映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年02月23日

『鬼火』ルイ・マル

鬼火2.jpg鬼火.gif
Le Feu follet

この年齢になってルイ・マル作品を意識して観ているわけだが、どの作品を観てもとんでもない驚きを感じてしまう。
それぞれで違う驚かせ方をしてくれるのだが、この作品にもまたぶったまげてしまうのであった。

モーリス・ロネ演じる30代の青年は自分自身にも世間にも苛立ちを感じて憔悴しきっている。かつては美男で女からも好かれたのに今の自分はもう若くなく、女性にも欲望を感じない。誰に触っても感覚というのがない、と言うのだ。そしてそういう不安を感じていない周りの人間に酷い苛立ちを感じている。平凡な生活を確信し、落ち着いてしまった自分と同じ年齢の友人たちに怒っている。
友人たちはそんな彼をなだめるが彼は理解することができない。
結婚生活にも金儲けにも失敗しアルコール中毒になって精神病院で療養していた彼を人々は影で嘲笑っている。それを感じてまた彼の心はひりひりとささくれ立つのだ。
自分が若い時にこれを観たらどう思ったろう。自分勝手で高慢でしかもひ弱で卑怯な行動に反発を覚えたのではないだろうか。
だがこの年で観ると彼の苛立ちも判る気がする。
だらだらとした物語にも退屈したろうし、美男とはいえ中年に差し掛かった男の眉根を寄せた鬱な顔を見ているのにも嫌気がさしただろうが、今ではまだ若く美しい顔としか見えない。
そんな彼が様々な知人たちに出会って何かを求め続け、結局何も得ることができず最後己の心臓を撃ちぬいて死んでしまう、というあっけない最期に衝撃を受けた。
心のどこかできっと彼を救ってくれる人が登場するのだ、と信じてしたのだ。
だが彼を救ってくれる人は何人も登場したのだが、彼自身がそれを拒絶したのである。
この映画を単に空しい映画と思う人もいるだろうが、多分ルイ・マル監督自身はこの映画を作ることによって生きなければ、と思ったのではないだろうか。
彼はまだ若く美しくて何の力も失くした人間ではない。彼を愛してくれる女性も友人もいたのにそれと気づかなかったのだ。彼が死ぬことで友人たちの心が傷つくことを願ったが、それはいつしか消えてしまうのである。
物語は淡々と進むがモーリス・ロネの鬱屈した姿がなんとも素敵で見惚れてしまう。
何人もの友人たちに出会うのだが、やはりジャンヌ・モローが登場した時ははっと惹き寄せられる。何度見てもチャーミングな顔なのである。

最初にクレジットが流れ、最期ロネが死ぬところで画面がぱっと終わってしまう。凄い。

監督:ルイ・マル 出演:モーリス・ロネ ジャンヌ・モロー
1963年フランス


ラベル:ルイ・マル
posted by フェイユイ at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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