映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年07月07日

『ファーゴ』ジョエル・コーエン

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FARGO

コーエン兄弟。先日彼らが作った『ノーカントリー』でアカデミー賞4冠を獲得するなど話題になったが自分はまだ未観。それ以前の映画もいかにも観てそうなのにまだ何故か一つも観ていない。というのは間違いで『パリ・ジュテーム』の「チュイルリー(1区)」で観てた。ブシェミが出てた奴。あんまり好きじゃなかった^^;

で、この作品は評判どおりでなかなか面白かったけどね。
けどね、っていうのは確かに「どうなるのか」とずーっと緊張感持って観続けはしたけど、では物凄く好きな箇所があるか、というとそこまではまり込む要素は本作にはなかったような気がするのだ。

物語の構成がふた筋に分かれていてなんとも人間関係の希薄さが物悲しくまた滑稽な誘拐事件に関わるランディガード一家と犯人役に話と人間味溢れ愛情豊かなガンダーソン夫婦が「一見」対照的に描かれていく「一見」というのはこれが本当に対照的なのかどうか疑わしいからだ。

妻のマージ・ガンダーソンは8ヶ月という身重で殺人事件を追及していくといういくらアメリカでも本当かな、と驚いてしまうのだが(本当にこういう勤務をするのだろうか)それも含めてこの物語は騙され続ける。
冒頭の「この物語は実話だ」ということがまず騙しなのであり、無論ランディガードは妻を騙し子供と義父を騙し犯人達も騙している。
ではガンダーソン側はいい話ばかりかというとかつての同級生の男がマージに嘘の話をする。彼は精神に障害を持っているという説明がはいるがそうなればすべての登場人物が信じられなくなる。一体誰が真実で嘘なのか。それを表現しようという話なのかもしれない。
では、子供を腹に抱えて悪と立ち向かう母親とその彼女を温かく応援する夫の姿や最後にベッドで優しく寄り添って「私たち幸せな夫婦ね」という台詞にじーんとしていいのかどうか、何しろそれまで散々人間の精神のもろさ、信じていたはずの人の裏切りを見せられているので「この夫ももしや・・・」と疑ってしまうではないか。彼が真実の愛を持っているとどうやって証明する?また彼女も。お腹の子も彼の子供だといい切れるのか。すべてが信じられないというならそうなってくるはずだ。
それがコーエン監督の目的と考えていいのだろうか。私にはとてもこのラストで「幸せなふたりねー」と素直に涙を浮かべたりはできないのである。すべてが怪しい。誰も信じられないぞ。お腹の子供だって何考えてんだか!そんな感じである。
マージだって信じられないし、他の何もかも信じられない。
それを面白い、と言ってしまえばそれでいいが、ここまで信じられない話だとどんどん深読みしてしまってこの世界そのものがあり得ない、というドツボに落ち込んでしまいそうだ。
どこまでが真実なのか、どこまでが嘘なのか、すべて嘘なのか。
観る者は所詮作り物の映画という作品をそこに表現されていることは真実として観て行くしかない。冒頭の「実話です」という言葉が嘘ならすべては嘘ということを疑わねばならなくなる。嘘つき男の側と真実の夫婦の側を対比して描いた作品というのなら
真実の夫婦の愛が本当なのか疑わしい。同時に殺人者達も本当は愛し合っていたのではないかとまで疑わねばならなくなる。
そこまでの疑惑を観る者に持たせるのが目的の映画なのか。
そこまで行くと面白いという範疇を通り越して疑惑だけの映画になってしまいそうだ。

そういう理屈で構築された映画ということなのかな。

『松ヶ根乱射事件』がこれに似ているというのを聞いたので興味を持って観たのだが、私があれで面白いと思ったようなものはこの作品にはまったくなかった。

とはいえ、先に書いたように「なかなか面白かったけどね」というようには思えたわけで、コーエン兄弟作品、また機会があったら観てみよう。この言葉も真実とは限らない。

ところでいすゞファーゴという車があるけど、名前の由来はfar(遠くへ)go(行く)と言う意味の造語ということらしい。
本作の意味も同じかな。

監督:ジョエル・コーエン 出演:フランシス・マクドーマンド ウィリアム・H・メイシー スティーブ・ブシェミ ピーター・ストーメア ハーブ・プレスネル
1996年アメリカ


ラベル:犯罪 暴力 疑惑
posted by フェイユイ at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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