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2010年03月14日

『フリークスも人間も』アレクセイ・バラバノフ

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ПРО УРОЛОВ И ЛЮДЕЙ

アレクセイ・バラバノフ監督の『ロシアン・ブラザー』『チェチェン・ウォー』を観たのだが、こういうタイトルの映画もあると知って驚いた。観た二つは思い切りアクション映画だがこのタイトルはどう考えてもまったく違う世界を描いたもののようだ。しかも本作は先に挙げた二つの映画の間に作られているのである。不思議だ。
すぐに観たかったのだがいつも借りてるDISCASにこれがなくてGEOにあると先日知って慌てて借りたのだった。

よかった。

なんというか。無論タイトが示す危ない世界。ちょっと観ていいのか、不安になるドキドキする扉を開けると思った通りの淫靡な雰囲気に怯えながらも目が離せないのであった。
しかしなんというのか、やはり私、バラバノフ監督の感覚というものが物凄く自分と合っていて大好きなのである。『ロシアン・ブラザー』と『チェチェン・ウォー』そして『フリークスも人間も』とどれも比較し難いほどの出来栄えなのだ。またアクション映画で夢中にさせてくれた映画監督がこの方面の作品でも秀逸な感覚であることに驚きと嬉しさを感じさせてくれる。

こういう危ない世界。異常性愛やらその題名の「フリークス」を題材にした作品というのは多々あるが、そこに登場する人を単なる見世物ではなくきちんと物語の人物として描いているのがバラバノフ監督の他のとは違うところだと思う。特に西洋映画で結合双生児がアジア系の少年たちであったりするとただ登場するだけ、ということが多いのではないだろうか。しかしこの作品は際立った主人公が存在せず個々が同じくらいの割合で描かれる。結合双生児のコーリャとトーリャ(モンゴル人なのだがロシア人が養父母なので名前はロシア風)もしっかりと人格が表現されており特にコーリャは同じく重要な役割である年上の女性リーザに恋し性関係まで持つことになる。また二人のボーイソプラノの歌声が作品のイメージになるような美しさで、タイトルのフリークスは彼らのことなのだから作品の半分はコーリャとトーリャを表しているわけだ。

作品は20世紀初頭のサンクトペテルブルグが舞台であることを思わせるセピア色の映像。登場するヨハンという男は地下で猥褻な写真を撮らせている。
カメラマンが何故か映画中一番の二枚目なのだ。裕福な家庭の令嬢リーザはこのカメラマン、ヨハン、そしてコーリャから熱烈に愛されるが際立った美女でないところがバラバノフ監督の特色でもある。またカメラマンのプチーロフや双子の片方コーリャの純真さもバラバノフ作品に出てくる青年らしい魅力がある。
ヨハンやビクトルは結合双生児であるコーリャとトーリャを「フリークス」と呼ぶが二人はいたって真っ当な人間であり真っ当だと見えるヨハンやビクトル(彼は真っ当には見えないが)の精神がフリークだという皮肉である。最後ヨハンが冬の河に足を踏み入れ自殺するのかと思いきや、さすがロシアの冬の河は凍っていて立てるのであった。氷の破片に乗って流されて行くヨハンの姿はまさに薄氷を踏む、というところだろうか。
おぞましいような淫靡さではなくしかしエロチックな映画であった。

監督:アレクセイ・バラバノフ 出演: セルゲイ・マコヴェツキー ディナーラ・ドルカーロワ リカ・ネヴォリナ ヴィクトル・スホルコフ アリョーシャ・ツィデンダバエフ チンギス・ツィデンダバエフ ワジム・プロホロフ
1998年ロシア


posted by フェイユイ at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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