映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年09月06日

『黒い家 エンジビル』シン・テラ

エンジビル.jpg
BLACK HOUSE

これはねー、一体面白いんだろうか?というのは映画の感想としてはおかしいんだろう。
原作は日本の貴志祐介の小説『黒い家』そして森田芳光監督によって映画化もされていた。そして本作は韓国版リメイクで韓国では大変なヒットだったということだったのでかなり期待してもいた。
で、これはそんなに面白かったんだろうかなーと。

日本版映画化の感想で「主人公がうじうじしてうざい」と私は書いているのだがこうして普通の男になってしまうと案外インパクトがないものだと気がついた。内野聖陽が演じた主人公・若槻の終始ぺこぺこし通しのいじけ顔にうんざりしていまっていたのだがそれだけ忘れられない印象はあったし怖ろしい人格破綻者の菰田幸子との対比が際立っていたわけで。本作の主人公ジュノを演じたファン・ジョンミンは韓国男性としては(というのは私の勝手な思い込みではあるが)かなり根暗でおどおどしてはいるが言うべきとこははっきり言っててイライラはしない。最初は「お、こっちがいいな」と思っていたのだが進むにつれて登場人物の性格の差違が少なく思えてしまう。それは大竹しのぶが演じていたちょっと極端でコメディですらある菰田幸子に対し本作のイファ(ユ・ソン)がやはり大竹しのぶよりひかえめな性格破綻者(?)だったせいもありまたその夫の人格も日本版のほうが強烈だったので全体に平板なイメージになってしまっているためだろう。日本より韓国の方が控えめ、なんて変な気もするが。もしかしたら日本版映画が先にあるために韓国側としてはあまり「真似」にしたくなくてあえて違った方向を探ったのかもしれないがなんとなくこじんまりとまとまってしまったように感じられてならない。日本版映画のダイジェストのようにも思えてしまうのだ。
それは若槻のくどくどしさもあったし、特に菰田幸子がボーリングが好きという性格付けも奇妙なリアルさがあった。怖ろしい事件を起こした後にボーリングに打ち込んでいるというのは確かに不気味である(ボーリングをした後に学校で乱射した事件を取り上げた『ボーリング・フォー・コロンバイン』という映画もあったが)
これを観て日本版を褒めるというのも変なものだがこのせいで却って森田監督の『黒い家』は面白かったんだなーと気づかされてしまったのだ。
すべての人格や出来事が端折られて表現されているので菰田夫妻の狂気が伝わりにくい。
菰田夫が自分の手に噛み付くとこなど説明もないワンカットだったのであれでみんな判るんだろうかと驚いてしまった。西村雅彦の気持ち悪さといったらなかったし。
また精神分析家による菰田夫妻の説明なども酷く短かったのでそういう箇所に興味がある自分としては一番美味しい部分がなかったようでがっくりしてしまった。「あの女には心がない」という言葉こそが恐怖なのにイファの心をもっと覗き見るような恐怖を出して欲しかった。
代わりにここは韓国映画らしく人の体を残虐に傷つけていくスプラッタな場面は日本版よりはるかに周到に描かれていてますますげんなりしてしまう。
この話はスプラッタじゃなく人間の心を覗き込む恐怖を描いて欲しかったのだが。
それなのに最後は突然「もう誰かが死ぬのは見たくない」などと言ってジュノがイファを助けようとするのが馬鹿馬鹿しいし、そこでイファがジュノの手を傷つけて自分が落ちていく、というのも今までの話がなんだったのか、みんな意味がなくなってしまう。よじ登って助かってジュノを突き落としたらよかったんじゃ?
そして最後に怖い絵を描いた女の子が次のイファになるのでは、というような思わせぶり。菰田夫婦は二人とも幼児期に同じような非人間的虐待を受けていたからああなったんで、この子は可愛がられてるのでからそういう場合もあるだろうけど説明としてはよくわからない。
そんなことしなくても一旦火事で焼け死んだと思ったイファが生き返ったんだからまた生き返らしたら?あれだったら永遠に続けられるっしょ。

最近の作品をリメイクした、ということでもう観るべきじゃなかったんだろうけど、つい何かを期待してしまった。
最近嘆いているのは韓国映画は急激に観たいと思う作品、面白い作品がなくなってしまった、ということ。そんな言葉を慌てて消してしまいたくなるようないい作品を観れるのではないかと思っていたのだけどねえ。

ラストの感動場面、と思しき場面では韓国映画定番の土砂降り雨。クライマックスに雨というのはもう止めた方がよくないか。何度観たか判らない。
それぞれの登場人物を演じた役者陣にはあまり文句はないのだがジュノ役のファン・ジョンミンの顔のほうに異常性を感じてしまう。
眼鏡顔と眼鏡なし顔が物凄く違うので眼鏡が外れると誰だっけ?となってしまったが眼鏡顔はなかなか迫力ある。
唇はメイクなんだろうか。薄くて小さくて狂気めいた感覚がある。彼がサイコ殺人鬼をやってたらもっと凄かった気がするのだが。

監督:シン・テラ  出演:ファン・ジョンミン カン・シニル ユ・ソン キム・ソヒョン
2007年韓国


ラベル:サイコ ホラー
posted by フェイユイ at 23:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。