映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年02月13日

『天国の日々』テレンス・マリック

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DAYS OF HEAVEN

これもまたアメリカ映画としてはかなり奇妙な味わいの作品である。とにかく美しい。「マジックアワー」と呼ばれる夕暮の黄金色の短い時間帯を多用して撮影されている為にいつも本当に天国にいるかのような感覚を持ってしまう。都市部で仕事にあぶれた人々が農場での日雇い労働に従事する場面から始まる物語で低賃金で雇い主の横暴にも逆らうことは許されず、雪の降る日は屋外で藁の中に潜り込んで休むしかないのだがあまりに映像が美しいのでつい「こんなに綺麗な場所だったら働いてみたいなあ」なんて気になってしまう。見渡す限りの麦畑、大空の下で焚き火をしながら眠るのもロマンチックに見えてしまうのだ。

さて物語はある少女の語りで成り立っている。少女が見た当時のアメリカ、流れ者の兄とその恋人、そして大農場の主である余命1年の男。
少女はそれらを見つめて成長していく。
物語と映像が絡まって一つの叙事詩となっているかのようだ。
少女兄ビルは恋人アビーを妹と偽っていたためにチャックはアビーに求婚する。大金持ちの男チャックは病で1年の命。
ビルは1年我慢すればいい、と算段して恋人であるアビーをそそのかし結婚させる。
チャックはアビーと夫婦になり兄と妹も共に暮らすことになった。
貧乏にあえいでいた彼らにとって夢のような生活が始まる。遊び暮らし何一つ不自由がない。
だがその暮らしの中で少女はもう自分達がもうこの世にいないかのように感じている。
『天国の日々』というのは安楽な日々、という意味ではなく『死んでしまった日々』という意味だったのだろうか。
彼らの一見美しい毎日は欺瞞の日々だった。だが偽りの幸せの中でチャックは予想された1年を迎えても死ななかった。
次第に寂しさを覚えたビルは夜中にアビーを誘い出す。
だがついにチャックはビルとアビーが兄妹ではなく恋人なのだと気づいてしまう。
それまでの穏やかで優しいチャックの顔が怖ろしい表情に変わる。
同時に美しい黄金の麦畑にイナゴの大群が襲い青空は真っ暗に変わってしまう。
そしてチャックの怒りがビルに直接向い彼の持っていたカンテラから麦畑に火が着いてしまった。
大勢が消そうとしても火は燃え広がっていく。チャックの怒りが炎となって麦畑を燃やし尽くす。
そしてチャックはビルを撃ち殺そうとするがビルが持っていた工具(ドライバーとか?)がチャックの胸に突き刺さって彼は死ぬ。
病で死なず自ら作り出した事故によって死亡したチャック。
そして健康なビルも偶然とはいえ殺害の為に警察に追われ撃ち殺されてしまうのだ。
残されたアビーは少女を寄宿学校に入れて、どこかへと旅立ってしまった。
そして語り手である少女は。
寄宿学校から脱出し、年上の友人である女性と共に彼女もまた旅立っていく。
今度の旅は彼女自身が作り出す旅なのだ。

この物語は少女のものなので『天国の日々』というのは彼女にとって彼女がいうように死んだような日々なのだろう。
安楽ではあるが虚言であり何もすることのない偽りの日々。
やがて成長した少女はその日々を不思議な美しさで思い出すのだろう。

映画をずっと観てると続けて観る映画に奇妙な関連があることがある。
昨日の『炎上』のように人間関係が壊れた時、この作品でも炎が大切なものを焼き尽くしてしまった。
そして死。
やはり炎というのは人間の苦しみ悲しみを表現するイメージなのだ。
計算された美しい映像、というのも二つの映画に共通したもので、その力にも圧倒される。
『天国の日々』での映像美はどこか遠い昔を思い出しているような懐かしさを感じさせる美しさで多くの人を魅了するのだろう。それはとても綺麗だが静かで奇妙に怖ろしくもある。

そして農場主のサム・シェパードとリチャード・ギアの若さと美貌にも見惚れてしまう。
一人の女性を愛してしまった二人の愛と憎しみが炎となり空を黒くした。
悲しい詩篇である。

監督:テレンス・マリック 出演:リチャード・ギア ブルック・アダムス サム・シェパード リンダ・マンズ ロバート・ウィルク
1978年 / アメリカ )


posted by フェイユイ at 23:12| Comment(4) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
(思わず)☆おぉー。これ今度観てみます!最初の段落を読ませて貰っただけです。
この作品、いつもいつも借りるか迷っては止め『天国の門』(未見)とごっちゃになったり。。やっと決めました?ありがとうございます^^;
Posted by フラン at 2009年02月14日 08:54
そうでしたか!なんだかフランさんなら絶対観てるって思い込んでました(笑)
では感想コメント楽しみに待ってます!!

私は昔一度観てたんですが、観なおすとやはりこんな映画だったんだ!と思ってしまいます^^;

Posted by フェイユイ at 2009年02月14日 20:30
・・観ました!。映像美が凄いですね。映画館でならより一層素晴らしかっただろうな、と思いました。
この時代のこのような状況は、実際にあったのだろうか?・・と考え続けました。何か全体がそれこそ“この世の話でない”ような神話的な感じ。テレンス・マリック作品て多分そうなんでしょう。私は他に『シン・レッド・ライン』しか観ていませんが(寡作ですよね)。哲学的なのですよね。
リチャード・ギアとサム・シェパードの綺麗なことといったらー!!!ナミダモノ(笑)。美しい画面の中に美しい彼等が映る・・それだけで感動です。
作話的には疑問が沢山あるしひどく非現実的なものを感じました。でもそれでもいいんでしょうね監督はきっと。まるで神が地上の人間達を見下ろしているような目線。。
ところで“マジックアワー”という言葉は以前三谷幸喜氏が自作『マジックアワー』という名の由来として同じ内容語ったのを聞いてました。確か撮影か何かのスタッフからの又聞きだそう。多分この作品映像は後々までの語り草になっているのではないかしら。その三谷幸喜『マジックアワー』20日に日本アカデミー賞受賞式で見たばかりです。その式で(他作品)松山ケンイチ君、私はいつもフェイユイさん宅でおなじみですから他人のような気がしなく(笑)非常に微笑ましかったです!彼は、他の誰にもない雰囲気を持っていますね。のびのびと、可愛かったです^^。
Posted by フラン at 2009年02月22日 20:27
ふむふむ、フランさんとしては映像的にはいいけど物語的には×でしたねえ。やっぱりどこかそういう予感で避けてしまってたのかもしれませんね。
私はわりと好きです。本文にも書いていた(と思うのですが)ようにすべてが少女の目で見た思い出、という語り口が好きですね。といっても少女の目が見てないところも映ってますが^^;監督がどういういいわけができるかまでは判りません(笑)
映像だけは物凄い力の入れようです。今でもここまでできるのか、と思います。
『ニュー・ワールド』も好きでした。

日本アカデミー賞!最近授賞式って全然見てなくて報道のみで松ケンの話も聞いてたんですがフランさんの「可愛かった」の一言で慌ててYoutubeで見てきました(笑)
いつもどおり訛っていて可愛いかったです。

「マジックアワー」という文字を書いていた時、私もやっぱり三谷幸喜思い出してました。きっとこの映画からでしょうね。
Posted by フェイユイ at 2009年02月22日 23:04
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