映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

『フランティック』ロマン・ポランスキー

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FRANTIC

これまたポランスキー非常に上手い、非常に楽しめる、そしてやはりとても暗い彼のテイストが溢れんばかりの作品だったなあ。

前回観た『赤い航路』よりもソフトでしかも娯楽性が強いので結構軽く楽しめるのだが、そのくせやはりミステリアスな美少女だとか淫靡な雰囲気だとかなんともやるせないラストだとかはしっかりロマンらしさを表現している。と言ってもエマニュエル・セニエはこれに出てから『赤い航路』で妖艶な美女(というか美少女と言う方が似合ってるのだけど)を演じているのだね。たどたどしく愛らしい英語は共通してる。

医学学会で発表する為パリを訪れたアメリカ人医師リチャード・ウォーカーとその妻サンドラ。ホテルに着きリチャードがシャワーを浴びていた僅かの間に妻が忽然と消えてしまった。
ちょうどその時かかって来た電話で話した後、サンドラは何者かに連れ去られたようなのだ。
果たしてサンドラの行方は。言葉の通じないフランスで頼りないパリ警察に愛想をつかしながらウォーカーは走り回る。

ゆったりとした導入部からとんでもない事件に巻き込まれていく、という展開はポランスキーの形式のようであるが、どれもとてもいいのだよな。これはまた車で移動しながらパリへ入り込んでいく風景が私好みでたまらないのである。
シャワーを浴びている間に妻が消えてしまう、というのはなんだかヒッチコック風な感じ。ヒッチに負けないくらいのユーモア感覚もたっぷり含みながらハリソン・フォードらしい男っぽいアクションも楽しめる。
ハリソンが大柄でいかにもアメリカ人らしい武骨な感じなのもキュートで、どんどんわけが判らなくなって追い詰められ、泣き出してしまうのも可愛いのである。
大げさには演出しないのだが笑わせてくれるユーモアのセンスは本作でもたっぷりなのだが、男らしいハリソンが女の子が渡っていけた屋根の上をぐらぐらしながら歩いて結局滑ってしまい大切な謎を秘めたスーツケースを屋根の上のアンテナに引っ掛けてしまい中身がばらばらに落ちていく顛末は高所恐怖症(私が)なので怖いやらおかしいやらで困ってしまった。可哀そうなのはハリソン=ウォーカーで彼こそがずるずる滑る屋根の上で縮みあがった上に愛しい妻を助ける鍵であるスーツケースの中身をばらまいてしまい、靴を脱いだら靴下ごと落ちてしまい踏んだり蹴ったり。ついに裸足で歩かねばならない惨めな姿になってしまう。
しかも女の子をかっこよく助けようとしたら思い切り殴られて気絶。アーメン。
奥さんが行方不明、多分誘拐で笑いごとではないのだがでかすぎて頭をぶつけてしまうようなハリソン=ウォーカーが女の子に助けられながらパリを彷徨う姿は情けなくもいじらしいのであった。

ハリソン=ウォーカーが一途な男性らしくエロチックな少女には誘惑されず、ひたすら妻を探し続けるのはちょっとじーんとしたりして。
エマニュエル演じるミシェルはどうしてあそこまでこだわってしまったのかなあ。この辺のつきつめ方が次の『赤い航路』でも発揮されてるようである。
若い女の子とおじさんであるウォーカーの食い違い方もどこも同じだな、という感じでこれもおかしい。
セニエが出てるのもあるが本作と『赤い航路』は共通点が多いのかもしれない。
パリが舞台で異国人(本作がアメリカ人であちらはイギリス人)がパリに対して憧れと溶け込みきれない感覚がある。それはエマニュエルが演じるパリの少女によってさらに強く印象付けられる。裕福だが平凡で幸福な夫婦が危機を迎え再び幸福を取り戻す。
それはやはりパリとパリの少女という異国人には憧れの存在によってもたらされる不思議な体験なのである。

監督:ロマン・ポランスキー 出演:ハリソン・フォード ベティ・バックリー  エマニュエル・セニエ 
1988年アメリカ
posted by フェイユイ at 23:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『第一容疑者 1』

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PRIME SUSPECT 1

70年代アメリカ警察物『コロンボ』を観てるのに90年代イギリス警察物に手をつけてしまった。主演はヘレン・ミレンさすが20年前なのでかなり若い、と言ってもそんなには若くないので(笑)あるが。
いやあ、70年アメリカ警察物と違って暗い暗い。思い切り惨たらしい裸の死体が出てくるし。独り舞台で事件をあっという間に解決してしまうコロンボと違って(約100分ほど)前後篇合わせて180分という長丁場。前篇だけ観て止めればなんてこたないのだが、気になって気になってそんなこたできまへん。せめて今回だけでも、と観通してしまった。
警察内部で信頼され切ってるコロンボ警部と違い、本作ヘレン・ミレン扮するジェーン・テニスンは今回からその座に就いたのであるが前警部の急死による急遽着任というか彼女がごり押しでその地位に就いたという陰口を叩かれ以降女性蔑視の差別の中で初仕事に取り組んでいく。
アメリカ警察物に比べるとどことなく日本の警察物に似た感のある地道な捜査活動。これぞと思う容疑者はいるのだがそれを実証する為に四苦八苦する。ここではコロンボ的名推理はないのだよねえ。
というか、一人コロンボ並みに閃いたのはジェーンでも彼女の相棒的存在の男性でも他の男たちでもなく署内でこまごまとした雑務をこなす女性なのがちょっとおかしかったりもしたのだが、多分これは女性が活躍する、ということでの彼女の閃きだったのだろうな。だってあれが全てを決めたわけで、どうして他の奴はピンとこなかったのやら。やれやれ。

なにしろヘレン=ジェーンはプライベートでは、これってやっと一緒になれた、みたいな関係なんだよね、みたいな彼から「仕事仕事でまったく俺のことなんかこれっぽっちも考えてくれないっ」てんですったもんだの挙句逃げられてしまったようなのだ。とほほ。
仕事では彼女を目の敵にしていた嫌〜な奴が実は犯罪と関わりがあって途中から消えてしまい、そいつに焚きつけられて女性上司に不満だった部下たちも次第にジェーンを認め一丸となって容疑者を追及していく。最後は男性部下たち皆から事件解決の祝福を受けることになるのだが、容疑者は依然己の無実を言い張る、という苦い後味がイギリスものらしい感覚であった。

実に渋い作品で昨日観た『劔岳』の幼稚さの真逆のような味わい。あの作品もこういう大人の苦さを持っていて欲しかったねえ。この渋さ、止められなくなりそうだ。
女性差別ってここまで酷いのか、と思ってしまうのだが、実際もっと辛いものなのかもしれない。
途中突然登場するテレンス・アムソンは一体何者?子役の少年が可愛かった。

監督:クリストファー・メノール 出演: ヘレン・ミレン トム・ベル ジョン・ベンフィールド ジョン・ボー トム・アダムス ジョン・フォーゲハム ジョン ハウ ゾー・ワナメイカー
1990年イギリス
ラベル:犯罪 警察
posted by フェイユイ at 00:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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