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2008年11月29日

『赤い天使』増村保造

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昨日観た『私は貝になりたい』が戦争を題材にしたサスペンスミステリーならこちらは戦争を題材にしたエロチックラブストーリー。常にエロチックであるのが増村保造作品の凄いところでしかもまったく手抜きをしない今観ても衝撃的なエロチシズムである。

昨日はフランキー堺に見惚れたが、今日はまたもや若尾文子さんの色香に惑っておりました。
小作りで整った顔立ちでありながらちょっと低めのどすの利いた声がたまらない魅力である。

筋書きだけ書いてしまうと日本がどうなるかという非常事態にとんでもないことばかりをやっているようなお話で抵抗を感じる人もいるのかもしれない。
なにしろ冒頭から従軍看護婦であるヒロイン西さくら=若尾文子が戦地で看護をしてあげている兵士たちにレイプされるところから始まって戦場のどこへ行っても女日照りの兵隊たちに好色な目で見られてしまう。
さくらが好きになってしまう軍医もことの始まりはさくらをレイプした兵士が瀕死状態で助けを求めた為無駄な輸血をする代わりに軍医殿の部屋へ夜行くと約束させられるところからなのだ。
兵士や軍医に勇敢で清々しいイメージを求めるならば男の性欲ばかりを見せ付けられるこの映画の冒頭はうんざりさせられるのかもしれない。しかも性欲以外は重傷の兵士たちの手術シーンばかり麻酔も覚束ない状態で手足を次々と切断され、うめき声と叫び声が絶え間なく続き、桶いっぱいに手足がどさどさ入っているという有様なのだ。
これを観たらどんな人もさすがに戦争には行きたくなくなるはずだ。

さて面白くなるのはこれからで自分をレイプした憎い兵士を助ける交換条件で軍医の部屋へ行ったさくらはそこで軍医の秘密を知っていくことになる。
軍医は自分にモルヒネを打ってくれるようさくらに頼むのだ。軍医はモルヒネ中毒だった。

戦争は怖ろしく、惨めで、馬鹿馬鹿しいものだとこの映画でもまた思い知らされる。
だがこの映画で描写される物語と映像は観てはいけないと思ってしまうような過激なエロチシズムでもある。
両腕を失った若い兵士が溜まった性欲の辛さをさくらに訴え、彼女の手で処理してもらう場面の悲しさと共に男性だったらきっとたまらない興奮を覚えてしまうのではないだろうか。
他の看護婦には頼まなかった、さくらさんだけ。というのは無論彼女の(つまり若尾文子の)セクシャルな美しさに耐え切れなくなったからだし、彼女にはそれに答えてやろうという優しさと強さがあった。
「天使」というのはこの彼女の優しさと美しさをあらわしているわけで、こういう行動に反感をもつなら「そんなのは天使ではない」ということになるのだろうが両腕を失った若い兵士にとって彼女は天使だったはずだ。
しかもさくらはその兵士を外へ連れ出してさらに快楽と幸せを与えるのだ。
この辺は江戸川乱歩のような世界にも思え、後の映画『盲獣』にもつながっていくようだ。

二人の男を死なせてしまった罪の意識を持ったさくらは好きになってしまった軍医殿と再会し自分の気持ちを伝える。
だが軍医は度重なるモルヒネの使用で性的不能になっていた。さらに前線に救援の指令を受けた軍医はさくらの是非にという願いを受けて共に危険な区域へと向かう。
そこでは従軍慰安婦がコレラに罹っており兵士たちも次々と伝染していたのだ。
ここでもさくらともう1人の看護婦に兵士たちの好色な目が注がれる。とはいえ、男性ならこんな状態に若い女性が来たのを見て冷静ではいられないと思うだろう。コレラに罹ってしまう慰安婦も悲惨である。
その病人がいる同じ部屋で看護婦を強姦しようとする兵士たち。なんという惨たらしい怖ろしい世界なんだろうか。
戦争で最も嫌悪すべきものはなんなのだろう。

兵士たちがコレラで倒れ弱小化してしまったところへ中国軍の攻撃が始まった。
援軍が来るのを必死で待ち続ける兵士たち。その頃やっと休憩を取った軍医とさくらはまた一つ部屋にいた。モルヒネを求める軍医を押し留めるさくら。
さくらは軍医を縛り上げ、一晩中禁断症状で暴れる軍医を抑え続けた。一見いけない遊びごとでもやってるかのように見える美しい看護婦と縛られた軍医のベッドの上での阿鼻叫喚は異常な光景である。
やがて症状が治まった軍医にさくらは自分を抱いてと要求する。自分の性器を触らせできないんだと言う軍医にさくらは自分の体を多い被せる。
やがてことが終わりさくらは「自分が勝ちました」と告げる。軍医の軍服を着て威張ってみせるさくら。
この間あいだに敵軍と睨みあう兵士たちの映像が差し込まれ、戦争の緊迫感と男女の性的欲望が交錯していくのである。

激しい銃撃戦が始まり、やがて援軍が到着する頃、さくらは自分だけが助かったのを知る。周りは皆死んでしまい、愛し合った軍医もまた死んでいたのだ。

やはりさくらは天使であったのだ。だがなんと言う悲しい天使だろう。
戦地で苦しむ男達に瞬時、幸せを与えたのだ。だが彼らの結果は悲惨な末路でしかなかった。

エロとスプラッタと不条理がごちゃ混ぜに押し寄せてくる作品でとにかく増村作品観出してから言うことはいつも同じでただ『凄い』と。
白衣の天使である清純なしかもすごい美女の看護婦さんが性欲で欲求不満の男達にあーされたりこーされたりという欲望満開で観ることもできるだろうし、戦争の悲惨さをこれほど表している映画もないだろう。
若尾文子の素晴らしさはいつもながらだが、次々と兵士の手足を切断していく軍医の芦田伸介、両腕を失ってさくらに性の処理を頼む若い兵士役の川津祐介も見入ってしまった。

ダラダラせずぴしっと終わるエンディング、いつも切れがいい。

監督:増村保造 出演:若尾文子 芦田伸介 川津祐介
1966年日本



posted by フェイユイ at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 増村保造 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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