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2009年01月11日

『シークレット・サンシャイン』イ・チャンドン

Secret Sunshine.bmp
Secret Sunshine

久し振りに観た韓国映画。なにしろチョン・ドヨンとソン・ガンホ共演なので期待してはいたが、それ以上に打ちのめされるような作品だった。

チョン・ドヨン演じるシネは亡くした夫の故郷・ミリャン(密陽)に一人息子のジュンと引っ越してきた。
途中で車がエンストし、呼び寄せた修理工がソン・ガンホ演じるキム社長である。

タイトルのシークレット・サンシャインというのはこの町の名前・密陽を英語読みしたものでもあり、人物にとっての秘密の太陽という意味でもある。
シネがどんなに冷たくあしらっても絶えずシネの側で明るく笑ってくれるキム社長はシネにとって「秘密の太陽」なのだろう。
そしてキム社長にとっては他から見れば疎ましい存在にしか見えないシネこそが「秘密の太陽」なのかもしれないし、シネにとってはまた失ってしまった一人息子ジュンが「秘密の太陽」であり亡くした夫もまたそうなのではないか。
シネが天に向かって「見てる?」と問うのはジュンに対しての時と夫に対しての時があるのではないか。
「長老」と呼ばれる薬局の主人を誘惑した時は夫に対して問いかけたのか。それとも神様に?

シネは夫が愛していたという町で新生活を始める。家を見つけ、仕事を始め、子育てをするシネは健気に見える。
だが、新しい友人たちとちょっとだけ楽しんで遅く帰った時、幼い息子ジュンが誘拐され殺害されてしまう。
少しだけ彼女を救済したかのように思えた宗教もシネの魂を本当に安らげることができない。
ジュンを殺した犯人を許したつもりでいたが、彼女には許すことができない。「全部嘘だ」という歌を流し自分のために祈る人々の窓辺に石を投げるシネ。この時の衝撃音は酷く響いた。シネの叫びのようだった。
苦しみ苦しみぬいて、反吐を吐き、血を流すシネ。テープに録音していた子供の声を繰り返し聞き、物音がするとジュンが帰ってきたと思うシネ。すべての人を憎み、叫び、叩きつけるシネの苦しみは絶対に癒されることはないのだ。
どうしてもどうしてもシネは許すことができない。それは犯人でもあり、自分でもあるのだろう。
シネの苦しみは映画の中でなくなることはなかった。シネが本当に悲しみを忘れることはできないのだと思う。
そんなシネをずっと見守り続けるキム社長の一途さは切ないほどであり痛々しくもある。とはいってもソン・ガンホが演じるキム社長はいつもちょっととぼけたおかしさがあって振られっぱなしでありながら下心見え見えで彼女を追い掛け回していく。
まったく不器用でカッコ悪くしつこいだけのキム社長の愛し方なのだ。

精神を病んだシネが退院した日、キム社長が連れていった美容院にジュンを殺した犯人の娘が働いていた。店を飛び出したシネはキム社長に当り散らし一人走り去る。
自宅の庭先で自ら髪を切るシネの目の前にキム社長が現れ鏡を持つ。シネは黙って自分の髪を切っていく。
髪を切ることでシネは辛い過去を少しだけ切り捨てることができるのだろうか。
いつも自分を見つめてくれる温かい人に気づけるのだろうか。

監督が『ペパーミントキャンディ』を作ったイ・チャンドンだと知らずに観ていた。あの作品も他の韓国映画にない衝撃を受けたが、この映画はまた女性が主人公となっていることもあって自分にはより強い共感を覚えた。
彼女の子供の愛し方、ジュンが隠れたのをシネが蒼白になって探す冒頭の伏線の怖ろしい予感、子供の死を露骨に見せない表現、復讐劇などではない物語、映画の時間内で決着がつくような問題ではないということ、シネという女性が最初から完璧な人格ではない描き方、性や暴力の描写も避けていることなど静かで単調なほどの映像も心に残る作品である。

監督/脚本:イ・チャンドン  出演:チョン・ドヨン ソン・ガンホ チョ・ヨンジン キム・ヨンジェ ソン・ジョンヨプ
2007年韓国

化粧っ気なしのチョン・ドヨン。小柄で細い体だけどとても色っぽさのある女性でやはり迫力のある演技だった。
ソン・ガンホ。この味わい、久し振りに観れて物凄くうれしい。チョン・ドヨンが小柄なのでますます大きく朴訥と見えるのも楽しい。
韓国映画の男性にはよくあることだけど、ソン・ガンホにこんなに優しくされたら私ならころりといってしまうのだがなあ。「女のために教会通いか」とからかわれるのがおかしい。
そういえば今度吸血鬼になるんだっけ。


posted by フェイユイ at 23:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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