映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年09月28日

『浪人街』マキノ雅弘

浪人街.jpg

最初画面が揺れて閉口したが(多分劣化したフィルムでDVD化したせいだろう)観ていくうちに面白くなり気にならなくなっていった。
とはいえなかなか台詞が聞き取りづらくおまけにぴんとこないので日本映画なのに日本語字幕を出して鑑賞。漢字がわかる方が理解しやすいので字幕はありがたい。

登場人物が知らない上に顔の大きなおじさんばかりなのでこれも最初困惑ものだったが次第にこれも気にならなくなる(笑)
主役の源内=近衛十四郎は特に顔がデカイのだが女にモテモテの色男。妻であるお新にスリをさせて金を稼がせては外で遊び歩き金がなくなるとやっと家に帰ってくるというとんでもない浪人者なのだ。妻お新はこのぐうたら亭主にぞっこん惚れていて帰ってくると大喜びで歓迎しなんともなよなよと色っぽいのである。美人で色っぽくて金を稼いでは亭主に小遣いとして与えてくれる。なんだか夢のような理想の女房であるが色男源内は「男をつなぎ止めるのは金だけだ」と言い、金を出せと刀の鞘でお新の体をいたぶるとんでもない奴なんだがお新は惚れこんでいるというわけ。
このお新を密かに思っている母衣権兵衛=藤田進と母衣(ホロと読むのだ、へー)に男惚れしている赤牛弥五右門=河津清三郎が源内とケンカしたりして三つ巴の様相を呈してくる。
この3人が顔デカおじさんで主に絡んでいるので現在の映画の傾向からするととんでもないみたいなもんだが見慣れてくれば面白いんだから不思議である。
唯一、土居孫八郎=北上弥太朗さんは細面の美男子なのだが、優男だけにどうにも頼りなくて妹に甘えっぱなしでイライラする。つまりお坊ちゃんの侍が浪人になって傘張りなんかをしてるのだが食うのにも困って宝刀を売ってしまう。そこへ帰参の話が舞い込むのだがそのためには宝刀が必要なのだ。やっと夢がつかめるかというのに肝腎の刀がない兄はやけになって酒びたり。そんな兄を妹は体を張って救おうとする。
源内はこれ以上ないいい女房を見捨てるようなことをするがその女房は泣き言も言わない。
なんだか出てくる男達、母衣さんを除くとみんなどうしようもない体たらくの奴ばかり。女だけが必死で働いていて男は情けない。ん、この感じ、この前観た『色、戒 ラスト、コーション』の時に感じた男の不甲斐なさに似ている。なんとかしようと頑張る女達を利用して男達のだらしないことよ。
ま、しかしこちらは最後は母衣さんは無論だが源内も赤牛も身を翻して戦ったからまあいいや。あの優男の兄貴だけは駄々っ子みたいに泣き喚いてやっと帰参したようで苛立つばかりだったけど。
愛しいお新さんは結局遊び人の亭主と仲良くなったのかどうかはわからないが母衣さんは斬り合いで死んでしまった赤牛のために赤牛が好きだった居酒屋で酒を飲んでいるところ「御用だ、御用だ」と岡っ引きに踏み込まれこれまた斬り合いになる。
一部始終を見守っていた小芳=高峰三枝子が最後も母衣を見つめていた。
「浪人街の白壁に、いろはにほへと と書きました」
と最後画面に書かれる言葉である。

浪人ばかりの世の中、という設定が今現在の世間のようでもある。つまりニートなわけである。定職もなくぶらぶらとする若者、といっても結構いい年をした若者なのである。
そうしたフリーターな剣士たちが「自分には才能があるんだがな」とひとりごちりながら先の見えない将来をひそかに夢見ている。

男たちはなんだかどれも情けないのだが、女たちが個性が合って面白い。小芳役の高峰三枝子がかっこいい。この髪型は男風なのだろうか。ちょっといなせで素敵なのだ。
お新は先に書いたが美人で色っぽくて亭主に恋する一途な女房。といっても少し思いを寄せてくれている母衣にも好意を持っている。
気弱な兄を持つ妹おぶんも兄のために懸命に動き回る。優しげだが武家の娘なので結構強かった。

大変面白い娯楽作品、というところだろうか。やはり今の時代劇映画とは随分違う箇所が色々とある。
居酒屋の室内も階段状になっていて壁に酒樽がたくさん置いてあるのから枡に注いで飲むようになっている。女性の髪形もバリエーションがあって楽しい。
悪役の小幡の兄が商人近江屋の入れ知恵で捕まえた女・お新を牛裂きの刑にしたら、というのを「かわいそうだ」というのがおかしい。優しい悪役である。確かに酷いよな。今の映画みたいに残酷なことばかりするのでないのが嬉しい。
源内と赤牛の斬り合いで刀同士がカチンとあたる度に火花が散るのは驚いた。あれは映像処理なのか。ほんとに火花が散っているのか。

情けないけど強い男達とそれを支える女らしい女達の時代劇だった。

監督:マキノ雅弘 出演:近衛十四郎 河津清三郎 藤田進 高峰三枝子 水原真知子 北上弥太郎 北上弥太郎 龍崎一郎
1957年日本



ラベル:時代劇
posted by フェイユイ at 22:44| Comment(0) | TrackBack(1) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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