映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年11月21日

『ミリキタニの猫』リンダ・ハッテンドーフ

the_cats_of_mirikitani_02.jpgthe_cats_of_mirikitani_.jpgthe Cats of Mirikitani.jpg
The Cats of Mirikitani

猫好きなのでタイトルに猫なんていうのがついてると物凄く気になってしまう。しかも『ミリキタニ』である。『ミリキタニ』ってなんだろか。と絶対思うはずだ。答えはニューヨーク在住の日系アメリカ人の名前ジミー・ミリキタニの姓なんだけどご本人が間違えてるんじゃとさえ思ってしまった。漢字に直すと『三力谷』なのだ。なるほど、言われれば普通なんだけど、思いつかなかった。広島出身の彼ということで広島ではわかる名前なのだろうか。

ニューヨークの街角・韓国系の花屋さん(?)の脇で絵を描くホームレスの老人。極寒の冬は物凄い着膨れしてビニールシート(?)の向こう側で寝泊りしているが病気もしないという。
グランドマスターと名乗るアーティストのミリキタニ氏の人気の絵が猫の絵でこれがなんともいえない味わいのある可愛さでなかなかいけてる。このドキュメンタリーを撮った女性リンダに絵をあげる代わりに自分を撮って欲しいと頼まれたのがこれらしい。

社会保障を受けさせようとしても頑固にはねつけ大変な境遇とはいえのんびり気ままに絵を描いているミリキタニ老人ののどかなホームレス生活のドキュメントかと思いきや、彼には辛い過去があった。
第二次世界大戦時、アメリカ市民権をとっていた彼はその権利を剥奪され収容所に入れられてしまう。その時のアメリカ政府の冷酷さを彼はこれまでの人生で繰り返し批判演説してきたのだという。
同じ運命を辿った日系アメリカ人が過酷な状況の収容所で命を落とし、またそこから出る時も行き場がなく死んでいったのだ。ミリキタニはその悔しさを絶えず口にし、アメリカ政府を罵り続ける。自分を兄と言って慕っていた幼い少年も亡くなったと訴える。
その悲しみと怒りは当然のことだけれども長い年月を怒りの中でいきてきたジミー・ミリキタニを慰めることはできないのかと思ってしまう。
猫好きだという彼の描く猫はとてもユーモラスでのんびりしているように見えるのに、収容所の絵は冷たく感情もないようだ。

同時多発テロの貿易センタービル破壊を機に路上生活が難しくなったジミー氏をリンダさんは自分の家へ住まわせることにする。
このこと自体驚きだけど、仕事へと出かけるリンダさんと飼い猫と家の中でひたすら絵を描き続けるミリキタニ老人の奇妙な同居生活が始まる。
映画を観てきたと言って12時近くに帰宅したリンダに「独身女性が12時帰宅とはどうする」と言って怒り出すミリキタニ氏がおかしい。いつも何も気にしていない風のミリキタニ氏が「悪い奴ばかりだぞ。心配した」と心臓の辺りを撫で回す。よほど心配したのだろう。それを聞いたリンダは「若いんだもの。外出したいわ」と言いながらミリキタニ老人のうどんを温めなおしてあげる。まるでほんとうの孫みたいである。一方ミリキタニがなかなか散歩から帰ってこないと「遅かったじゃない。心配したわ」と言ったりしてる。
日本人らしく小柄なミリキタニ老人とアメリカ女性らしい大柄なリンダが並んで写真を撮るのも微笑ましい。

ミリキタニの悲しい過去と波乱に満ちた人生とホームレスになり、またリンダたちの働きかけで社会保障を受け、新しい住居も得た老人ミリキタニ。
リンダさんのドキュメントはそれらを淡々と見つめていて、決して声を荒げて訴えているというのでもない。
ただミリキタニ氏がツールレイク収容所巡礼ツアーでかつていた場所を見ていくうちに彼が「もう怒ってはいない」と言い出したのは救いだった。あれほどの怒りがどうしてなくなっていったのか。
過去の場所に戻るという話は多いけど、それはやはり気持ちを整理する効果があるのだろうか。

引退などせず心臓が止まるまで絵を描き続けるというミリキタニ。彼があの怖ろしい収容所の絵をもう描くこともなく、大好きな可愛い猫の絵をずっと描き続けて欲しいものである。

このドキュメンタリーで描かれているのはミリキタニの歴史というだけでなくやはりリンダ監督とミリキタニそしてまた他の人々との交流なのだ。
ドキュメンタリーというのは被写体を写し撮っていくものだが本作では監督と撮られているミリキタニの友情が濃く映し出されていく。
それは狙ってもできない奇跡のようなものなのだろう。
観るものはそんな彼らの友情に強く惹かれてしまうのだ。

監督/撮影:リンダ・ハッテンドーフ 出演:ジミー・ツトム・ミリキタニ ジャニス・ミリキタニ ロジャー・シモムラ

2006年アメリカ


posted by フェイユイ at 22:37| Comment(0) | TrackBack(1) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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mini review 08349「ミリキタニの猫」★★★★★★★★★☆
Excerpt: ニューヨークのソーホーで暮らす80歳の日系人路上アーティスト、ジミー・ミリキタニを追ったドキュメンタリー。本作の監督であるリンダ・ハッテンドーフが路上生活をしていた彼を自分のアパートに招き、ルームシェ..
Weblog: サーカスな日々
Tracked: 2009-01-18 23:33
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