映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年12月05日

『刺青』増村保造

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久しぶりの増村保造だが、やはり面白い。しっかし恐ろしいタイミングというかまったくの偶然なのだが、昨日観て不満だったナタリー・ポートマンのアン・ブーリン!若尾文子に演じてもらったらよかったねえ。こういう色香を持つ悪女を想像していたんだが、まさか次の日、日本映画に登場してくるとは思わなんだ。

若尾文子が女優として活躍していた頃を知っているわけではないので自分にとっては映像の中だけの存在なのだが、目鼻立ちも体つきもどぎつさのない小作りのまるでお人形のような美しさに見えるのだが、日本女性にしてはちょっと低音の声でそれがまた悪女の色気を持っている。
本作の彼女は特に徹底した悪女となって描かれているのだが、それは彼女の白い背中に彫られた女郎蜘蛛が男の生き血を欲しがっているからだという理由なのである。
裕福な商家の箱入り娘であるはずのお艶は手代の新助と駆け落ちし、船宿の亭主の家へ隠れるが、悪党たちの算段で女郎として売り飛ばされてしまい、新助は殺されそうになってしまうのである。
ここまではよくある話といったところだが、このお嬢さん、まったく怖気づくこともなくまさに女郎蜘蛛の魂が入り込んでしまったかのように男たちから金を絞りとることに喜びを見出していくのである。なよなよとした愛らしい手弱女が人を殺すことすら何のためらいも恐れも見せず己の欲だけを満足させる姿はぞくぞくさせられる。
しかしそのお艶と恋仲になった新助は彼女との駆け落ちでさえすでにびくびくと怖気づき、お艶の変貌に愕然とし、人を殺すたびに焼かれるような苦しみを背負ってしまう。そのくせどうしてもお艶からは離れきれず彼女が他の男と体を重ねることには激しく嫉妬してしまうのである。

ここまで微塵も心が揺らがない悪女の表現というのはブニュエルなんかを思い出すくらいだろうか。
あまりに躊躇いなく恐ろしいことを口にし、行動する美しい女に見惚れてしまうのだ。

映像はきっぱりと計算された美しさがあり、艶が着る着物も今よく見るような類のものではなく、なんともお洒落で可愛らしい。着物を身につけていく様子、また脱がされていく過程も現在ではあまり観ることのできない美しい動作なのではないだろうか。
冒頭から縛られ、薬を嗅がされて気を失ったところをまっ白い背中に刺青をされていく、いかがわしい色欲に犯されていくそのままの表現としか思えない。
実際には彼女の裸も性的な場面もないのだがぬめぬめとした淫猥さに満ちている作品なおである。

このくらいの色香が昨日のアン・ブーリンにあったなら。といってもむしろそれを持つのはメアリ役のスカーレット・ヨハンソンのほうだが。

お艶のような美しい悪女に憧れてしまうのは自分がどうあっても絶対になりえない存在だからなんだろう。それは幸せであるのかもしれないが。

監督:増村保造  出演:若尾文子 長谷川明男 山本學 佐藤慶
1966年日本


posted by フェイユイ at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 増村保造 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ブーリン家の姉妹』ジャスティン・チャドウィック



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THE OTHER BOLEYN GIRL

いや、凄く面白く楽しんで観たのには間違いないがそれにしてもこれってなあ、なんだかお子様向け大河ドラマなのだった。

ホントはこういう大河ドラマってTVで毎週じっくりゆっくり時間が流れて行く方がちょうどいいのかもしれない。
とにかく物凄い駆け足で走り抜けていくのが時々おかしくてドラマと関係ない部分で笑ってしまえる。特にアンが王に嫌われフランスへ勉強してこいと追いやられたら2カ月で帰国する、という慌ただしさ、しかも大変身して今度はすっかり王のお気に入りっていう展開はさすがに苦笑を禁じ得ないぞ。
その上、史実とは(そりゃまあ色んな説があるだろうが)大きく異なったフィクションになっているようだが、そういう諸々があるとしてもなかなか面白く観てはいたのだが。

これはブーリン家の姉妹を対比して描いたものだろう。実際は姉妹が逆でアンが妹のはずだが、何故か本作では逆になっている。これは元々この話が史実そのものではない、という意味合いなのだろうか。
別に史実そのものでなくてもいいが(紛らわしいから本作での)妹メアリー(スカーレット・ヨハンソン)の優しく控えめな女性としての描き方は魅力的で納得できるが姉アンの傲慢さや上昇嗜好の演出は甘すぎてもっと豪胆で放埓だったのでは、少なくともどうせそのままではない対比ならもっと極端に描かなければいけないのではないだろうか。
それはナタリーがあまりに可愛いすぎるせいかもしれないし、記述では小柄でやせてて色黒系の不美人だったようなので、それでもなお王を惹きつけてしまう演出をしなければならないのに王がアンにそれほど夢中になっている気がしないのは致命的じゃないだろうか(3か月の付け焼刃フランス留学ではなあ)もっとえげつない悪女に仕立ててもよかったと思うのだがどうにも中途半端にいい人なのがつまらない。どうして弟との近親相姦はしなかったことになっているのか。

ヘンリー8世の描き方も甘々でどう考えたってこいつが元凶なのにハンサムな容貌でいい人に思わせられるのは変な気持ちである。

それにしてもヘンリーとアンの娘エリザベスはやっぱりこうして観ると女性でよかったんだろうな。美形好きなのは父母ともの影響のようだが女王であるからこそ自制ができたのかもしれない。

エディ・レッドメインはここにも出演。やはり血筋の良さということでの起用なのだろうなあ。しかもいいとこだけ持っていくお得な役どころであった。

監督:ジャスティン・チャドウィック 出演:ナタリー・ポートマン スカーレット・ヨハンソン エリック・バナ デヴィッド・モリッシー クリスティン・スコット・トーマス マーク・ライランス ジム・スタージェス ベネディクト・カンバーバッチ アナ・トレント エディ・レッドメイン 
2008年アメリカ/イギリス

ラベル:歴史
posted by フェイユイ at 00:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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