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2008年11月10日

『ときめきに死す』森田芳光

ときめきに死す.jpg

つい先日同じ言葉を書いたので気が引けるがこの映画も全く未見だと思っていた。初めて観るジュリーの映画と思って観始めものの何分か、杉浦氏が沢田研二を駅に迎えにいくところであっとなった。観ていた。
うむー、かなり衝撃的な内容なので忘れてしまっているということが信じられないが完全に忘れていた。しかも物語の進行を観ていくと「そうだった」と思い出すが全く寸分も先を覚えていず、最後までどうなるかと思って観ていた。一体なんだろう私の記憶。

しかしほんとうに不思議な感覚の作品である。
ここでも沢田研二は常識に反抗するような孤立した男である。『太陽を盗んだ男』よりもさらに謎を秘め、悲しさを胸に隠しているような男なのである。
3人の主要人物が登場するが3人ともどういう人間なのか判るようで判らない。最も奇妙に思えるのは杉浦直樹演じる元医者である。かなりの強面で腕っ節も強そうだ。何度も「高いお金で雇われていますから」と言っている。ある組織から送り出された殺し屋である青年=ジュリーの世話をし、健康のチェックをするのが彼の仕事である。元医者だから健康チェックをするのは専門だろうが車の運転、掃除から食事の支度をし、青年の言うことを何でも聞くように言いつけられている。
真面目なようで酒を飲んだり、浜辺で女の子にちょっかいをだしたりハンサムな青年に心惹かれているような言動をしたりなかなかつかみどころのない人物である。
二人がやっと馴染みだした頃、「二人の為の女」という女性が送り込まれてくる。静かな小さな山村で見知らぬ3人の男女がひと時を過ごすことになる。それは青年が「ターゲット」である新興宗教の会長を殺害するまでの共生であった。

あまり説明のない作品なのだが特に青年についての紹介は殆どなされない。終わり近くに青年が医者の運転で生家に行く場面がある。一緒に来ないよう頼んだ青年は1人小さな家へと入って行く。やがて青年がその家から出てくるのが見え、近所の家々からも青年を呼び止める人々が飛び出してくる。一体この青年は何者なのか。どういう生い立ち、どういう暮らしをしてきた人間なのか、そこに殺人者となった答えがあるのだろうが、はっきりとはわからない。

新興宗教家を殺害するというきわどく怖ろしい内容ではあるが、この作品の主要な部分は田舎の一軒家で見知らぬ3人が一種の主従関係を保ちながら共に暮らす幾日かの時間にあるのだろう。
元医者の青年へのややぎこちない献身ぶりと結局は肉体関係を持たないままになった性提供者の女性という存在が奇妙なバランスを保っている。
ずっとこんな生活が続けばいいと願いながらもそれはかなわない夢である。

映像も物語もすべてを言い表していないだけにもどかしさもあるのだが、新興宗教に没頭している小さな山間の町というのが現実にありそうだし、パソコンやネットで知り合うことになる人間関係というのも現実になってきた。時代を予見した作品だったのかもしれない。

監督:森田芳光


ラベル:犯罪 沢田研二
posted by フェイユイ at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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