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2008年12月04日

『雪之丞変化』市川崑

雪之丞変化4.jpg

こちらの市川崑『雪之丞変化』をまだ長谷川一夫存命の頃に観て度肝を抜かれたのを覚えている。映画の内容も驚きだったが女形と色男の二役を演じて様になる力量に目を見張ったのだ。それから間もなくして長谷川一夫の訃報を聞き遅れてファンになったものだと残念に思ったものだ。

そういう思いいれのある作品だったのだが、昨日のマキノ作品を観た後、鑑賞してみると意外にキレの悪い散漫な作品のように感じてしまったのだった。
同じ物語であるとはいえ、マキノ『雪之丞』は時間も90分を切っておりその分テンポよく設定も構成も非常に判り易い。
それに比べると市川『雪之丞』は知っていても導入部分から入りにくく感じてしまうのだ。
マキノ版はまず闇太郎とおはつから見た「江戸に来た若く美しい上方役者」という出だしで何者だろう、という興味を惹くのだが、市川版では舞台にたつ雪之丞の目線から始まり視線の先に仇敵を見つけるところから始まる。
マキノ版が映像と行動で物語っていくのに対し、市川版はシェークスピア劇のように台詞で物語っていくのでくどく感じてしまうのだ(シェークスピアが悪いわけじゃないが^^;)
マキノ版の方が古い映画なのに一人二役の雪之丞・闇太郎が揃って出る場面もその他の役者との掛け合いも自然なのに市川版はいかにも二役のようなぎこちない画面になり市川監督の手法のせいなのか闇の中に個々の役者がぽつねんと立っているような撮り方なのでこれも舞台で一人ひとりにライトが当たっているような他の人物との触れ合いが感じられない奇妙な映像になっている。
そして今更言うのも気が引けるが昨日の若くて美しい大川橋蔵=雪之丞を観た後では長谷川一夫=雪之丞(市川版での)はあまりに年老いていて若い女性が恋焦がれる女形としては無理があるように思える(昨日の橋蔵さんは綺麗だったからなあ^^;)
奥方さまが今自分のご贔屓の若尾文子さんで彼女の美しさと並べては気の毒だ。彼女が美しいとぽーっとなるためには彼女と張り合う美貌でなければならないだろうに。いくら長谷川一夫さんといえど酷な設定だったのではないだろうか。
昨日の橋蔵さんなら確かに奥方と並んでもひけをとらない若い美貌があったのだ。
確かに市川版のほうが『雪之丞』という意味では雪之丞の立ち回りが多かったかもしれない。が、肝腎の雪之丞にぽーっとなる魅力があまり感じられなかったのである。
マキノ版の雪之丞は若いだけに仇といってもどこか清々しさというか単純な率直さがあって却ってそれが初々しく愛らしかった。
市川版の『雪』は仇に怨念がこもっていて年をとっているだけに怖ろしく、普通はそれでいいのだが橋蔵=雪之丞が可愛かったのでなんだか損してしまったようである。
雪之丞だけでなく闇太郎も橋蔵のほうが俄然かっこよかったし、おはつさんとの関係もマキノ版のほうが好きだった。

ひとつだけよかったのは昼太郎。といってもこれはマキノ版には登場しなかったので比較はできない。
闇太郎と何故か張り合っているというかわいそうな笑われ役なのだがこれをどうしたものか愛しの市川雷蔵さんが演じておられる。
みんなから一目置かれる闇太郎と違って軽んじられている昼太郎。やせっぽちな体つきがかわいいのだ。今までまったく思わなかったがこの昼太郎の市川雷蔵さんはなんとなく松山ケンイチっぽいのである^^;
松ケンもこんなコミカル雷蔵さんと似てると言われてもー、だろうが、なんだか表情が似てておかしかった。他の時は似てません(笑)
市川雷蔵さんと松ケンの類似点を見つけただけでもよかったかな。

とにかく市川崑監督作品で以前感銘を受けた長谷川一夫『雪之丞変化』の再観だったので懐かしく観たのだが感想は意外にもあれれというものだった。
そのくらい昨日のマキノ『雪之丞』はよかったんだなあ。改めてマキノ雅之『雪之丞変化』はすっごく面白かった、と思ってしまうのだ。
同じ長谷川一夫主演の衣笠貞之助監督というのを観れるものなら観てみたい。

監督:市川崑 出演:長谷川一夫 山本富士子 若尾文子 市川雷蔵 勝新太郎 船越英二
1963年日本



posted by フェイユイ at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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