映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年11月23日

『オフサイド・ガールズ』ジャファール・パナヒ

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OFFSIDE

何故女はサッカー競技場で観戦ができないの?
というテーマでドイツ・ワールドカップ出場目指すイランの対バーレーン決勝戦での一日を描いた作品。

イランでは女性が男性競技者のゲームを観る事ができない。例えイランがワールドカップ出場を賭けた試合でも女性が競技場にはいろうとすれば逮捕されるという国なのである。何故なの?と登場人物の女性たちは問う。彼女達を逮捕した兵士たちも明確な答えはできない。「男と女は違う。競技場は男ばかりで女に聞かせられないような罵詈雑言が飛び交っているからだ」サッカーが大好きで自分も選手だという女性もいる。そんな答えでは納得できないのは当たり前。90分ほどの作品の中、殆どしゃべりっぱなしで「何故なの、何故なの」を繰り返しているような映画なのだ。
同じ女としてはほんとうに苛立ってしまう話で冒頭の可愛らしい少女が精一杯男装してサッカー場へ入ろうとする場面など、こちらも同じように緊張してしまった。「女だと判ったら、どんな目にあうと思う」などと言われたら怖気づいてしまう。
可愛い少女はあっという間に捕まってスタジアム裏手の簡単な柵の中に入れられてしまうのだが、なんだか声だけはでかいがちょっと間の抜け加減の人のいいリーダー格の兵士(この人いい人すぎてかわいそうである)とその部下みたいなのがあまり迫力のない感じで見張っている。柵の中の捕まった女達のほうがぺちゃくちゃサッカーがどうだの選手がどうだの話しまくって元気がいいったらない。
イランのサッカー選手といったらアリ・ダエイくらいしかぴんとこないが彼の名前も無論ちゃんとでてきて(トップ選手だから当然)なんだか知ってるぞとうれしくなる。
まあサッカー狂いのサポーターたちというのはどこの国でもおなじようなもんである。
前にスコットランドのサポ少年たちを描いた『明日へのチケット』も面白かったが奴らの熱狂振りというのは傍から見てる分にはほんとに狂気の沙汰である。
しかしイランサポ、これから決勝戦だっつーのにロナウドのシャツを着てる奴が何人もいたぞ。日本だったら考えられんと思うが適当だなあ。
作品中で見れないで悔しがる女性の1人が「日本人女性はこの試合場で試合を観てたわよ」と兵士にくってかかると「日本人は言葉がわからんから、見てもいい」という変な答え。よほどイラン人は酷い悪態をついているのかね。女が男の側に座るのはいけない、と言い張るからよほどイランの男性はいやらしいのかと思ってしまうがこれで観てると別段普通に女性に接しているわけで女性を観れば突然襲ったりするわけでもあんめーに、と首をかしげてしまうのだがなあ。
と言っても少し前までは日本も似たような部分もあったとは思うので、もう少し時間が経てば「あの頃は女はサッカーも観れなかったのよ」という笑い話になればいいなと他人事ながら願ったりもする。
とはいえ、同じく男性も女性競技者のゲームを観る事ができないという。男性監督でも女性チームの指示を外からするしかないというお国なのだ。うーん、大変だなあ。
ま、テーマがサッカー観戦ということなのでそれほど「なんという酷い差別だ!」と怒りの拳を振り上げるほどもないので(勿論腹はたつが、「女性性器切除」みたいなすぐにどうにかしてあげられないのかと苛立つものではないということで)なんだかムカつくよねといいながら笑ったり怒ったりしながら観れるいい作品に仕上がっている。
実際の男女差別はもっと大変なものかもしれないし、もっと深刻な事柄もあるだろう。
「何故女性は男性のサッカーを観れないの?ワールドカップなのに」という軽い雰囲気の作品だからこそ、笑いながら考えられるのだろう。男達もどこか気が弛んでいる楽しさがある。
そして結局試合は観れなかったのにイランのワールドカップ出場決定を大騒ぎして喜ぶ女達の明るさにもうれしくなる。
とんでもないことに町中のお祭り騒ぎに紛れて兵士たちの目を逃れ脱出する彼女達。大勢の男達の群れの中に同じサッカー好きとして混じりこみ騒ぐ彼女達。彼女達がもう少し年を重ねた頃堂々とサッカーが観れるといいのだが。

劇的な映画手法ではなくドキュメンタリーを観ているような撮り方が本当の話みたいだ。どこかのんびりした雰囲気もあり、聞こえてくるのが試合の歓声でバックミュージックみたいなものが使われていないのもいい感じである。
捕らえられた女性たちがそれぞれ個性的であり特に男っぽい彼女はすてきだった。頑張ってほしいなあ。

監督:ジャファール・パナヒ 出演:シマ・モバラク・シャヒ サファル・サマンダール シャイヤステ・イラニ M・キャラバディ イダ・サデギ
2006年イラン



ラベル:女性 差別
posted by フェイユイ at 21:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 西アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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