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2008年10月25日

『戦争と人間 第三部 完結篇』前半 山本薩夫

戦争と人間 完結.jpg

この映画を観出した最初の目的は「日本人の戦争」じゃなく「満州における中国人と日本人」だった。第一部はまさしくそういう世界を描いてくれていて中国人(満州人)の言動も様々であって大変に満足な作品だったのだが第二部、第三部と完全に日本人主体の物語になってしまった。両方を対等に描くのは難しいのかもしれないが残念だ。

とはいえ第三部の前半、恋愛劇ばかりだった第二部よりは時代情勢の物語になってきて見応えはあった。ただし日本軍(関東軍)内部の陰惨なシゴキだの左翼に対する無惨な拷問だのばかりを観続けなければならないのでかなりめげてしまう。
だがこういうの観せつけられてしまうとそれだけで日本(まあ昔の)という国が嫌になってしまうではないか。どこの国でもあることかもしれないが、だからと言って理屈の通らない乱暴を受け続けるのを観てるのもしんどいことである。
特に新兵がやらされる中国人を銃剣で刺し殺す練習の場面は知ってはいても観たくはない。入隊した標耕平がどうするのかと思ったら腕と体の間に剣を差し込むという逃げをうっていたのでほっとした。その為に彼は上等兵に銃の台尻でがんがんに殴られた上、起きることもままならない状態で鉄道守備に行けと命令される。だがこの上等兵、中国人を刺す事ができなかった標をわざと殴り、他の上官にしごかれる前に鉄道守備に行かせたのだった。この上等兵もかつて監獄に入っていて新兵の時、苛め抜かれたのを深く根に持ち、新兵達から馬鹿にされないよう威張り散らしていたのだった。
耕平はとうとう順子と結婚。無論、彼女の父・伍代由介には秘密で結婚し事後報告したのだ。それを聞いた由介は可愛がっていた順子を家から追い出してしまう。
一方姉の由紀子は柘植少佐との結婚はあきらめ伍代家に有利な銀行頭取の息子と結婚。弱気で逃げる女と強情で背く女とどっちがいいんだか。
(弱気っていうのはあの温子さんのことね)
順子は伍代家を出て耕平の仲間の所で世話になっているらしい。ところで順子っていうのは「よりこ」で標は「しめぎ」って読んでいる。

伍代俊介は満州で左翼組織と反戦運動に没頭していく。だが軍部に対する抗議により投獄。同志・田島は激しい拷問を受けるが、俊介は伍代の人間ということで無傷で釈放。血だらけでさらに拷問される田島を俊介は苦悩に満ちた目で見つめるしかなかった。
温子と別れた後、俊介は尊敬する画家・灰山の頼みで身売りすることになった貧しい農民の娘・苫を伍代家の使用人にすることになる。ところが苫は俊介に恋し、満州まで追って来て「身売りされてしまったから今夜だけが自分の体だ」と言って俊介に迫るのだ。
物凄い思い込みに驚いたが言葉通り一晩過ごしたらさっと飛び出して去ってしまった。どうも俊介はあっという間に去ってしまう女性ばかりと関係してしまうようだ。苫が好きだったかどうかはよくわかんないが。多分経験少ない性体験で心はすっかり動いてしまってたみたいなのだが。女運がない人なのだなー。

戦争に無関心のように見えた伍代由介だが、日本が中国だけでなく先に英米ソを相手とする大戦を予想していることを察し動き出す。
日本の主だった工業を軽工業から重工業へと変化させ、そのためには国の支援が必要であると政府に持ちかけたのだ。
さすがおっとりしているようで決めるとこは決める伍代由介氏である。長男・英介は威張ってるばかりでいざという時じたばたしてどうしようもないけど。

自分の求めていた話ではない方向に行ってしまったが(もっと満州での話・瑞芳さんや不破医師、服部医師の話、白永祥、徐在林の生き様のほうを観たかったなあ)日中戦争から世界大戦に向かう緊迫した状況を追っていける。
いよいよ完結となるこれから、彼らはどうなっていくのだろうか。

監督:山本薩夫 出演:芦田伸介 滝沢修 高橋悦史 浅丘ルリ子 高橋英樹 三國連太郎 高橋幸治 石原裕次郎 田村高廣 加藤剛 吉永小百合 山本圭 北大路欣也 夏純子 藤原釜足 鈴木瑞穂
1973年日本

せっかく余韻にひたってもいいとこなのになんだけど、この作品いい感じで渋く面白いのに何故かあちこちに配される濡れ場シーン。どっちかというと男性向け作品なので戦争もありつつ濡れ場シーンはお楽しみで、という配慮なのか。
ま、よいけど今観るとかなりおかしく見えてしまうのは仕方ないことか。特に吉永小百合女史のそれは清純派女優としてはかなり衝撃的場面なのかもしれないが全く何も見えてはいない。あらわになった肩だけだ。それでも切なげな表情の彼女を観ればサユリストとしてはうれしくも許せないことだったのかも。とはいえ、奇妙に美しい映像として耕平と順子の初夜が映される演出がかなり笑えてしまうのだ。何もしてないのにね。
その穴埋めとして俊介と積極的な田舎娘・苫のベッドシーンがございます。これなんかもわざとらしく積極的なのでおかしいのだよねー。なんで満州までセックスしに?
潔く去ってしまうのもそれだけのために登場した娘って感じで笑えてしまうのはいけないのだろうか。
戦争場面はいいんだけど恋愛劇の部分はどうしても笑いを誘ってしまうちょっと昔の映画なのだった。
いい所はいいんだけどねー。難しい。


ラベル:歴史 戦争 満州
posted by フェイユイ at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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