映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年08月24日

『ノーカントリー』ジョエル・コーエン イーサン・コーエン

ノーカントリー.jpg
No Country For Old Men

これは貧しい暮らしをしているルウェインが正体不明の不気味な異常性格殺人者シガーに執拗に追い詰められていく話、と言う事になるのだろうがよくあるように巻き込まれ型とか何の咎もないのに、というのではない、というとこが問題なのかもしれない。
どうしてもハンサムで一般的白人のルウェインに共鳴して観てしまうものだろうが元はといえば他人の金を何の関係もないのに盗んでしまったルウェインに原因があるのだ。どういう利害関係かはわからないが一応追っ手であるシガーはその金の持ち主(と思われる者の使い)なのだから返金するのが当然なわけで大金を盗んだルウェインがその咎を責められるのは間違いではないのだ。その持ち主が本当にそいつか判らんというのであれば警察に届けるのが筋というもので泥棒であるルウェインに同情する必要はないのだ。
しかもそのことで妻やその母親に危険が迫るのは承知でいるのだから義母がルウェインをけなすのは正解なのである。

一体なんでルウェインに同情しながら観てしまうのか。前に書いたが彼がハンサムなアメリカ白人だから。異様な風貌のスパニッシュやルウェインからピストルを奪われ水も与えられず見捨てられてしまうメキシコ人には同情しないのである。
ルウェインがメキシコまで逃げていくのでメキシコ人は巻き添えを食っていい迷惑なのだ。これだからアメリカ人は身勝手だと嫌われてしまっても知らんふりなのだ。
シガーは悪いがルウェインは良いのか。殺人者より泥棒は罪が軽いからというわけか。助けられる人間を見捨てはしたが。

シガーって一体何なのか。どうしてここまで心がないのか。腕から骨が飛び出してもまた病院にも行かず自分で治すのか。病院にいくこともできないのだろうか。
泥棒夫妻に同情してもシガーには同情する者はいない。
しかもルウェインは「シガーという名前だ」と言われているのに「シュガー」とわざと言い間違えたりする。こういうの一番むかつくけどシガー自身が悪者だから誰も可哀想には思わない。

保安官がこの一連の殺人劇に一度も絡むことがないことが彼ら国を守るべき者たちの力がもう及ばないことを表現しているのだろう。
最後に引退した保安官が今の彼より若くして死んだ父親の夢を語るところで終わる。
父親が先に行って雪山で火を焚いて彼を待っているのを知っている、と元保安官ベルは語る。その情景は死後の世界で彼を待つ父親の姿を思わせる。

などと書いて来たが、それでもこの追跡劇の面白さは確かに秀逸であったと思う。
映画を楽しみたかったので原作は読まずにいた。マッカーシーの『すべての美しい馬』もアメリカとメキシコを彷徨う悲しみに満ちた作品だった。映画化された作品は随分違う印象であった。
この映画は、というと未読なのでなんともいえないがかなり原作に忠実だということらしいのだが、それでも『すべての美しい馬』を考えるとそうなのかな、とも思えてくる。その辺は読んでみるしかないので是非読んでみたいと思っている。

監督:ジョエル・コーエン イーサン・コーエン  出演:トミー・リー・ジョーンズ ハビエル・バルデム ジョシュ・ブローリン ウディ・ハレルソン ケリー・マクドナルド ギャレット・ディラハント テス・ハーパー
2007年アメリカ


ラベル:犯罪
posted by フェイユイ at 00:53| Comment(3) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
劇場で観ましたが、コーエン強大監督の演出迫力に圧倒されました〜☆シガー、恐すぎ。この怪物=不条理なもの、として描かれているのだな、と私は感じました。
途中保安官がぼやきだす(笑)ところで、それまでの緊張が一気に解けたのでしょう(連日の寝不足もあり)寝てしまい(爆)一部ストーリー切れてます^^;真紅さん宅で述べたので詳しくは繰り返しませんが、とにかく暴力描写が圧巻でした。
ところでここで恐縮ですが・・せっかくフェイユイさんからのコメントお返しが「ゼアウィルビーブラッド」にあるようなのですが、何故か出て来ない。。(間違いでしたらスイマセン)^^;
Posted by フラン at 2008年08月27日 09:59
度々スイマセン、「コーエン強大」→「コーエン兄弟」です(笑)訂正します!^^;(でも、間違っててもなんかしっくり?笑)
Posted by フラン at 2008年08月27日 10:02
コーエン強大いいですね!(笑)そのとおりではないでしょうか。

『ゼアウィル』のコメント慌てて出しました。確認したつもりだったのに^^;時々こうなりますね!失礼しましたm(__)m

実は今日再観してまた感想記事も書きました。よかったらこちらも読んでやってください。
ところで真紅さんのブログいつも楽しみに見てるのですがなにせ私が映画観るの遅いのでこの映画は楽しみだったから内容読まないでいたのです。
フランさんのコメントで今読んできましたがあわわわ、私それこそ「暴力礼賛」してるかも^^;^^;
フランさんが言われているとおり映画の表現は絶対シガーの暴力に憧れていると私は思っています!こういう暴力映画を作る人は好きだから作ってるんです。そして私みたいに暴力映画好きな奴が喜んでるんです。私はそれを実行はしませんけどね!!!(いや力ないだけですが)
小説は物凄くそういうアメリカ社会を憂う話なんですよ。でも映画は賛歌とまでは言いませんが喜びを感じて作ってますよね。
よくあるグロものに比べると大人しいですが。
小説では憂いているのに映画はひそかに喜んでる。間違ってますねー。コーエン監督いけない人々かもしれません!
マニアには大事な人々でしょうが。私も喜んでる一人なので困ったもんですが^^;
Posted by フェイユイ at 2008年08月27日 23:12
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