映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年12月21日

『ダークナイト』クリストファー・ノーラン

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THE DARK KNIGHT

悪の象徴である「ジョーカー」を演じたヒース・レジャーが公開前に亡くなったことも重なって非常に評判を呼んだ本作だが、私はまったく感動することも楽しむこともできなかった。

定番のヒーローものの繰り返される映画化なので登場人物の規定がまずあるのを壊せないのは仕方ないが「今までとは違う」という評判だったので期待もしたのだが。
「どんな善良な人間も悪に落ちてしまう」という題材自体が陳腐で「当たり前じゃないか」とうんざりしてしまう。そんな話をまた大真面目で語られても観る気はしない。
ヒーローもの、というのはある意味、馬鹿馬鹿しくて大人から滑稽だと言われるからこそ面白い、と言うところがある。
かっこいいヒーローが我が身を穢して悲劇ぶってみせるなんていうのはうんざりだ。
昔のいかにもアメコミの正義の味方対チンピラな悪者達、という図式のほうがずっとましだ。
とはいえ、何度も繰り返されたその図式を再びやるのが嫌なのはわかるし、私だってまたもや昔風の『バットマン』をやっても絶対観はしない。結局何故またリメイクをやるのか、というところに行ってしまうのだ。観客動員が見込める安全パイを振りたいだけに過ぎないわけだし。
大金を使って最新技術で驚かせ、意味もなく登場人物を苦悩させて感動作に思わせているだけではないだろうか。

大評判のヒース・レジャーのジョーカーを褒め称えたくても肝腎の作品自体に何の魅力も感じないならその登場人物にも意味はない。
表現の大きな悪党なので強い印象を持ってしまうが、物語自体がよくある悪事でやたらと大げさに爆発させたり脅したりするものなので私としては「こんな作品が最後(の一つ)なんて可哀想だな」と思うだけだ。
このジョーカーなんかよりは『ノーカントリー』のシガー(名前がちょっと似てるね)の方がはるかに魅力的だった。
おまけにたまたまこの映画を観る前に松山ケンイチが主演するんでジョージ秋山の『銭ゲバ』とついでに『アシュラ』を立て続けに読んでいて物凄いショックを受けていたとこだったのでジョーカーの悪党ぶり、というのが馬鹿馬鹿しく思えてしまう。比べたってしょうがない、とは思っても蒲郡風太郎とアシュラの物凄さ(姿も心も)に比べたらジョーカーには怖ろしさというものがない。
ジョーカーもこの2つのマンガを読んでみたらもっと怖ろしくなれるかもしれない。

そういえばジョージ秋山には『パットマンX』というマンガがあって大好きだった。彼こそ本当のダークナイトかもしれない。(これもタイトル似てるが^^;って多分もじりねこれは)

それに実を言うと物語なんか以前にもう映像自体が嫌いで観るのが苦痛だった。
まるで全編予告編のようなずたずたの短いカットを矢継ぎ早に繋げたような映像。
しかも150分以上の長さである。しかし言っていることにそれほどの深みがあったんだろうか。90分で充分だ。
無意味に長さを足して超大作にしたかっただけじゃないのか。じっくり見せる余裕もなく神経質にばたばたと画面を見せていく。
見せられるのは衝撃は覚えないが残酷なものか馬鹿馬鹿しく大げさに爆発したり引っくり返ったりするものの繰り返し。
ジョーカーの言うことは嘘ばかりで真実の悲しみというのもなくチンピラの戯言ばかりなので結局彼に感動したりはしない。

それに相変わらずアメリカ白人の正義の味方に黒人がついていて外国の敵を倒す、という図式である。昔はソ連・ドイツ・日本だったがここでは中国企業が標的でいかにも悪者にされてしまっている。香港人なのに中国普通語を話させられているし(そりゃ話せるけどさ)
しかも「韓国の闇業者」なんていう設定もされていて、もう少ししたらインド人が悪の権化になるのだろうな。
白人のみが苦悩する主人公であるという設定もいい加減うんざりしてしまうのだ。

「今までとは違う」と聞いていたが、とことん当たり前の陳腐な物語を今風の映像でがしゃがしゃと慌しく再現しただけのようにしか思えなかった。
娯楽映画にうるさいぞと言われそうだが、楽しくもなかったしね。
もうホントに自分にはハリウッド映画を観る資格はないもののようだ。

ギレルモ・デル・トロの『ヘルボーイ』はよかったなー。人情味があって。

監督:クリストファー・ノーラン 出演:クリスチャン・ベイル マイケル・ケイン ヒース・レジャー ゲイリー・オールドマン アーロン・エッカート
2008年アメリカ

簡単に言うと面白くなかったの。それだけ。


posted by フェイユイ at 22:15| Comment(6) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ。残念な鑑賞でしたね〜^^;私は劇場で9月に観ましたが、正直一言で云えば「面白くなかった」です。ヒースの最後の作品だし彼も入魂だったということなのでみに行っただけ。しかし、確かに入魂ではあるのですがあまりに痛ましい。。醜い。。そうですねフェイユイさん仰る通り作品として出来が悪いからジョーカーに気持ちを入れることが出来ないのですね。
役者陣も豪華・爆発・炎上・カーチェイス・スタント・CG等色々やっていてオカネかかっていましたが〜^^;やはり思うに映画は脚本だな、と。全然関係ないのですが「オカネかかってない」見本のような作品で『ウェイトレス』ご覧になって欲しいです。これは低予算も低予算、撮影期間も一ヶ月位、役者達も有名ではないがしかしその旨さに唸る。監督自身も出演、愛娘ちゃんも(しかし悲しい事に監督はこの映画公開直後に殺害されてしまった。。)。『ダークナイト』とは対極にあり、そして傑作なのです。本当の映画とは、こういうものをいうのだと私は思わずにはいられない。すいません、関係ない作品へ行ってしまいました。。
Posted by フラン at 2008年12月22日 08:32
フランさんもがっかりの作品だったのですねえ。
ほっとしました(笑)というのもほんとに他を見ると凄く高い評価されているみたいなんですよね。
人それぞれですから決め付けてもいけませんが、みんな本当にこの作品で感動したのかしらと首をかしげてしまいます。
ヒース・レジャーの死のために何か暗示にかかってしまったのではないでしょうか。

フランさんのお勧め、早速借りて観るつもりです!
楽しみです。
Posted by フェイユイ at 2008年12月23日 00:52
何かいつもオススメだなんておこがましい事ばかりでごめんなさい、です。無視して貰って全く構わないのです^^ただ、いい映画を観ると“フェイユイさんならどんな感想かな・・”てつい確かめたくなってしまい(笑)。
特にこの『ウェイトレス』は私のツボに嵌ったというか,もし自分が映画を創ることが出来たならこんな作品を作れたらいいな〜という感じなのです。でもお気兼ねなくぶった切って貰って構わないですよ〜(笑)
因みに『ダークナイト』ですが『ゼアウィルビーブラッド』の時にちょっと触れた豆酢館というブログでは作品に対しとても懐疑的でした。同感、と思い読みました。
Posted by フラン at 2008年12月23日 09:44
早速『ウェイトレス』観て感想書きました。
作品の作り方への感想というのを書いていないですが、途切れることなく観てしまったので(DVDだとつまらないとしょっちゅう中断してしまうんですよね^^;)やはり見せ方のうまい監督なのだと思います。
内容については記事を観てもらうとして、私的にはこういう感じ方でした。
フランさんのお勧め楽しみです。
またこれぞというもの、教えてください。特にこういうの観ないだろう、なんていうのがうれしいものです。『ウェイトレス』もそうでした。
Posted by フェイユイ at 2008年12月24日 09:15
昨年も『ディナーラッシュ』早速観てレビュー挙げて頂いたのでしたね。一年速いですね。。^^;
先日レンタルした『パンチドランク・ラブ』面白かったです。これも戯画的作品でした。『この道は母へと続く』〜ロシアの現在状況に暗澹とした思いが。でも子供たちは可愛い。『ある子供』〜自分的にすごく好きな映画です。『レオポルドブルームへの手紙』〜フェイユイさんお好きな感じかな、と思いました。『赤い風船』『白い馬』〜今夏映画館で再見。この傑作がついにDVD化!!。『ククーシュカ』〜フィンランドの映画と思っていたらロシア人監督でした。まだまだ観たいもの全てに手が回りません。。^^私は、後ほどwowowで録っておいた『Jの悲劇』を観たあとフェイユイさん評を読むつもりでおります。^^
Posted by フラン at 2008年12月24日 10:50
そうなんです。『ディナーラッシュ』!!あっという間に月日が経ってしまうものですねえ。しみじみ。

お勧め映画たくさんあげてもらってうれしいです!しかも知らないのが多い(笑)
『レオポルドブルームへの手紙』確かに一番興味あります。しっかり把握されてしまってますね^^;
楽しみ増えました。ちょっとずつ観ていきます!!
Posted by フェイユイ at 2008年12月25日 00:22
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