映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年05月28日

『巨人の神話 ロワイヤル・ド・リュクス』ドミニク・ドリューズ

img20091026232402389.jpg

フランスのとある小さな町に突如巨人が現れる!
DVDで観ているのにも関わらず、どきどきしてしまった。この場所にいたかった!ついそう思ってしまう。

ある日の新聞に「巨人が落ちてきた」という記事が載っていたという。まさか、と思ったが町の街灯にどでかいサンダルがぶら下がっているではないか。

昔空から巨人が落ちて来た。人々は眠っている彼を縛り起きると鎖をつけて歩かせた。人々は彼が見る夢を怖れ眠らないように光の壁を作った。巨人は壁を破って光の中へ消えていった。

物語のように地面に横たわり縛り留められた巨人の姿。そのあまりの大きさに人々は驚愕する。
無論、これはフランスのパフォーマンス劇団の仕業である。日本でも先だって巨大な蜘蛛を歩かせていたあれだ。私はTVで観ただけだが、そういうのが好きなせいか暫し見入っていた。といってもこれを見るまであの集団の映像だとは気付いていなかったのだが。
やがて、ガリバーのリリパットをイメージそのものに赤い衣装を身にまとい小人に扮した劇団員(というのかガリバーが巨人なのか)が巨大な若い男の像を動かしていく。
巨大な櫓を檻に見立て鎖ならぬ長大な紐につながれ劇団員らが力を合わせ巨人を動かしていく。
壮大でファンタジック。いかにもフランスらしい雰囲気だ。人間達が自分たちの重みを加えることによって動いていく、というなんともアナクロな仕組みになっていて全体の作りと言い、顔の動き体の動き、すべて手作り感覚の簡単で素朴でぎくしゃくしたものであるにも拘らず、巨人の表情も仕草も溜め息もまるで本物のように思えてくる。その顔には巨大でありながら捕えられてしまった悲しみすら浮かんでいるようだ。
また観ている町の人々の感想が面白い。子供達はみな可愛くて感想も率直。怖がったり怖くない、怖がってるのは巨人の方と言ったり、素直に驚いて喜んでいるのだが、傑作なのはむしろ大人たち。
理性では「これは作りものだ!それに間違いない。・・・でもなんだか生きているような気がする・・・もしかしたら少し生きているのか?」とでも言わんばかりに自分たちで必死に作りものだと確認し合い、それなのにどこか不安げな表情なのである。明らかに混乱し戸惑っているのは大人達の方なのだ。実は巨人は本当で作りモノのふりをしていると疑ってでもいるかのようだ。
実際に見たらその気持ちがもっと理解できるのかもしれない。
そして巨人がいかだで去ってしまう時、子供も大人も別れを惜しんでないてしまった。これは一体どういうことだろう。皆それほど奴を好きになってしまったのか。女の子は「恋をしている」とまで言ってたっけ。作り物なのに。・・・やっぱり生きてるんだろうか。
私まで少し涙ぐんじゃったじゃないか。

彼らはアフリカへ渡りそこで巨人の黒人の子供を擁して彼の地の人々を同じように驚かせその子供を連れ再びフランスへ戻る。
巨大なキリンまで登場し黒人の子供を乗せて練り歩く様に皆感嘆の声をあげる。
数年をかけて巨人の神話を作り上げていくドキュメンタリーであった。

あの不思議な動きに見惚れてしまう。息遣いが聞こえると言うのが凄い。皆それが印象的なのだ。
誰もが巨人を見るとそこに物語を感じてしまうのである。
彼らについての感想が素晴らしい。巨人に同化し操る人々を小さく感じてしまう。別れの時は泣き、いつかまた会えると信じていると言う。
大人の方がより心を揺さぶられ感激してしまっているのだ。

監督:ドミニク・ドリューズ
2006年フランス


posted by フェイユイ at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。