映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年10月11日

『くちづけ』増村保造

くちづけ.jpg

『陸軍中野学校』『兵隊やくざ』『ある殺し屋』と大好きだったのに増村作品を追うことはしてなかった。先日『盲獣』がダメ押しに面白くこれはやはり増村作品を観ていくべきだとやっと思いついた次第。
この作品が映画監督デビューである。
1957年の作品で初作品ということでかなり荒っぽいのだがつい引き込まれてしまう疾走感がある。物語自体はなんともあっさりし過ぎてそれで終わりかいと突っ込みたくなるものだ。
それでもいい映画を観たなという気持ちになってしまう爽快感がある。

主人公欽一の拗ね方と生き方は今の若者とそう変わらない軽さがある。貧乏そうに見えてワリにあっけらかんと金のつてがあるのも昔の映画によくある貧相さがなくて明るいのだ。
二人の男女が出会う場所が刑務所の面会室の廊下というとんでもない所なのである。
二人の父親は両方とも10万円の保釈金を必要としている。欽一は父親と離婚した母親が今は羽振りもよくなっているのを見かけ自分を担保にして金を貸して欲しいと頼む。
欽一と出会う少女のほうは病気の母親を抱えヌードモデルの仕事でなんとか稼いでいる。こちらは何のあてもない為仕方なく金持ちの画家の息子と付き合う(つまりは体を売るという)ことで10万円を手に入れようとする。
こちらもあっけらかんとした明るいちょっと風変わりな少女でしかもすばらしいプロポーションで魅力的なのだが仕方ないとはいえ金持ち息子に金を要求した後びくびくしたりどら息子を追い出して10万円の小切手を渡そうとする欽一に何故どうしてと問い詰めて「くちづけ」をされ「これで理由ができただろ」と言われ「愛していると言ってほしいの」と言って泣き出したりする部分は欽一じゃないけど面倒くさい女と言う感じで興ざめである。特にあの変な泣き方は不気味だし。この辺は「昔の女ってこれだからやだ」って感じなのだ。
むしろ欽一と母親の関係がちょっと面白い。自分を抵当に入れて金を借りるとか息子が好きになった少女を見て「おもしろそうな娘だね」と言ったり少女とその父親が刑務所から歩いていくのを「送ってやろうか」と母が言うのを欽一が「へー」と感心して見せる箇所なんかは「進んだ母子関係」という感じでちょっとかっこいいのである。

タイトルの「くちづけ」はすれ違っていた欽一と少女が最後(のちょっと手前)で行うわけだが、モノクロームの画面に光と影が交錯する中、最初激しく続いてゆっくりと唇を重ねる、という演出でこれもとてもキレイなものだった。しかしこれって結局欽一は無理矢理「好き」と言わされたみたいにしか見えないんだけどね。まあ女は言葉が欲しい、ということなんだろうか(私も女ですが)

それにしても昔(1957年頃)の映画というのはそれだけでも面白いものにはなってしまう。
いきなり競輪場で当たって金儲け。友人のバイク屋で他人が預けているバイクを借りて乗り回す欽一。ヘルメットなしでスカート横座りのタンデム。海に行って水着を買い少女の水着姿を見て「すげえいい体してんなあ」と言う。物凄い人混みの中で泳ぎまわり水着のままローラースケート。
しかも増村監督の映像はぽんぽん変わっていくのでめまぐるしい。ちっともじっとしてないのだ。人間の動きもやたら早い。
単純な物語ではあったけどこの展開の早さと二人のキャラクターがなかなか面白かったのでついつい観てしまったというところだろうか。
少女がもう少し違ってたらなとは思ってしまうが。

欽一役の川口浩と少女役の野添ひとみは後に実の夫婦になってしまうわけである。
この時の二人は本当に若々しい魅力に溢れていて増村監督初作品にふさわしい初々しさである。

欽一がなんでもあっけらかんとやってしまうのが凄いとこで誰に対してもまったく物怖じしないし、バイクもローラースケートもやれてピアノもしっかり弾けてしまう。当時の独特の三輪車に乗っていてもかっこいい男なんである。今はなんでもダメ男を演出するんだけどね。

監督:増村保造 出演:川口浩 野添ひとみ 三益愛子
1957年日本


posted by フェイユイ at 22:34| Comment(4) | TrackBack(0) | 増村保造 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

増村作品「くちづけ」のレビュー、ワクワクと読ませていただきました。

わたくしもあれからツタヤに行っては増村作品の前をうろうろ・・・(笑)
「くちづけ」を手にとったのですが結局棚に戻して別のもの(フランス映画)を借りてしまいました。
でも、近いうちにきっと見ると思います。
その時またコメントいたしますね。
Posted by フキン at 2008年10月12日 16:15
こんばんは。フキンさんのコメントではっと気がついた私であります(笑)

この作品を観てさらに増村作品気になってきました。少しずつ本格的に観て行きたいと思っています。
この作品の鑑賞後またコメントくださいね。

フランス映画はなんだったのでしょうか。
気になります。
Posted by フェイユイ at 2008年10月13日 01:10
こんにちは!
借りたフランス映画はフィリップ・ガレルの「白の黒の恋人たち」でした。
フィリップ・ガレルの作品はこれが初めてなのですが私的にいまいちでしたね・・

同じフランス映画でしたら先日見た「裏切りの闇で眠れ」がなかなか好きでしたね。
というよりもあのブノワがいつの間にこんなに渋い男になってたんだ・・と目をムキマシタ!!
DVD返す前にもう一度見たんですから・・・(笑)
それから私もフュイユイさまと同じく松ケンファンなのです(きゃ)
それからジェイにもはまったのは最近でして。
この間手始めにアルバム「僕はとっても忙しい」を買いましたのです。
お薦めの彼のCD教えてくださいませ。
Posted by フキン at 2008年10月14日 16:20
私はフィリップ・ガレル知りませんでした。フランス映画も観たくなるので今度挑戦してみようかなと思います。でもいまいちだったんですよね^^;でも観てみようかな。
お勧めの方の『裏切りの闇で眠れ』も観てみたいです。

そして松ケンにジェイも、と(笑)
うれしい限りです〜。ジェイのCDは全部いいです!というのもなんですから、一応紹介すると、私は『葉恵美』ではまりました。
すばらしい一枚だと思います。特に『以父之名』には参りました。
でもファーストから天才としか思えないクオリティなのでファーストから順に聞いていってもいいのではないでしょうか。
他のもどれも大好きですねー。
Posted by フェイユイ at 2008年10月14日 20:09
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