映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年11月05日

『好色一代男』増村保造

『好色一代男 増村保造.jpg好色一代男  .jpg

この映画、私は観てないと思っていたのだが、途中で「あ、これだったんだ」と思い出した。
というのは船越英二演じる貧乏侍が恋焦がれた花魁を世之介の計らいで身請けしてもらい結ばれてはみたものの10年後には美しかった花魁は生活苦で酷くやつれ愛らしかった面影もなくなっていたのである。気の毒がる世之介に貧乏侍が女房を罵ると「それはお前のせいや。女は男次第で弁天様にも夜叉にもなる。女房が本当に夜叉ならとっくにお前を見捨てていた。それが見捨てずこうして側にいるのだからもっと優しくせいや」みたいなことを言う場面を覚えていて「この台詞は雷蔵様だったんだあ」と記憶が蘇ったのだった。その後の気位の高い花魁を体重と同じ重さの金で買う、という場面も思い出した。
金持ちのぼんぼんの女性遍歴という内容で市川雷蔵がとんでもなく軽いノリのお調子者ででもやっぱり色男で女にはいつももてもてというふざけた役を演じている。
次から次へと様々な女性に「女はええなあ、美しくて柔らかで」と言い寄る姿は軟弱そのものなんだけど雷蔵さんがやっているせいなのかどこか筋の通った清廉さを感じてしまう。「女ほど可愛いものはない。女の為ならわしはなんでもする」という台詞は言い方や言う人が違えば却って女を見下げているようにも聞こえるはずだが雷蔵さんの世之介が言っていると本当にそう思っているように聞こえるし、うれしそうにそう言う世之介こそ可愛い男に思えるではないか。
女好きと言う男、言われる男はいるだろうがこんな風に無我で無欲で一筋に女を求める男というのは結局は存在しないものなのかもしれない。

世之介の西洋版といえば『カサノバ』になるのだろうがカサノバを演じたヒース・レジャーに私は記事で「素朴な雰囲気が持ち味のヒースがそういうキャラクターに変身しきれているとは見えなかった。」などと書いてしまったのだが、いつもはクールで男らしいイメージの市川雷蔵はどう見たって女ったらしの世之介になってしまっていて比較に出されたヒースには申し訳ないが雷蔵さんの凄さというのをここでも再確認させられてしまったのだった。

物語自体、物凄くスピーディでテンポよくとんでもなく明るいのだが巧みに昔の女性たちの業とか悲しみを色んな女達に寄せて描いていっているのも面白い。世之介との出会いでその女達が本当に幸せだったんじゃないかなと思えるのは雷蔵さんの魅力によるものだろう。

世之介は女を愛し、女を傷つけるものをとことん嫌う。特に侍のように無意味に女を貶めるような仕打ちをすることを憎んでいる。
世之介のように純粋であったらまったく世の中は幸せなのかもしれない。

監督:増村保造 出演:市川雷蔵 若尾文子 中村玉緒 船越英二 水谷良重
1961年日本

カサノバも世之介もほんとはふたりとも両刀遣いだったらしいがさすがに映画ではそこらへんまでは描ききれてなかったね。
ヒースのでは皆無だったと思うが雷蔵さんのでは一応陰間さんが登場したり世之介が牢で男に言い寄られるシーンがあったのだけどね。


posted by フェイユイ at 22:43| Comment(4) | TrackBack(0) | 増村保造 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フェイユイさん、こんにちは!
この映画を観る前に「眠狂四郎」や「ある殺し屋」を観ていたけれど特に好きではなかった雷蔵さん(失礼な話ですが・笑)が急に気になる存在になった映画です。何だこの男は!って思ってたのに、憎むどころか可愛いなぁ素敵だなぁ思えてくるのは雷蔵さんの魅力のおかげですよね。シリアスな役も良いのですが、雷蔵さんのコメディは本当に楽しくて可愛くて大好きです。
Posted by natsu at 2008年11月07日 13:14
こんばんは、natsuさん。
「眠狂四郎」「ある殺し屋」では好きにならなかったのにこの映画で雷蔵さんをステキと思うとは!すばらしい感覚ですね!!!
でもほんとにこの世之介さん、おかしいけど憎めない。とても可愛い男なのです。
シリアスとコメディとどちらがステキか迷うほどのキャラクター作りができるなんてやっぱり凄い役者さんだったんですよねー。
Posted by フェイユイ at 2008年11月08日 00:14
こんにちは!!フェイユイさま。
増村作品次々とご覧になっておられるのを羨ましく思っておりました。
(なんやかんやとずっとゆっくりとDVDも観賞できない毎日で・・)

それで私が今回やっとの思いで観ました増村作品「清作の妻」。
期待以上の作品でした。
なんといっても若尾文子の演技が素晴らしかったです。
ひたむきな女のエゴ。
孤独との戦い。
それは愛や憎しみを超えて誰かとひとつになる
という事を清作の妻は訴えているようでした。

この映画のあるシーンで私は数年前のイタリア映画「マレーナ」を思い出しました。
あの映画は主人公のモニカ・ベルッチも確かに凄みのある女性を演じていました。
マレーナと清作の妻が私の中でダブりました・・・
もちろん私は若尾文子に軍配を上げたいと思います。

予告がまたいい感じの出来で・・・。
バッハのトッカータが流されてます。(笑)
Posted by フキン at 2008年11月10日 15:48
いいですねー。私もいつか絶対観ます(笑)
増村作品観たいのが目白押しです。たくさんあるのであまり一気にみようとすると息切れしそうなのでゆっくり観ていきたいものです。
『清作の妻』も勿論観たいです。

フキンさん、忙しくてもこういういい映画を観るのがやっぱりうれしいことですね!!
Posted by フェイユイ at 2008年11月11日 00:38
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