映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年06月13日

『隣人13号』井上靖雄

隣人13号.jpg
THE NEIGHBOR No.THIRTEEN

またとんでもないものを観てしまった。
むろんこれは表面上はイジメの仕返し劇という手垢のつきすぎたテーマのように思えるし、中村獅童氏の狂気が弾けとんだような壊れっぷりを観るのも楽しみなのだがその実訴えたいことは違うものなのだった。

ことの発端は関君だったりするのだが、この人のいい関君が何故13号に殺害されなければいけなかったのか。それは関君が「赤井を殺したい」と言ったからなんだね。
赤井に酷いいじめを受けた十三そして13号にとってこれは味方を得たかのように思えるのだが、このことで関君は彼らに殺されてしまうのだ。それは十三(13号)にとって目的は赤井を殺すことではないから。
小学生時代、赤井から手酷いイジメを受け続けていた十三が赤井を追い詰めていった目的は赤井と仲良くなることだったのだ。
この作品が単にイジメ復讐物語ならあの13号赤井攻撃シーンでさっさと殺すか彼に対する物凄い残虐行為を行って鬱憤をはらせばよかったのだ。だが、残虐行為は彼の息子に対してだけで、赤井を傷つける行為は殆ど行われない。そうしてここで赤井は「悪かった、ごめん」と謝ってしまう。13号の暴力がこれで止まってしまうのだ。
二人の時間が小学生の時に戻り、十三が赤井を反撃した場面となりそれから二人の仲がよくなったことが描かれる。
これはこのバイオレンスな映画を突然ハッピーエンドにまとめてしまったわけではなくこのこと自体が作品の目的だったのだ。

それにしても同性愛的なイメージを盛り込んだ作品なのである。冒頭から小栗旬の美しい裸体と中村獅童のS的な接触があるのでぎょっとさせられるのだがこれは本当は一人の人間の精神なのだからゲイっぽいと思うのは違うのである。とはいえ、映像的にはそうとしか観えないのだからしょうがない。それにしても小栗君の体は凄く綺麗で見惚れてしまう。
やたらと便所が登場するのもホモ的なイメージを湧かせてしまうし、13号が赤井に銃口をつきつけ唾を垂らすのは性的な比喩である。
小学生の赤井が十三の机に置く花瓶がおちんちんそのものでその口からグロリオサがまるで噴出するかのように咲いている。
十三が赤井を屈服させたのもこのおちんちんのような花瓶を使ってであって、床に倒された赤井の側におちんちん花瓶を握りしめて立っている十三の図はまるで彼を犯したあとのようにも見える。
周りには赤いグロリオサの花(血)と水(精液)がこぼれている。倒された赤井はむしろそのことを喜んでいるかのように見えるのだ。
赤井が十三や関君を苛めていたのももしかしたら同性愛的なものの裏返しだったのかもしれない。
工務店で関君が赤井に話しかけるのを見て他の男がからかう「赤井、モテるなあ、お前両刀か」
特に必要な台詞でもないようなのになぜこんな言葉を言わせるのか、それは赤井がそうだということを示しているのだ。
赤井は不良だが妻子を非常に愛していると描かれている。なのに息子を危険な状況に追いやってしまった妻に対し冷酷な態度を示している。
なぜ妻が見ず知らずの十三に大事な息子を預けてしまったのか、これはよくわからないのだがこのことによって十三は赤井への復讐を愛する者を殺害するという形で行うのだが妻に対しては「そういうことをしでかしてしまった」という罪悪感を与えるということで終わっている。無論これは母親にとっては最大の恐怖であり苦痛なのは確かだ。ただこの場面だけは吉村由美の演技がいまいち乏しくて(監督の意志なのかもしれないが)慟哭というようなものにはなっていない。むしろ通常の復讐劇なら赤井の妻に対し肉体的陵辱を与えることが多いのではないか。その猥褻場面が売りになったりするものだが本作では男性の女性との肉体的繋がりがまったく描かれていない(妻が赤井にフェラチオをしている場面がまったく映らないような遠目であるのみ)
復讐の対象となる赤井の子供が娘ではなく息子だというのも同性へのイジメを意識したものになっている。
そして大事な息子を失ってしまうことで赤井の妻への愛情も失われたように思える。


かくして十三は目的を遂げ、勝手に呼び出され勝手に精神の中の小さな部屋に13号は置き去りにされる。ここで十三が13号にキスしているように見える。

そういった隠された本筋を見なくて表面上のストーリーを追っていても面白い映画である。
中村獅童、小栗旬、新井浩文、吉村由美がそれぞれに素晴らしい。
普通はこういう二重人格者というのは一人の役者が二つの顔を演じ分けるのが売りだったりするものだが、ここでは小栗=善、獅童=悪という二人になっているのは二人の裸の絡みを見せたいからだろう。一人の役者が二つに別れて尻を叩いたり、触れ合ったりするのでは色っぽさがなくなってしまう。
13号はなんだか『ツイン・ピークス』のボブを思い起こさせる。この部屋も赤いし。

十三を苛め続ける赤井の大人版を新井浩文がまたも切れまくって演じている。
それにしても新井さんの映画を追い続けて何作品。主演に近づくほど同性愛的な要素が強いのはどういうわけだろう。そういうつもりで観て言ってるわけではないのだが。男性同士の強い絆という話が好きなんだろうなと思っているわけだが、ほぼすべてそういう話なのかなー。いや、心底嬉しいんですが。
ここではいつもにも増してド不良を演じきっている。すげえ上手い。何作か観てきて面白い作品がとても多くて見ごたえあるものばかり。
ますます惚れこんでしまう。
隣人13号の隣人は三池崇史監督だった。

監督:井上靖雄 出演:中村獅童 小栗旬 新井浩文 吉村由美(PUFFY) 石井智也
2004年日本


posted by フェイユイ at 01:19| Comment(2) | TrackBack(0) | 新井浩文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これ、人格違いを別の人間がしてるのが面白そうでしたが原作漫画の絵が嫌いだったので
結局観なかったんです…
最近、なんとなく気分的に音楽ばっかり聴いてて映画から離れてたのですが
落ち着いたら観てみます〜要check!!
Posted by may at 2008年06月13日 14:42
私はマンガであることすらよく知らないで観たので(笑)原作って知らない方が映画は楽しめますよねー。
映画が好きになってしまうと逆に気になりますけど。
Posted by フェイユイ at 2008年06月13日 15:46
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