映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年01月05日

『敬愛なるベートーヴェン』アニエスカ・ホランド

CopyingBeethoven.jpg
Copying Beethoven

非常に素晴らしい箇所もあるのだが、どうしようもなくあちこちが綻びてしまった残念な作品ではないだろうか。

素晴らしい箇所というのは多分この映画のハイライトである、耳の聞こえないベートーヴェンが指揮をするのを彼の写譜師である女性アンナ・ホルツがオーケストラの真ん中に座って彼を誘導する、という場面である。
音楽映画を観てると意外に演奏場面が少なくて失望する場合があるがこの映画ではこのベートーヴェン『第九交響楽』がたっぷりと流れてしかも気難しい難聴者の彼が突然現れた若く美しい女性写譜師との精神的交流が音楽とともに映像として感動的に表現されている。この場面を観るだけでも価値がある映画だと思う。
だがその他では多くの時間を費やしているにも拘らず、映像が語るものが少なすぎる。
まずこれはベートーヴェンではなくアンナ・ホルツが主人公なのだろうが架空の人物のせいなのか、設定のはっきりしているベートーヴェンと比べて彼女の物語が希薄なのだ。架空の話とはいえ、この当時にこのような才能を持った女性がいたということを描きたいならもっとはっきり描いて欲しい。
また溺愛している甥がどうなったのか、何故溺愛しているのか、気になってしまうのに放り出されてしまった。アンナの恋人がどうなったかは別に描かなくてもいいが、登場させたならこの甥っ子は一体何の存在だったのか明確にして欲しい。多分「才能のない男と才能ある女がいてもこの時代はこういう立場だった」ということかもしれないが、男という前に甥っ子なんだから赤の他人より大事にはするだろう。
老いているとはいえ男性のベートーヴェンと若くて綺麗なアンナがあそこまで近づきながら恋愛関係にならないのもどうしてなのかを描いてもよかったのではないだろうか。
アンナが女性ではなく男性だったほうが映画として面白くなったような気もするのだが。

つまりは成功したオーケストラの場面以外は内容が薄くて見応えがないのである。
それにどうしても、才能あるモーツァルトと音楽を理解するが作る才能のないサリエリと同じく才能あるベートーヴェンと音楽を理解するが作る才能のないアンナという図式が映画『アマデウス』を思い出させてしまう。ベッドに横たわった天才が作り出す音楽を写譜していく場面も似ている、が、あまりにも演出が見劣りして気の毒になってしまうのだ。
天才だが常識がない、というのも仕方ないが設定が似てしまうのだが、これもアマデウスの常識外れに比べると大人しいものである。壮大さの点でもおかしさの点でも人間関係の深みの点でも描き方が弱いので寂しい印象になってしまった。

ベートーヴェンを演じたエド・ハリスもアンナ・ホルツ役のダイアン・クルーガーも悪くないのでますます勿体無い気持ちになる。
『アマデウス』のような大作にならなくともいいからどこか集中して二人の関係を深く描いて欲しかった。

思うにこの作品、難聴のベートーヴェンのためにオーケストラの中で指揮をする、というアイディアが生まれたものの設定を考えてたらどうしてもサリエリの話になってしまったので慌てて相手役を女性にしてしまったのではないだろうか。だもんで何故女性なのか、恋愛ではないのかという話が上手く説明できてないのではなかろうか。男性ならその辺別に考えなくともいいだろう。でもそれではどうしても『アマデウス』になってしまう。

と書いてきたが、この映画鑑賞の目的はアンナの恋人、マルティン役のマシュー・グードを観たいが為で。
なるほど美男子でありました。手足が長くてかっこいい。としか今のところ言えないのだが。他の作品も観ていこうと思っております。
これも『情愛と友情』を観る為、というのも変な話かなあ。

監督:アニエスカ・ホランド 出演:エド・ハリス ダイアン・クルーガー マシュー・グード
2006年 / イギリス/ハンガリー


ラベル:音楽
posted by フェイユイ at 23:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
『アマデウス』がいかに素晴らしいものであるかを感じずにはいられませんねぇ。あぁ、みたくなってきました。^^・・マシュー・グード目的ですか!私はこの作品調度クライマックスの第九演奏シーン少し前辺りからみました(ケーブルで偶然)。ここでのマシューは初見だったし何の印象もなし。『情熱と友情』予告での彼が何やら素敵でしたし『ルックアウト 見張り』(これから)も。
別には甥役のコ可愛いなと思ったら『アクロスザユニバース』出演らしい。この作品もちょっと興味ありです。
前半部分を未見なのでナントも、ですがそうですね演奏シーン良かったです。フェイユイさんは正にこういうものを求めていたのですね(笑)。最初、主人公の人誰これ☆状態。エド・ハリスと気付くのに暫く。変わるもんですね・・^^;熱演は素晴らしいけど細い筋張ったエドの方がやはり好きだわ、と。ダイアン・クルーガー綺麗。二人は恋人関係にはならなかったけど、恋人(グード)が嫉妬するような雰囲気は確実にあったと私は感じました。汚らしい(笑)けど随分とセクシーなベートーベンではありました。前半は見逃したのですがこの前半辺りに「交響曲第7番第2楽章“不滅のアダージェット”」があり、これが本当の目的だったのです。“不滅のアダーシ゚ェット”・・初演時、観衆が感動の余り「もう一度演奏して」と懇願、今一度演奏されたとか。この曲は私は最初ボリショイバレエの演目「マグリットマニア」という踊りの曲として聴いてイいてベートーベンとは解らなかったのですが昨年『落下の王国』主題歌(編曲で感じが違う)で物凄く感動したのです。この『落下の王国』私は大好きですが、評価の別れるところかもしれません。・・スイマセンまた話が膨大に。。;
Posted by フラン at 2009年01月06日 10:50
あの音楽映画にはまってた時、何故これを観なかったのか(笑)
フランさんのコメントを読んでて私の記事こそだらだら書いているばかりでうまく表現できてないと恥ずかしくなりました。気持ちばかり先走ってうまく言えないのですよねー。ああ、もっと上手く書きたいものです。
この作品を悪く言ってますが、逆に言えば「この作品は上手くない部分もあるけれど、オーケストラシーンだけで充分に観る価値がある」し、ベートーヴェンとアンナの関係もあそこですべて表現されていて他はいらないのですよね。音の聞こえないベートーヴェンがアンナの指揮を通じて音を感じている様はどんなラブシーンより素晴らしいものでした。それだけに他の部分が稚拙に感じられて残念だったのですよね。

今夜もう一度その場面を観たのですがやはり素晴らしい。
この部分だけでこの作品は秀作といってもいいとは思います。

『落下の王国』もう少ししたら観れそうですね。楽しみです!!
Posted by フェイユイ at 2009年01月07日 00:47
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。