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2008年10月08日

『ブロークン・フラワーズ』ジム・ジャームッシュ

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BROKEN FLOWERS

おもしろかった。ジム・ジャームッシュもビル・マーレーも遠い昔に観たっきり(いや少し観たかな)という感じで物凄く久し振りだったのだがこれはよかったねえ。

なんとも力抜けててちょっと人を小馬鹿にしたようなマーレー氏と物語の面白さもさることながら背景がなんだかアメリカの広大巨大な絶景でなくてこじんまりした狭っこい道とやたら走っている電線と湿気を感じさせる雰囲気は殆ど日本の旅情景を見てるかのよう。手書きの「焼いた」CDから流れてくるエチオピアミュージックもまるで日本の歌謡曲のようで変てこなデジャビュ現象を起こしそうであった。

かつてモテ男だったドン・ジョンストン(ドン・ジョンソンにあらず)はとうとう恋人に逃げられ一人っきりになってしまう。
そこへ舞い込んできたピンクの封筒。それには20年前の恋人がドンの息子を産んでその子が19歳になりどうも父親を探す旅に出たようだ、と書いてあった。常に無気力状態のドンに代わり隣人のウィンストンは彼に20年前の恋人をリストアップさせ住所を調べ上げ会いにいけと勧めるのだった。
なにもやる気のないドンとやたらおせっかいにも心優しく行動的なエチオピアンのウィンストン。
嫌がりながらも押し捲られて息子の母親さがしに旅立つ男、というこの設定のしらけ方もなんか日本的な風合いを持つようで。
なおかつ上下ジャージのマーレー氏が結構部屋は片付いてて大きなTVを見てるのも日本的でアメリカ映画を観てる気がしないのだがそれはそれで面白く観ていった。

ウィンストンに尻を叩かれ渋々旅立ったドンだがかつての恋人との再会はどうも映画のように甘いものではなくどこか物悲しい。
愛していたはずのその女性との間には長い時間が変えてしまったものがありドンにはそれを取り払おうという気力はない。
だがもしかしたら息子がいて今から会う女性はその母親なのか、という思いがいつもはやる気のないドンを行動的にする。
再会した女性の家では何かタイプで書かれていたピンクの手紙を連想させるものがある。
孤独になっていたドンの頭の中で再会した恋人やその娘、そしてピンクのローブ、ピンクの名刺、ピンクのバイク、タイプライターなどが駆け巡っていく。どの女性もどこか関係がありそうに思えてくる。
しかしどの再会もドンにとって幸せなものにはならなかった。息子がいるという決定打もない。

失意の中自宅に戻ったドンの目の前に19歳くらいの旅をしている青年が現れる。唐突にドンは彼に食事を勧め「私のことを父親と思っているんだろ」と問い詰める。逃げ出す青年。後を追うドンの目の前をまた19歳くらいの青年が乗った車が走り去っていく。

謎のままのピンクの手紙。目に映る19歳くらいの青年が皆自分の息子に思えてくる。(最初ピンと来たハンサムボーイ(おいおいそれはないんじゃないか希望的観測)、サンドイッチを食べさせて追いかけてしまった旅の青年、そして自分にそっくりのジャージ青年(これは実の息子さんだとか))TVから聞こえる「ボーイ」という言葉にも反応してしまう。
「過去はすぎたことで、未来はどうにかなる。大切なのは今」などと言うのは簡単だが結局なにもできずじまい。それができるなら過去だってきちんとやれたはず。今もこれからも大切だけど何をどうしたらいいのかなんてわかんないのだ。そしてまた過去はすぎたこと、と繰り返すのみ。目の前から走り去る愛する者(かもしれない者)をどうする術もなくただ佇む中年男なのだった。

主題歌にすべて内容が歌われてるのではないのかな(笑)いい歌だ。

花屋の可愛い女のこの名前が「サン・グリーン」だが、これはニール・ヤングの『Greedale』の主人公の名前なんだそうな。

監督:ジム・ジャームッシュ 出演:ビル・マーレー ジェフリー・ライト シャロン・ストーン ジェシカ・ラング ティルダ・スウィントン ジュリー・デルピー クロエ・セヴィニー マーク・ウェバー フランセス・コンロイ
2005年アメリカ


posted by フェイユイ at 22:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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