映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年01月09日

『何がジェーンに起こったか?』ロバート・アルドリッチ

What ever happened to Baby Jane.jpg
What ever happened to Baby Jane

とにかくこの映画が1962年の作品だということを考えるとむしろこの後に作られた映画のほうが古臭いのでは、と思えてしまう。
とかく若さが求められる映画界で大女優だとはいえ、主役が二人の老齢の女優であること、いわゆるお飾り的な役柄が一つもなくてまったく地味な印象がないというのも大変なことではないだろうか。

通いのメイドを一人雇いなながらこじんまりと綺麗な家に住む二人の老姉妹。妹は子供時代にショービジネスで人気を博したという華やかな過去を持っており、姉はそんな妹に羨望と嫉妬の気持ちを抱いていた。
だが長じて姉は名女優と呼ばれるようになったが、入れ替わるように妹は落ちぶれ酒乱となっていく。
そしてある日、事故で姉は下半身不随となり、妹は嫉妬で姉を轢き殺そうとしたと疑われた。
そして二人はその後、一つ家で共に暮らすようになったのだ。

よくあるサスペンスものならおかしくなった妹が姉を虐待する様を怖ろしげに描いていくだけだが、この作品では妹の異常性の物凄さもさることながら(この恐ろしさは今観ても何の遠慮もなく凄まじい。上品に蓋のある料理というのが怖いし、ちゃんとスライスしたトマトが敷き詰められているのがなんとも怖い)時折、「私は一体どうしたらいいの」と嘆くことではっとさせられる。
彼女はただのモンスターなのではなく、どうしようもなくなってしまった人間の姿なのだ。
誰からも嫌われている、というジェーンはどんなに忌み嫌っても姉ブランチと離れては生きていけないのである。
観ている途中では「この作品では彼女達のこれまでの生活は何なのか判らない。この年まで何をしていたのか」と思ってしまうのだが、最後のブランチの告白でそれはすべて解決する仕組みになっている。
追い詰められながらも極めて明晰な頭脳で受け止め発言する姉ブランチと「もうその話はしないで」と事故の話から逃げようとし、そのくせ自分自身逃げ切れずに次第に狂ってしまった妹ジェーン。
またブランチがなぜ今まで我慢していたのか、なぜジェーンの虐待から逃げる気迫がいまいち乏しいのか、イライラしながら観てしまうのだが、それもすべてブランチが起こした行動からだったからなのだ。
何も知らなかったジェーンは姉の思惑通り、少しずつ狂ってしまい醜くなってしまったのだ。
観る者はジェーンの狂気と虐待に心底苛立つが、実はブランチの狂気と虐待なのだった。
憎みあいながらそれでも一つの家の中で互いにしがみつきながらしか生きていけなかった姉妹の人生が酷く悲しく惨めに思えてしまう。
それは結局は二人の両親のせいなのではないか、と思えてしまう(父親は無論だが、母親も傍観していただけなのだから)
二人の大女優の迫真の演技をたっぷり見せたいが為なのかやや冗漫にも思えるがそれでも目を離すことのできない緊迫感に満ちた作品であった。
ブランチ役のジョーン・クロフォードの気品ある美しさとジェーン役のベティ・デイビスの本当に精神が破壊されてしまったかのような鬼気迫る表情とまるでまだ少女であるかのような身のこなしはまったく目が離せない。
登場するメイド、ピアノ弾きの男、隣の奥さんなどどの人もハラハラさせてくれる。
現在の映画と比べてもまったく見劣りしない衝撃的な作品である。

実際にクロフォードのほうが年上みたいだが、これを観てるとクロフォードが凄く若くて綺麗に見える。
どう見てもベティ・デイビスの方が年上のように思えるがなあ。化粧のしすぎだからか。

監督:ロバート・アルドリッチ  出演:ベティ・デイヴィス ジョーン・クロフォード ヴィクター・ブオノ  アンナ・リー  メイディー・ノーマン
1962年アメリカ


posted by フェイユイ at 23:15| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ケーブルで先日やっていましてチラ観、内容が気になりレンタルして来て鑑賞しました。
最初に子供時代のブランチの物凄い憎しみの表情が印象的で、最後の最後に告白するブランチの言葉でやっと納得できました。途中の優しげな(被害者然とした)ブランチに違和感があったからです。恐いし思えば姉の憎しみにより破壊されてしまった妹のジェーンは本当に可哀想ですよねぇ。
この作品はリメイクしたら良さそうですが、ベティ・デイビスの役を演りたい女優はいないだろうなあ(笑)。^^;凄いです・醜悪通り越して怪奇にまで行ってましたね。直視するのが辛かった(笑)ベティ・デイビスの役者魂には恐れ入りました!
白黒画面が功を奏していたと思います。ヒッチコックの雰囲気を漂わせ・・死んだ鳥や車椅子、車、電話、ピアノ、人形、海・・小道具や設定の妙はサスペンス映画としての要素が旨く生かされていて,面白い作品でしたね◎楽しめました。^^
Posted by フラン at 2009年03月12日 10:23
これは拾い物という感じでした。まさかこんなに面白いとは。
是非こういうのこそリメイクを、と思いますが果たして資金が出るかなあ(笑)
なんとなく若い姉妹(せめて30代くらいの)に変更されそうな気がします。それではちょっと重みが足りなくなるのですがね〜。

ベティ・デイビスが怖いですが実際はクロフォードさんが怖い人みたいですね。不思議〜。
Posted by フェイユイ at 2009年03月13日 00:55
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