映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年03月24日

『消えたフェルメールを探して 絵画探偵ハロルド・スミス』レベッカ・ドレイファス

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STOLEN

とても不思議なドキュメンタリーでまるで作られた物語のような設定やエピソードの上に登場する絵画探偵なるハロルド・スミス氏(名前からして創作みたい。いや英語名が判るわけでもないが。ハロルド・スミス。やっぱり作った感じ)のキャラクターがまたずば抜けて異彩を放っておりこれは本当にドキュメンタリー?風の映画?ともう一度確かめたほど。
絵画探偵、という響きも珍しくて実在するのかなあ、と思ってしまうが彼の息子さんも同じ職業をしておられ物凄く忙しい状態のようで、それは無論彼らが優秀であるからこそなんだろうけどアメリカ各地で絵画が盗まれては彼らが呼び出され犯人を捕まえ貴重な美術品を助け出しているのである。
なんだか少女漫画にでも出てくるような設定だがスミス氏の容貌が一目見てはっとなってしまうのである長身痩躯の紳士然とした身なりで老体とは言い難いほどのかっこよさだがその顔全面が焼けただれているのだ。実は皮膚癌で全身を冒されているのだという。青年期の写真は特別と言っていい美男子でありながらまだごく若い時にその病にかかり、片方の目には大きな黒い眼帯をつけ鼻はなくなって付け鼻になっているという姿でありながらご本人はまったく意に介しておられない様子で威風堂々たる雰囲気なのだ。そして盗まれた絵画を取り戻す為には時間を忘れて没頭する仕事ぶりであり、驚くほどの多くの人々と出会い絵画盗難の原因を突き止めていく。多くの人と接するその様子に映画監督は敬意を表している。どんな相手に対しても変わらない態度。権力者に会っても怖れず犯罪者に会っても軽蔑することをしない。このドキュメンタリーは彼を撮る為に作られたものではなかったらしい。
本意は盗まれたフェルメール『合奏』の行方を捜すことと同時にこの絵が展示されていたボストンにあるイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館とそれを作ったイザベラの人生を描くことだったのだろうが企画途中で知り合ったハロルド・スミス氏のキャラクターがあまりに素晴らしくて中心になってしまったということであるらしい。
なにしろ日本語タイトルは『絵画探偵ハロルド・スミス』である。原題は『STOLEN』だけだからして。
さてもう一つ不思議、というか当然なのかもしれないがこの映画はドキュメンタリー、それも進行形でのドキュメンタリーであった為に目的である「盗まれたフェルメールの『合奏』の謎」は未解決で終わってしまうのだ。ハロルド・スミス氏の魅力は充分伝わったが彼の探偵としての成功を見ないままに終わってしまうのはちょっと残念かもしれない。これがもしTVドラマシリーズの一つの回ならまだしもだが、というかそう思ってしまうほどハロルド・スミスという人物が際立っていたのだった。

監督であるレベッカ・ドレイファスは若い頃その絵をガードナー美術館で見て以来何度も足を運んだのだそうだ。私の方はそんな思い出は悲しいかなあり得ず、美術の本にあの有名な「牛乳を注ぐ女」の絵が載っててページを開けるたびに飽きもせず眺めたものだ。一体どうして普通のおばさんが牛乳注いでる絵にそうも見入ってしまうものか、と不思議だったが多くの人がそうなのであったのだ。黄色と青の色彩の美しさ、窓からの光がどうのと理屈をこねなくても絵画であるにも拘らずただの教科書の絵を見てるだけにも関わらずどうしても牛乳が注ぎ込まれているようにしか思えない一瞬がそこにあることにいつまでも観続けてしまうのだ。

そして映画はそういった絵画を集め自分の理想の美術館を作り上げることに一生を費やした女性イザベラ・スチュワート・ガードナーの人となりを、彼女と組んでヨーロッパで数々の名作絵画をアメリカへ運んだ男性との書簡を読みながら描き出していく。


私は前にも書いたけど、絵画ミステリーというのに凄く惹かれる。それは絵画自体のミステリーでもよいし、これのように絵画が盗まれるというミステリーでもいい。というのはどちらにしても単に絵の代金、というだけではない『絵画』というものに込められている魔力に多くの人が惹かれてしまい操られてしまうからだろう。
「エロイカ」が美術品の泥棒であることに私は大いに共感してしまうのである。

って共感してはいけないか。
本作でフェルメール『合奏』を盗まれたことに大きな悲しみと怒りを感じている人々を見ればやはり泥棒はいかんのである。

監督:レベッカ・ドレイファス
2005年アメリカ


ラベル:犯罪 歴史 美術
posted by フェイユイ at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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もうひとつ

もうほんとに可愛いんですけど。早く観たい。っていうか観れる日が来るのか?
ロシア今大変ですが頑張ってください。
posted by フェイユイ at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | アレクセイ・チャドフ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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