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2008年10月17日

『トリコロール/赤の愛』クシシュトフ・キェシロフスキ

TROIS COULEURS ROUGE.jpg
TROIS COULEURS : ROUGE

ずっと映画を観ていると何故だか期せずして同じような作品を続けて観るという偶然が何度もあるのだが、今回もなんとなくニアミス。と言っても単に「最初の裁判で審判ミスをする判事(検事)」という人が出てくるっていうだけだが。

そして今回のフランス映画もやっぱり不思議映画。監督はポーランドの方だが。
ゆったりとした導入部で一体何が起きるのかすでに起きているのかなかなかつかめないまま美しいモデル兼業の大学生バランティーヌを見つめ続ける。恋人がイギリスに滞在中のバランティーヌは彼との電話での会話の中で次第に二人のズレを感じていた。
彼女はうっかり車で追突してしまった犬を血だらけになりながら飼い主を探しだして連れていくような誠実な性格の持ち主。
だがやっと見つけた飼い主は犬の受け取りを拒否する。そして彼は元判事でありながら電話の盗聴を常習にしている初老の男だった。

あまりにも普通の情景が続くのをじっと緊張感を持ちながら観続けていくといきなり初老の男が盗聴をしているという場面に遭遇してしまうのでぎょっとしてしまう。
しかもその内容は男同士の秘められたセクシャルな会話なのだ。
元判事ケルヌの卑劣な行為を咎めるバランティーヌ。そしてケルヌはすぐに人を憐れんでなんとか助けようとする彼女を嘲笑う。
今まで誰も愛さず誰とも接触していなかったケルヌは突然現れたバランティーヌに次第に惹かれていく。そして彼女も老いたケルヌとの会話に安らぎを見出していた。

この二人の出会いと絡んで若い判事志望の青年オーギュストと恋人の物語が進んでいく。これも一体ナンなのかと思っていたら元判事ケルヌの若い頃の恋物語と重なっていくのだ。
そして失恋したオーギュストはバランティーヌと同じフェリーでイギリスへ渡ろうとし嵐で船が転覆してしまう。
ニュースを見守るケルヌは映像の中に救助されたオーギュストとバランティーヌの姿を見つける。

同じように他の男に恋人が心を移し失恋するケルヌとオーギュスト。
ケルヌは退官した後、ひきこもりになり、オーギュストはイギリスへ渡ろうとしてバランティーヌと出会う。
作品中で「外に出れば出会いもある」という台詞が何度も使われているところからどうやらこの作品のテーマは『ひきこもりにならず外へ出よう』ということであるようでちょっとおかしいが静かで重い題材の作品なのに前向きな物語になっている。
私はこの監督について何も知らないのだが彼の遺作でもあるこの作品で老いた元判事の若い女性への思慕と外へ出よう、というメッセージは彼にとって非常に重要な題材だったのではないだろうか。

バランティーヌ=イレーネ・ジャコブの横顔が何度も繰り返し使われ美しさを見せている。
元判事ケルヌ役のジャン・ルイ・トラティニャンは老いてなお女性を惹きつけるセクシーさを持ち続けているようだ。
そして私の目的であるオーギュスト役のジャン・ピエール・ロリは出演時間が短くてちょっと寂しかったが削げた頬が美しい。

塞ぎこんで卑劣な行為に慰めを見出していた初老の男が他人からの侮蔑を覚悟して自らを裁き人生を全うしようとする姿と転覆しても生き延びたバランティーヌとオーギュストに希望を見ようとする作者の思いが感じられる。

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ 出演:イレーヌ・ジャコブ ジャン・ルイ・トライティニアン ジュリー・デルピー ジャン=ピエール・ロリ フレデリケ・フェデール ジュリエット・ビノシュ
1994年フランス/ポーランド/スイス


posted by フェイユイ at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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