マーティン・ミルナー / ローズマリー・フォーサイス / バーバラ・コルビー
1971〜1972年アメリカ

posted by フェイユイ at 00:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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