映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年09月19日

『奇跡の海』ラース・フォン・トリアー

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BREAKING THE WAVES

ラース・フォン・トリアー監督の描く女主人公は(ヒロインしかまだ観てないし)どれもとことん愚直で頑固でどこかひっかかるような薄笑いを浮かべることがあるちょっと嫌な女ばかり。物語もどんどん迷い込んでしまい痛い目にあうという同じ話ばかりなんだけど語り口が好きなせいか続けてみてもどれも非常に面白く長いんだけど夢中で観てしまった。

本作の主人公はそのまま『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のセルマみたいだ。
セルマが息子を痛々しいほど愛したように彼女もまたヤンを苦しいほど愛してしまう。
ヤンもべスを心から愛しているのでそこだけは本当にうれしい愛の物語なんだよね。
ただ事故で寝たきりになってしまったヤンが愛するべスに望んだことが「愛人を作ってメイクラブの様子を聞かせて欲しい。それが俺を生かせてくれるんだ」ということだった為に、盲目的なべスはその言葉通りセックスの相手を捜し求めてしまうのだった。
宗教の厳しい戒律と共に生きる田舎町でセックスのみの関係を男に求めるのは堕落でしかない。
べス自身も愛するヤンではない男と肉体関係を持つことは苦痛でしかないのだ。しかし男と寝ることがヤンの命を助けると信じきっているべスは何とかして男と寝ようと彷徨い歩く。
そしてついに大きな船に乗っている正体不明の怖ろしい男達に抱かれようとする。

ここでも愚かで頑固なべスを救おうと善良な男女が手を差し伸べるがべスは言うことを聞きゃしない。
べスが望むのはヤンの言うとおり男と寝てヤンを歩けるようにすることだけなのだ。
それは他人からすれば何の根拠もない馬鹿馬鹿しい行為でありべス自身も命懸けで怪しい男たちの元へ行った後もヤンの病状がよくならなかったことを知り「全部間違っていた」と嘆く。
だが失意の中べスが死んだ後、ヤンは生き延び歩けるようになる。
なんだ結局べスは正しかったんだ。命懸けで別の男と寝たことでヤンは約束どおり生き延びた。
でもなんという約束だったんだろう。べスはその為に自分の命を犠牲にせねばならなかった。
教会を追放されたべスだが最後に鳴り響く鐘はべスの喜びを表しているかのようだ。

トリアー監督作品を観続けたせいで珍しく女主人公の映画を何本も観ることになった。どの女性も同じイメージではあるが。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』と本作がとても好きなのは主人公に同性の親友がいることである(本作では義姉でもあるが)男主人公でも同じだが女主人公の場合は絶対親友がいて欲しい。
両方とも同じイメージの女性なのだが(姉と言う感じ)馬鹿でしょうがない主人公を心から愛し心配している。主人公も友達を愛し尊敬している感じがとても好きなのである。
べスが義姉でもある友人ドドに「私を愛しているのね」と言って彼女が頷く場面がとてもいい。べスとヤンの愛以上にドドの愛が切なく思えるのだ。
スコットランドの荒涼とした風景も物語の重厚さと相まってこれも心に残る作品だった。

監督:ラース・フォン・トリアー 出演:エミリー・ワトソン ステラン・スカルスゲールド カトリン・カートリッジ ジャン=マルク・バール ジョナサン・ハケット
1996年デンマーク


posted by フェイユイ at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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