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2010年03月22日

『アグネスと彼の兄弟』オスカー・レーラー

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AGNES UND SEINE BRUDER

悲しいコメディであったなあ。
人は誰しも他人には言えないような恥ずかしい性癖を持っているものなのかもしれない。己にとっては絶対必要な大切なそれであっても他人から見ればただの変態となってしまう。無論私にもあるわけで。言わんけど。
3人兄弟の物語である。3人兄弟の物語って昔話なんかでもよく使われる設定であるようだ。多くの場合は上の兄二人はそれぞれ性格的欠陥が有末の弟が正直人間だったりして始めは兄に騙されたりしても最後には幸せを掴んでめでたしになったりする。
本作でもそういう系統の流れをくんでいるというべきか、確かに二人の兄はかなり変てこな性癖の持ち主で観てるだけでもうへえとなりそうな近づきたくないタイプであるルックス的にも可愛くない。
末の弟はせがすらりとしたハンサムで一番まっとうな性格のようなのだが、性転換をして女性になっているのだ。

ううむ。
世間的に見て性転換したまっとうな人格の弟とかなり問題ありの人格(長男は電話中に(大)を排出し、妻や息子から何かと嫌われている。二男は父親が兄や弟に性的虐待をしていたという妄想だか本当の記憶か判らないものの為に強いトラウマを持っていて美女に異常な執着があり(っていうのはストレート男性なら当たり前?)覗きを止められない)を持つ二人の兄とでは、それでもやはり性転換者を「変な奴」と観るのではないかという皮肉も込められているのか。
しかしラストは童話とは違い、末の弟は病に倒れ死んでしまうという悲劇が訪れ、長兄は修復不可能かと思われた妻子と仲直りし何やら愛を取り戻した幸せな結末を迎え、次兄はなんと父親を殺害した後、念願だった恋人を持つことが叶い、外国へ逃亡して生き延びるのである。次兄物語にはまたもや「父殺し」が扱われ、父を殺した後やっと彼は成長することができる、という展開になる。

おぞましいような(言い過ぎ?)性癖を持つ兄二人が最後に幸せを掴むのに性転換した末弟マーチンそして今はアグネスという女性名の彼はずっと不幸なのである。昔愛したニューヨークのゲイである黒人歌手から捨てられたマーチンは彼がゲイ(男が好き)だからこそ「女になった」のだ。そして今同棲していた男性からは追いだされてしまい行くあてもない。そんなマーチンはかつて女性と結婚して息子がいるのである。
アグネスとなった彼が死を宣告されて元妻と子に会いに行く場面。元妻も彼を優しく迎え、なによりも小さな息子くんが嬉しそうに「パパだった」アグネスに抱きつくのが思わずじわっときてしまった。
そうしてアグネスは死を迎える。まだ幼くて幸せだった頃の小さな自分を思い出しながら笑って死んでしまうのだ。

優しそうだったアグネスの死。変てこな人間である兄達の幸せ。その幸せがどのくらい確固たるものであるかは保証できないが。
世界は混とんとしておかしくて悲しいモノであるのだ。

監督:オスカー・レーラー 出演:マルティン・ヴァイス マーティン・ファイフェル モーリッツ・ブライプトロイ ヘルベルト・クナウプ カーチャ・リーマン トム・シリング
2004年ドイツ


ラベル:家族 人生
posted by フェイユイ at 21:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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