映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2008年12月28日

『バスカヴィルの獣犬』デヴィッド・アットウッド

バスカヴィル.jpg
The Hound of the Baskervilles

シャーロック・ホームズの世界が好きな者には堪らない作品だ。
ホームズの作品の魅力というのは何と言ってもイギリスの都会と田舎の情景がありありと浮かんでくるところなのだが、『バスカヴィル家の獣犬』ではダートムアというまさに荒野という言葉がぴったりの風景が広がっている。
登場人物ステープルトンが素晴らしい土地だと褒めているのだがこうして映像として眺めているだけでも荒涼とした岩場かずぶずぶとした沼地がどこまでも広がり季節が冬(ちょうどクリスマス)ということもあって寒々とした凍りつくような風が唸ってしとど冷たい雨が降りそぼっている、という光景である。こんな陰鬱な誰もいない土地を遺産としてもらってもあまりうれしくない気もするがミステリーの舞台としては申し分ない。
伯父チャールズ卿が不慮の死を遂げ、甥のヘンリー卿が遺産を受け継ぐ為、ダートムアを訪れる。
故チャールズ卿の遺言執行者モーティマー医師はヘンリーを守って欲しいとホームズに依頼をするのだった。

ダートムアの荒野に響く獣の唸り声はかつてバスカヴィル家の領主だったヒューゴーという気性の荒い男が妻の不倫に怒り(この辺、原作と違うのだが)沼地に逃げた妻を殺害する。その時妻が大事に飼っていた大きな犬がヒューゴーにとびかかりその犬も殺される。そして今でもその犬の悪霊が沼地を彷徨い遠吠えをしているのだという。
なんとも怖ろしい伝説で沼沢地の気味悪さをさらに深める。
そしてまたその荒野で発掘をしている博物学者のステープルトンとその妹が登場する。この妹が黒髪の素晴らしい美女でヘンリーはたちまち彼女に惹かれてしまう。

原作とは少しずつ設定も語り口も違うのだがこのドラマはドラマとして非常に雰囲気のある作品になっている。
原作ではいつもワトソンがホームズに首ったけな感じなのであるが、ドラマではワトソンの活躍が目立っていて、彼に秘密を持ったいたホームズにワトソンがふてくされるシーンがあり、またホームズの危機をワトソンが救うという話になっている。その上、最後はホームズがワトソンの機嫌をとるという考えられないおかしな締めになっている。
ホームズ役のリチャード・ロクスバーグはイメージするホームズにしては顔が長くないように思えるのだがなかなか彼らしい雰囲気を出していたようだ。
お気に入りの少年カートライト君は出てこなかったが時々味わうという「薬」を自分に注射するシーンはあって今の時代ではびっくりする人もいるだろうに、と心配してしまう。

今更ここに書くのもなんだけど、『バスカヴィル家』の名前を見ていて昔、あっとなったものだ。
バスカヴィル家の3兄弟の名前はチャールズ、ヘンリー、ロジャーなのだが、この名前でおっと思った人は萩尾望都の『ポーの一族』を読んでいる人だ。
エドガーとアランとポーというのは無論エドガー・アラン・ポーから取られた名前だが、『ポーの一族』の中で何度となく登場する兄弟名がこの3つの名前になっている。
そして『バスカヴィル』で交霊術が行われるがその場面はまさに『ポーの一族』の『ホームズの帽子』で行われる場面を思い起こさせる。
この名前のつけ方、なんてうまいんだろう、と感心したものである。

監督:デヴィッド・アットウッド 出演:イアン・ハート リチャード・ロクスバーグ リチャード・E・グラント マット・デイ ジョン ネトルズ ネーヴ・マッキントッシュ
2002年イギリス



posted by フェイユイ at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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