映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年02月09日

『チェチェン・ウォー』アレクセイ・バラバノフ

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VOYNA/WAR

今、すっげえ興奮しててどうしよう、頭混乱してます。
っていうのはまたすげえ映画観てしまって、ってさっきもそんなこと書いたのに何興奮ばっかしてんのかと言われそうだが、どうしようもない。

今度の興奮は映画そのもの、というより主人公イワンを演じたAleksei Chadovアレクセイ・チャドフ。最近こんなに可愛い子観たことないってくらい好きなタイプでどうしよう、どうしよう。
まだ少年のような顔立ちでちょっと小柄な体つきがたまりません。
一体この映画って。
アレクセイ・バラバノフ監督って先日観た『ロシアン・ブラザー』でもセルゲイ・ボドロフという童顔な可愛い青年を主人公にしてドンパチやらせるのが迫力あってかっこいい映画にしていたんだけど、その5年後に作られたこれもめちゃキュートな少年(のわけないよな、こんな映画で)っぽい男子主役で一見物凄く好戦的な作品を作ってしまった。
『ロシアン・ブラザー』の方がまだ社会派的な要素があって認められると思うのだがこちらは徹底的に描写が酷いんで戦争嫌い(戦争好きっていうのもどうか、だが)には叩かれそうな作品になってしまってる。
でもこれはこれで主人公が義理と人情の部分で巻き込まれていって戦争をやってしまったらどんな結果が待ち構えているか、っていうのを結構きっちり描いている硬派な作品に仕上がっている、と私は思う。
思うのだが、今日はそれどころじゃない。
この主人公ってアメリカだったらなんか筋肉むきむきのおっさんが(それはそれでいいが)演じるとこなのだが、バラバノフ監督はまるで可愛い青年にやらせてしまったのである。
はっきり言ってこれはアレクセイのりりしさ、愛らしさを表現したいがためのイメージフィルムではないの。思い切り短くした髪もちょっと傷をつけたまだ愛らしい顔もほどよく細身な体もうわーん、私がゲイの男だったら絶対背後から抱きしめたいほどエロチックで我慢できない。

気の毒なのはチェチェンの兵士たちで(気の毒がっていいのかよくわかんないが)彼の魅力を映しだす為の標的となってしまったのだ。
彼らの捕虜となってしまったアレクセイ=イワンとイギリス人の男女と他数名はチェチェン側に身代金200万ポンドという大金を要求されてしまう。
イギリス人ジョンは恋人のマーガレットを人質として取られ単身イギリスへ戻るが金は全財産をかき集めても40万ポンドにしかならずTV局から一部始終をカメラに収めることで20万ポンドを約束された。
ジョンは仕方なく集めた金を持って共に保釈されたロシア人イワンを訊ねる。イワンは途方に暮れたジョンの手助けをすることに決めた。

数年軍隊にいたとはいえ若いイワンの捕虜救出の為の戦いぶりは凄まじく前作『ロシアンブラザー』での主人公のクールな戦いっぷりがここではさらに本格的な戦闘として描かれる。
イワンの攻撃はただジョンの恋人マーガレットを救うことが目的なのでチェチェン人への殺戮はある意味常軌を逸しているのだが無論そこで生ぬるい正義を持ちだしていれば自分達が殺される敵地なのである。
とはいえ、そういう状況を作り出して凄惨な殺戮場面を作り上げるこの作品に反感を持たれてしまうのも否めない。
ただイワンが正義の味方で敵の命は奪わない、という描き方をしていないのはむしろ正当でこの後彼が殺人者として裁判にかけられる、という最後も頷ける結果となっている。

が、しかし私の興味はひたすらイワン=アレクセイの魅力なんで、しつこいが、この映画が彼のプロモーション映像だと信じてしまうのである。
きびきびとした動きのなんと美しいことか。なんて危険な表現なんだけど。
斜め上から見た時の鼻のラインが愛しくてたまらん。
この興奮って『マッドマックス』でメル・ギブソンを初めて観た時に似てるかもしれない。そういえば缶詰を食べるシーンが似てる(馬鹿)
ああ、ロシア人ってお目にかかれそうにないなあ。
これの時からもう時間経ってるし、変わっちゃったかな。煙草を吸うのがこんなかっこいいって久しぶりに思った。

ところでイワンが物語を語っていく、というこういう構成も好きだ。それにこれでイワンが死んでない、ってのがわかる。逆にそれがスリリングじゃない、って言う人もいるかもしれないが、この作品に限ってはイワンを最後まで観たかったからね。
どこか暗い雰囲気もまたいい。私の書き方で随分酷い映画みたいになったかもしれないが、戦争や捕虜になることの恐ろしさ、自分で戦わねばならない責任感や社会がどう対処するのかを描いた作品なのである。
タイトルや写真が内容を反映しておらず残念だ。

監督:アレクセイ・バラバノフ 出演: アレクセイ・チャドフ イアン ケリー ユークリッド インゲボルガ・ダクネイト セルゲイボドロフジュニア インゲボルガ・タブクナイテ
2002年ロシア


posted by フェイユイ at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | アレクセイ・チャドフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『顔』阪本順治

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面白い奴を観てしまった。ほんとにこれってなんでこんなにおかしいんだろう。
っていうのはもう主演の藤山直美さんの凄さがほぼ理由の大半を占めている。物事を知らない私もさすがに彼女の芝居をしてるのもTVでちらりと観てずば抜けて上手いのは認識してるつもりだったけどいやもうずば抜けた凄さだった。

なんかほら、日本映画でコメディアンっていないって話があって確かにTVでは今お笑いの人がたくさんいて私も大好きなんだけどこと映画になってしまうと映画の作り手との呼吸もあるし映画で大笑いってあんまりないような気がする。三谷幸喜の映画とか観ずに言うなと言われそうだが。でもあの人の場合も普通の俳優さんたちでコメディアンっていうのじゃないみたいだし、さらに女優で笑いっていうのは皆無かな、なんて思ってたのがいっぺんに吹き飛んだ。なんという思い違いか。
もういるだけで悲しくておかしい、おかしくて悲しい。
牧瀬里穂演じる美人の妹と違い30歳過ぎてもまったく恋人も友人もなく実家のクリーニング屋の一室でひたすらミシンを踏み繕いものをして手伝っている娘。バージンである。少女マンガとTVドラマで恋愛を夢見ているのだからその気がないわけではなさそうだ。
優しい母親と違い美人の妹はそんな姉を疎ましく思って帰宅ごとに虐めていた。
そんなある日唯一の理解者である母親が急死する。妹は姉に対し「ずっとお姉ちゃんが恥ずかしかった。実家を店に変えて私と恋人が住んでいいのなら今迄の恥ずかしさを許してあげる」と言いだす。
姉・正子は「許さんでええ」と言って妹を殺し、家を出る。

今迄引きこもりで誰との接触もなかった正子が誰にも頼れない自分だけの力で逃亡生活を生き抜いていく。
今迄何もうまくやれなかった、自転車乗りも水泳も。セックスも女友達もいなかった。
そんな正子が親を失い、妹を殺したことで家を出てから何もかもを体験していくのだ。強姦されそうになったのがきっかけとはいえ男とのセックス(恋愛ではない)を体験し、ハンサムな男性にときめきを覚え、女性と友達になり、男性から好意も持たれるのだ。自転車に乗れるようになり水泳は浮輪つきでできた。
恐ろしいほど悲しくおかしい正子の逃亡生活はそのまま彼女が40歳を過ぎてからの青春であり成長である。
何もできないはずの正子は何もできない正子ではなかった。
家を出た途端あれもこれもやっちゃうんだもん。こんな短い間に(7ヶ月くらいと言ってたっけ)外で働くこともお化粧して人を楽しませることもできた。
一体正子は今迄なんだったんだろうなあ長い間何もできないと思い込んでいただけなんだ。
でもそれをやる為に美人の妹を殺さねばならなかった。
その代償がなければ正子は家を飛び出していけなかったのだ。
人生の中でこれを消すことができたら、と思うことがある。
正子が妹殺しをして家を飛び出したのでなければ律子さんの店でずっと働いていれたのに。
仕方ない。
正子はそこも飛び出しとある島の見ず知らずのお婆ちゃんの家で住み込んで働いてる。でもまたそこでも正体を知られ慌てふためく。
彼女が殺人犯だったことを知った島のお巡りさん達は大慌てで探し始めるが正子を見つけることができない。やっと発見した正子は海を横断している途中であった。泳げない彼女は浮輪に挟まって海原を前進していたのだ。

まるでパピヨンだ。

いやパピヨンを観た時は笑わなかった。感動の涙を覚えたものだ。彼の目の美しさに見惚れた。
なのに正子はおかしい。
おかしくて泣けてくる。その姿はまるで美しくなく見惚れない。
逃げる姿もかっこ悪い。男に犯されてもかっこ悪い。「あぁーっ」と悲鳴をあげても色っぽくないし、切なくない。犯された後の姿も色っぽくない。うう。
そんな無様なまったく綺麗じゃない正子がどの一瞬か綺麗に見えたりする。気の迷いかもしれない。
そんな正子を藤山直美はなんだかもうぼけえとしてるようで凄い感じで演じてみせてくれた。
周りの男達も女達も凄くよかったな。佐藤浩市、豊川悦司、二人ともかっこよくてさ。大楠道代さんがすてきだった。
そんなしょうもないような人間ばかり出てくる映画を阪本順治監督はとんでもなく面白い映画にしてしまった。

よかった。

正子が3回くらい「ぁあーっっ」って叫ぶんだけど途中の2回は笑えるんだけど3度目の「あーっ」は慟哭であった。
妹に「生まれ変わってくると思ってたのに」と泣く正子なのだ。

監督:阪本順治 出演:藤山直美 豊川悦司 牧瀬里穂 大楠道代 中村勘三郎(勘九郎) 國村隼 岸部一徳 佐藤浩市 内田春菊
2000年日本
ラベル:犯罪 家族 女性 人生
posted by フェイユイ at 20:05| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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