映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年07月01日

『それから』森田芳光

それから.jpg

夏目漱石いいなあ。原作は未読だけどこういう文芸作品というのはいいものですね。漱石のは妙に理屈をこねる話なのでとても面白いです。
と言っても『それから』以外も殆ど読んではいないと言う自分だが。
『吾輩は猫である』は愛読書なんで漱石の理屈っぽさとか台詞回しなんかは映画にも感じられて嬉しいものでした。
後は『こころ』がゲイっぽいということで読んで、この前『夢十夜』そして昨日書いたけど松ケン帯の『坊ちゃん』を買ってきたところ。教科書で読んだぎりなので。
だから『それから』は映画を観てのみの感想になるが、これは面白く観れましたねー。代助という30前の男が主人公だが、金持ちの生まれをいいことに遊びほうけて仕事もしなけりゃ親の勧める縁談も断るという気ままな生活を続けている。実は3年前に好きになった女性がいたのだがどういうことか、友人に彼女との結婚を勧めてしまったのだ。その人・三千代も代助に惹かれていたのだがまったく打明けてくれない代助に復讐するつもりで彼の友人・平岡と愛のない結婚をしてしまったのだ。
なんだかもうどうしようもない話なんだが身も心もぷらぷらして定まらない彼らの生き方は今の我々そのもののようで当時より今の読者の方が理解できるのでは、と思わせてしまう。
代助の姿は最初から最後まで掴みどころのない頼りなさである。むしろ最後追い出された時、これでやっとこの男も少しは生きていけるんじゃないかと思ったのだが違うんだろうか。

ご子息の松田龍平君もだが父上の松田優作さんもかっこいいと評判の男性だったが自分的にはさほど好みの範疇でなかったのでこの映画も気になりながら未観のままだった。観よう観ようと思いながら20数年経ってしまったんだから時間の過ぎ去るのは早いもので。
私としては三千代の面白みのないダンナである平岡役の小林薫さんが好きなので映画の観方としては困ったことになる。まあ確かにこの映画としては冴えないダンナなのではあるが松田優作より小林薫さんのほうが好きだからなあ、などと思っていたら映画としては成り立たない。私は他の映画でもつまらない亭主を持った妻が他の男と浮気をする、という映画の場合、なんだかその真面目な亭主の方を好きになる傾向があって困るのだが。かっこいい男が嫌いなのかな。
とはいえ、20数年経って優作氏を見たらとてもいい男に見えてしまう。この映画のせいかもしれないが、あのスタイルと男らしい風貌で代助を演じていると凄く魅力的ではないか。子息・龍平君同様観ているうちに好きになってしまったのだ。
それになんといってもいい味だったのが三千代役の藤谷美和子。とぼけた雰囲気が個性の彼女だが、ここではその印象を控えながらも不思議な味わいのある女性になっている。
ところで彼女が代助の家で花器の水を飲むシーンがあるが、確かすずらんが活けてあった。「毒じゃないんでしょ」とわざわざ言うのだが、すずらんは毒性がある。あんなに飲んじゃってほんとに大丈夫なのだろうか。三千代という人妻が毒を飲んでしまう覚悟を持っているという演出なのかもしれないが。何故か同時に「ぴかごろごろ」という雷音がしたのでお腹をこわしたのか、とくだらないことを考えてしまったじゃないか(あ、これもしゃれだ)
そのときにすずらんの香を「いい香りね」という。また二人が百合の香りを一緒に嗅ぐシーンがあり、代助が蚊帳に香水をふるシーンもある。なんだかとてもいい香りのする映画のように思えた。

ねちねちねちねち、と考え続けているだけの作品みたいな煮え切れない感じだが、時代背景も含め非常に楽しんで観てしまった。
他の俳優陣、中村嘉葎雄 美保純 草笛光子 笠智衆 イッセー尾形 風間杜夫などもいい感じだった。
こういう作品もっと色々作られるといいのになあ。

それにしてもやはり父と子は似るものですね。先日龍平君を観たばかりなのでいっそう思ってしまうが顔だけでなく声も佇まいも。不思議なものです。お父さんのほうは男っぽくて男性の憧れみたいな存在でしたねー。息子さん同様私的には遅まきながらファンになってしまったようです。

監督:森田芳光 出演:松田優作 藤谷美和子 小林薫 笠智衆 中村嘉葎雄 美保純 草笛光子 笠智衆 風間杜夫
1985年日本


posted by フェイユイ at 00:40| Comment(2) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これは本当に名作です。私の子どもが夏休みの課題に「こころ」を読んだのを機に観返して、改めて感動しました。オリジナルを尊重しつつ、現代風の味付けの微妙な匙加減が最高で、森田作品の中でも出色だと思います。
さて、漱石に目を移すと、相変わらずの「我輩〜」や「三四郎」や「坊ちゃん」・・・。これらは有名ですが、名作じゃない。これらを読んで漱石を挫折する人がどれだけ多いか。残念でなりません。これらは時代考証を踏まえて読まなければ、良さがわかりません。是非、「それから」「門」「行人」を読んでください。これらは現代にも通じる名作です。
Posted by mitch at 2008年08月03日 02:37
コメントありがとうございます。

私は『我輩は猫である』も『坊ちゃん』も良いと思いますよ。

時代考証なくても面白いですしね。
人にはそれぞれの心に響く作品があるのですから決め付けなくてよいのではないでしょうか。
それに名作、と言われると途端に読みたくなくなってしまう、というのもありますし。読んで「面白い!」と感じるだけで充分だと思います。
Posted by フェイユイ at 2008年08月03日 10:51
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