映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2010年06月11日

七転八倒『ゲゲゲの女房』

こんな貧乏はない、これ以上苦しくはならない、もう何か光が射してくるのではないか。と、毎日思いながら観てるのだが。
何しろご本人さんは近い将来必ず有名な漫画家先生になれることが判っているにも関わらず、何と言う地獄道。
ここが底だろうと思っているのにさらにさらに底があるのだ。借金がないのだけが救い、と思っていたが、そうか、家賃も電気代水道代も一種の借金にはなるのだよなあ。さらには毎日の買い物のツケもあるし、ミルク代はツケが効かない。

不思議なのは一応奥さんもしげるさんも実家はそれなりにゆとりのある家庭なのですがれば無視はされないのだろうけど、やはりそこへ頼るのは最後の最後、ということなのか。

それにしても働いても働いても我が暮らし楽にならざり、そのものの生活だ。観てて身につまされ、わがことのように心配になってくる。

それなのに持って生まれた性格なのか。お二人ともどこかのんびりしたとこがあるのですよ。それがいいのですけどね。

と、ここで最近マンガじゃないのですが水木しげる先生と色んな方の対談集『水木しげるの妖怪談義』というのを読んでいる。
これを読むとさらに水木先生がいかにのんびりした方かが伝わってきてますます好きになってしまうこと請け合い。
ドラマはあんまり妖怪が出てこないけど(貧乏神はいつも在宅。雨の日、水木先生が変なオカルト体験をしたけど)実際はもっと妖怪のことばかり考えてて妖怪が訪ねてきたりしてたに違いない。
でもこの本の中でも『河童の三平』を書いてた頃が一番貧乏だったと、ちょうどこのドラマの時期ですね。貧乏神がへばりついてたんですねえ。

そして今週一週間も大詰めになてどうにかなるのかと思ったらまた変なのがやってきた。大蔵省って何?貧乏神と一体化してたし、なんだかよくわからんよう。
今週は明日まであるけど、最後の最後で好転するのか。それともまた来週まで貧乏持ち越しか。

赤ちゃんが可愛い。ぷくぷくして。早く幸せになって欲しい。向井理さん、40歳過ぎの役っていうのが面白い。
ラベル:ドラマ NHK
posted by フェイユイ at 20:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『江分利満氏の優雅な生活』岡本喜八

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昭和と言う時代はホントに物凄い時期だったんだよねえ。激動というけど全く大げさではないのだから。

主人公はサントリーの宣伝部に勤めているサラリーマン、というちょっとお洒落な感じなのだが本人は自他共に認める地味で冴えない中年男。36歳というからいまで言えばまだ中年と言い難いくらいだが、この当時はこういうものだったのだろうか、すっかり中年の真っただ中のいう風格である。
岡本喜八監督らしい凝った演出で、勢いよく軽妙にこの主人公・江分利満=EveryMan氏の人となりや生活を描きだしていく。
彼はまさに戦後日本の高度成長期、日本人が戦前と生き方考え方が変化していくその最初の段階の人間である。彼の父親は戦争という機に乗じて財を築き上げた実業家で何度失敗し倒産してもやり直し挑戦し続けた不屈の男だが、息子の江分利満はその生き方考え方に反感を持つ。例え父親が莫大な財産を築き揚げ、今の自分より遥かに贅沢な暮らしを満喫してきたとはいえ、それが戦争という犠牲を払わねばならないものなら貧しくとも平和がいい、と熱く語る。
それはちょうど昭和という時代と共に生まれ育った彼の年代が最も感じることなのだろう。ちょうど青春期と戦争が重なりあってしまう年代である。同じ年頃で戦死し恋人や妻と死別した若者も多くいたのだ。
昭和30年代をのほほんと生きているように見える江分利氏の心には沸々と煮えたぎるものがあったのだ。

江分利氏は実業家の父とは違い、うだつのあがらないサラリーマン生活でなんとか父と妻子を養っている。酒を飲むのが楽しみだが酔うとクダを巻くので彼と飲みたがる仲間はいない。仕方なく一人で飲みに出かける。
そんなある夜、酔っぱらった江分利氏は突然で出会った出版社の男女になんと小説の執筆を頼まれ引き受けてしまった。仕方なく江分利は自分の日常を書いてみる。それが『江分利満氏の優雅な生活』である。この小説は思いもよらず大受けし直木賞を受賞してしまうのだった。

説明が前後してしまったが、この受賞に会社での祝賀会の後、江分利満氏が残った若手社員にこんこんと演説するのが先に書いた江分利氏の戦争とそれに関わった人々への怒りの言葉であった。
それを聞く若手社員達にはもう江分利氏のような戦争への感慨はないのだ。
貧乏な中で結婚し、下着は穴だらけのランニングと白い張り合わせただけのパンツという江分利氏。若い社員はブリーフである。
この場面、朝の通勤を下着姿で歩かせる、という演出。笑える。
父の借金と子供や妻の持病もありながら何とか一家を支えていこうと頑張る江分利満氏の生活がしみじみとしながらも大いに笑える、やはり岡本喜八監督の傑作であった。

桜井浩子さんと二瓶正也さんが出てると『ウルトラマン』みたい。
当時の風景を観てると楽しい。まだまだ道路が舗装されてないのだ。この頃の花嫁さんは黒い着物なのだよね。

監督:岡本喜八 出演: 小林桂樹 新珠三千代 矢内茂 東野英治郎 英百合子 江原達怡 田村奈己 ジェリー伊藤  桜井浩子  二瓶正也
1963年 / 日本  
ラベル:家族 歴史 戦争 昭和
posted by フェイユイ at 00:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする