
このDVDの表紙写真があまりにも印象的でこれはちょっと観たいなと思わせてしまう。
瑞々しい若さと青空が溶け込むようで凛とした横顔と真っ白なブラウスに包まれた胸が眩しい。きゅっと細いウエストに真っ赤なスカートを穿き、髪が風にそよいでいる。
内容もまさしくこの通りで青空そのもののような若い娘を若尾文子が生き生きと演じている。
一連の増村保造監督作品で大好きになってしまった若尾文子でその色香に惑わされてしまうのだが、この時の彼女はほんとに可愛らしくて元気いっぱいである。とはいえその若々しさの中に色っぽさがすでに滲んでいるのだが。この時の文子さんは前歯の真ん中がすきっぱになっていて確か後では矯正しているのではないだろうか。そんなとこも若さなのかもしれない。
増村監督作品はテンポがよくてしかもきっちり台詞で言いたいことを述べてくれるので詮索などせずに映画を楽しめてしまう。
4人兄弟のうち1人だけ何故か田舎で育てられた少女ゆうこが高校卒業と共に父親から東京へ呼び寄せられる。
ところが東京へ行くと父親は不在で彼女は他の家族からは女中扱いを受けてしまうのだ。
実はゆうこだけは兄弟たちとは違う母親の子供だったのだ。
義母と義姉から執拗な虐めを受けてもけなげに頑張るゆうこ、という定番の物語なのだが、ぽんぽんと軽快に話が進んでいくのとほんとにゆうこが可愛くて明るいのでついつい観てしまう。
当時の東京の雰囲気も楽しい(って言っても今の東京も知りはしないのだが)変てこな人がいっぱいいてさすが都会だという気がする。
しかしゆうこが上京していきなり会うのがミヤコ蝶々さん演じる女中さんで関西弁なので混乱してしまった。とはいえミヤコ蝶々さんのおやえさんのしゃべりが面白くて惹きこまれてしまうのだ。
高校の恩師から助けられ、おやえさんに気に入られ、最初は反発していた弟ヒロシを味方にし、義姉が結婚相手と考えてるお金持ちの御曹司からは好意を持たれ、ゆうこは奮闘していく。
どう考えてもこの話、ゆうこの父親が根源で本人は自分が被害者だと思っているから性質が悪い。
ゆうこが父の家を出て病気になってしまった父親にきっぱりと言うのである。「すべてはあなたが誰も本気で愛さなかったからだ」
それまでゆうこを苛め抜いていた義母が夫の謝罪の言葉で泣き崩れるのを観てこの人もずーっと意地を張り通してきて辛かったんだなあと思いすべてが丸く収まり大団円という作品だった。
単純な話なのにとても魅力的なのだ。この作品の力強さというのは他のどれにも同じように感じるものである。
なんとなくこの明るさに高野文子の作品を思い出した。
監督:増村保造 出演:若尾文子 川崎敬三 菅原謙二 品川隆二 東山千栄子 ミヤコ蝶々
1957年日本