映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年10月04日

『ぜんぶ、フィデルのせい』ジュリー・ガヴラス

La Faute A Fidel.jpg
LA FAUTE A FIDEL

子供の目を通して大人の世界を描いたり思想、生き方を考えさせる作品を作るととんでもなく面白く優れたものが出来上がってしまうことがままあるがこれも全くそういうものの一つなんだろう。
とにかく映画の作り方が上手いので唸ってしまう。アンナは賢くておませな少女ではあるけれど、やはりまだ子供の目から観た世界は混沌として難しい。所詮世界の歴史・政治など詳しくもない自分はアンナと同じ目線で映画の中の出来事を「一体何が起きたのか、これからどうなるのか」と見つめていくことができる。裕福で善良な両親や祖父母に見守られ学校でも優秀なアンナが今まで続けてきた幸福な生活を突然両親の思想変化によって失ってしまう。まだ幼いアンナとその弟が生活の激変に戸惑い疲れきっていくのがかわいそうだったのだが、当のアンナはそんな大人の身勝手に負けるものかと対抗していくのである。
いつも子供は大人のいいなりになるしかなかったこれまでの物語とは違い徹底して自分の意志を持ちはっきりと発言するアンナの強さには驚いた。そしてアンナは少しずつ世界について学び大人たちの心理も推し量るようになっていく。
最後、悲しげに佇む父親にそっと手を伸ばし慰めようとするアンナは確かに生き方が変わったのだろう。
それは政治思想ということではなく我儘を言い続けたそれまでの子供ではなく思いやりを持つ気持ちをアンナの心に芽生えたのである(それは以前嫌っていたスペイン生まれの従姉妹ピラルに微笑んだ時にすでに感じられたが)

映画の演出・表現の大人っぽさというのは申し分ないもので父親に手を差し伸べるシーンもならラストでアンナが新しい学校の子供達の輪の中に入って手をつなぐのも彼女が自由な新しい世界で生きていく可能性を表現している。どちらも台詞による説明がなにもなく彼らの行動を映すのみで語っていく表現だ。
両親の夫婦喧嘩を見たアンナが(勝手に思想を変えて勝手に喧嘩してる)弟の手を引いてプチ家出をして帰宅した時、迎えた母親の顔と何故か外から階段を上がってきた父親の顔が黙ったままなのに二人がいなくなった時の両親の狼狽を感じさせてなんとも上手い。多分父親は青くなって探しに飛び出し、母親もおろおろ後悔しただろう。ほんの数秒の表情ですべてをわからせるにくい演出である。

それまでアンナが信奉していたカソリック学校の尼僧の教えに反発を感じる。
「山羊は従順でなければならない」と尼僧は言う。アンナは答える「山羊には二つの道がある。家に留まる山羊になるか、山へ向かう山羊になるか」尼僧は間違っているとはねつける。
アンナは祖父によって罠にかかった狐が自分の足を食いちぎって逃げ出した後を見せられる。どんなことになっても自由でありたいと願うこと、つまり自分の意志を持つことこそが大切なのだと知る。
そしてまたアンナは父親に優しくする心も知る。
随分教訓的な内容なのだが、いつもぷんぷんと怒りながら世の中を見つめ考えていくアンナの表情が可愛らしくめそめそといいつけを守るのではなく自分のやり方で学んでいくアンナに共感してしまうのだ。
こんなに真剣に生き方を見つめる子供がいるのかな、とも思うがそこは自立している、というイメージのあるフランス少女だからこその説得力なのかもしれない。一方弟フランソワはほんとにまだ可愛い男の子で「おなかがすいた」としか言わないみたいでそこがまた可愛らしい。エッチなことは話すけどね。

両親が同じ運動をしているというわけではなく、父は遠いチリの国の政治運動に加担し、母は女性の為に妊娠中絶の権利を求める運動をしている、というのが様々な問題について考えていく、という投げかけなのだろう、

監督:ジュリー・ガヴラス 出演:ニナ・ケルヴェル ジュリー・ドパルデュー ステファノ・アコルシ バンジャマン・フイエ マルティーヌ・シュヴァリエ
2006年イタリア/フランス


posted by フェイユイ at 22:51| Comment(2) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
☆良かったですこの作品!!昨年映画館で。^^とにかく演出、素晴らしい。脚本が良いのだろうな・・そして監督のものの見詰めかた、訴え方が。。しっかりしたフランス人女性ガブラス監督の意志がひしひしと伝わってきます。元々フランス映画って押し付けがましくなくて、個人の意志がはっきりしている印象です。子供もしかり。加えて映画的には芸術センスが非常に私好みでありまして、町並みも綺麗なら洋服のセンスもインテリアもいいし・・と視覚的にも楽しくキッチュ。子供のしぐさや思想も楽しい。面白いのは弟との対比。アンナは物心ついていますから、大人の身勝手さや自分の自我で色々いっぱい考えちゃうけど、弟ちゃんはな〜んも考えない(笑)、オナカ一杯になればいいんだからね〜よその国の食べ物も美味しけりゃぱくぱく。つまり先入観というものがないのだよね。いかに大人に成るにつれ複雑になっていってしまうか。アンナは正に移り変わりの真っ只中に居る訳でその激動の日々はさぞ大変なものであるだろう。しかし、子供は柔らかい。^^そしてアンナは強かった。^^ニナ・ケルヴェルの辛らつな眼差し最高◎です。
お父さん役の役者が素敵で素敵で〜(笑)。大人だって、みんな迷っているんだ。そんなことを一番強く感じました。。
Posted by フラン at 2008年10月07日 09:15
こちらは文句なしの素晴らしい作品でしたね。
弟フランソワが可愛くて可愛くて。アンナは貧乏な家に引っ越して不満なのだけど「お姉ちゃんと一緒の部屋だから夜も怖くない」とか言ってかわいい〜。でも日曜日を楽しみにしてるのにパパとママがもう働いてるのがかわいそうでした。
アンナはパパに最初からぞっこんでしたね。彼女の憧れのパパでした。

フランス映画ってやっぱり大人でかっこいい。
Posted by フェイユイ at 2008年10月07日 18:40
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