映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年02月03日

『マイルズ・フロム・ホーム』ゲイリー・シニーズ

Gary Sinise.jpg
MILES FROM HOME 

本作の監督であるゲイリー・シニーズを知ったのは無論俳優としての彼で『フォレスト・ガンプ』か『アポロ13』かというところだろうけど経歴としては映画監督が先だったのだと今頃知った。驚きである。監督に落ち着かせるにはハンサムすぎて勿体無い。
とはいえ、先に観た『二十日鼠と人間』(出演も)にしろ本作にしろ他にないほど素晴らしい感動作品でありこれまた役者としてだけの活躍は勿体無いのではないだろうか。
どちらもアメリカの古典とも言うべき小説家であるスタインベックを原作として『二十日鼠』では深い友情を本作では兄弟愛を描いている。
特に本作では『怒りの葡萄』をベースにしている(らしい)のだが、それを現代に置き換えて新しい物語となっているのがより身近に感じられる。
ただ本作の出来栄えよりも4年後の『二十日鼠と人間』の方が作品としての完成度は高く感じたのでさらに彼が監督業を続けるのならもっといいものが、と期待してしまうのである。
確かに題材は地味なので今まで私もまったく聞いたこともなかった作品だった。それだけに余計にいい作品を作ってくれるのではないか、と願ってしまうのだが。

さて前置きで賞賛しすぎたが、本作の感想に移ろう。
父親の代には「最優秀の農場」と評価され皆から信頼され慕われていた「ロバーツ農場」にはソ連からフルシチョフが見学に訪れるほどだった。その父が亡くなり後を継いだフランクとテリー兄弟だったが、不作が続き借金の為に銀行から農場が差し押さえになってしまう。
なんとも今の不景気と首切りの嵐にも重なってしまうような内容である。作品の中でも困窮しているのは兄弟だけではなく、多くの農場主が土地を奪われ追い出されてしまったことから農場と家に放火し逃走する兄弟に同情し応援する、という現象が起きてしまう。
特に兄であるフランク(リチャード・ギア)は父から受け継いだ農場と家を失ったことで自暴自棄になり農場に放火し警官に暴行をふるい、銀行強盗を計り自分達を追い詰めた銀行員を射殺しようとまでしてしまう。
そんな兄に我慢してついていった弟テリー(ケヴィン・アンダーソン)だったが、さすがに銀行強盗には反対し銃を撃とうとした兄を止め怒りを爆発させる。
実際に殺人を犯してしまうことになる『怒りの葡萄』に対しこの展開はもしかしたら甘いのかもしれない。
追い詰められ行き場のない農民がとうとう殺人まで犯してしまいさらに自分を追い詰めていく、という物語もあったのかもしれないが、弟が兄を抑えた時はほっとした。
この後、弟はガールフレンドの勧めで(このガールフレンドの存在もちょっと都合よすぎだが)自首することになり兄は逮捕されたくない、という言葉を残しカナダまでを爆走していく。
「見本市場」という場所である恰幅のよい男が牛に重い荷物を運ばせる、というパフォーマンスをするのだが、荷物が重すぎてどう引っ張っても動かせず牛が苦しむのを「立て!」と言って激しく鞭打つ男にフランクが怒る場面がある。どうしても動かせないものを運べと鞭打たれる牛の姿に自分を重ねてしまったのだ。
かわいそうだと牛を打ち殺してしまうフランク。その後、両親の墓の前で泣きながら謝るフランクの手には銃があったので怖くなってしまったのだが彼は命を捨てることはしなかった。
主人公の彼に強盗も殺人も自殺もさせなかったのは彼が荷った罪と罰があまりにも現実的なものであり追い詰められた労働者にそのような地獄を味あわせたくなかった監督の思いなのではないだろうか。
無論自分自身もフランクに共感しながら観てしまったのだ。そしてテリーにも。
彼らが犯してはならない罪を犯さずによかった。死という罰を受けずによかった。
自首をすると言うテリーの行動も賛同するし、遠い国へと走り去ったフランクがどうか捕まらないで欲しいとも思う。
『怒りの葡萄』は苦しんだエジプトから逃げ出す聖書の「出エジプト記」をモチーフにしているという。
フランクが苦しんだ土地から必ず出られたと信じたい。

自分の重責に過激な行動をとってしまう兄フランクを演じたリチャード・ギア。なんとなく甘いハンサムのイメージが強いがここでのギアは長男の悲しさを演じていて素晴らしかった。そういえば『天国の日々』という映画もあった。観なおしてみたいものだ。

逃亡者兄弟にインタビューをする記者をジョン・マルコビッチが演じている。あまりに変てこな風貌で出演を知ってなかったら気づかなかったかも。
東洋人のカメラマンが兄弟をかっこよくキメて撮っているのがおかしい。

監督:ゲイリー・シニーズ 出演:リチャード・ギア ケビン・アンダーソン ジョン・マルコビッチ テリー・キニー ペネロープ・アン・ミラー
1988年 / アメリカ


ラベル:兄弟
posted by フェイユイ at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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