映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年02月24日

『ハーヴェイ・ミルク』ロバート・エプスタイン リチャード・シュミーセン

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THE TIMES OF HARVEY MILK

日本においては、アメリカ第81回アカデミー賞で『おくりびと』が外国語映画賞、『つみきのいえ』でアニメーション短編賞をとったおかげで他の賞はすっかり影が薄くなってしまったようだ。私も無論DVDになった折には観ようと思ってはいるが。
気になっていたガス・ヴァン・サントの『ミルク』はショーン・ペンが主演男優賞をとり、また脚本賞を取ったのだが、今頃になってこの映画の主人公であるハーヴェイ・ミルク氏がどんな人だったのかと思い始め(全然何も知らなかった)探したらドキュメンタリー映画が見つかり、早速観てみることにした。

決して長くはない作品で非常にオーソドックスに作られている簡潔で判り易いドキュメンタリーである。
まったく知らなかったハーヴェイ・ミルクが大変魅力的であると同時に素晴らしい政治家だったことが伝わってくる。そして情けないことに涙が溢れて困ってしまった。
こんなに大変な怖ろしい出来事があったのだということに衝撃を受けたし、こんなに素晴らしい人がいたんだと単純に感動してしまったのだ。

観ていてごく素直にこんな政治家がわが町にいてくれたらどんなに楽しくていい町になるだろう、なんて思ってしまうような快活で前向きな人なのである。
それは隠れた存在であるゲイ・ビアンたちの代表であるというだけでなく他のマイノリティたちにも勇気と希望を与えてくれる行動を取ってくれたからだということになるほどだからこれほどの支持を得られたのだと納得できた。
しかもいつも笑顔で(ひどい癇癪もちでもあったらしいのだが)ジョークやユーモアを忘れない人だったことがより皆から愛される要素だったんだろう。彼がカムアウトしたゲイの代表としてアメリカ社会を開こうとしていく前半はわくわくするような気持ちで観ていくことができる。
だが、周囲の人々の誰からも慕われているように見えるミルクと対立する形で登場するのがダン・ホワイトという白人の青年でミルクと同じ執行委員という役職にありながら公約も果せないまま、辞職願を出してしまう人物である。彼が自分の再任を認めなかった市長と共にミルクを射殺してしまったことは大きな打撃であり悲劇で愕然とする思いだったが物語りはここで終わらず、さらに彼が中流家庭の白人でありへテロであることから(としか思えない)二人の殺人者でありながら軽い刑罰になり、そのことがミルク支持者の暴動を起こしてしまうのである。
尊敬する人の死が不当に扱われた激しい怒りからとはいえ暴力が行われたことはミルク自身は悲しむことだったのではないだろうか。
裁判に関わった陪審員のすべてがダン・ホワイト側の人間つまりマイノリティは一人もいなかった、というのはこうしたゲイ・ムーブメントが盛んになっていたとはいえ結局は迫害される存在にしかすぎなかったことを表している。
アメリカは今まで絶対的に迫害される存在だった黒人の大統領が生まれたわけだが、こうした人々の考えと行動を見ていると、今と言う時代はこの時とは違うのだろうか、とやはり考えさせられてしまうし、またそのことが日本と言う国ではどうなのだろうか、とも考えさせられてしまうのだ。

人々がハーヴェイの死を悼んで夜の町をキャンドルで溢れさせ行進する場面の悲しさ。美しさ。彼のように素晴らしい人がどうして殺されなければならなかったのか。それはただ一人の男の嫉妬と復讐心だけだったのか。
「カムアウト=公言しよう」とみんなを励ますハーヴェイの明るい笑顔が心に残る作品だった。

ガス・ヴァン・サントの『ミルク』を観れるにはもう少し待たねばならないが、このドキュメンタリーを観て待ちきれない気持ちになってしまったのである。

監督:ロバート・エプスタイン リチャード・シュミーセン
1984年アメリカ


ラベル:同性愛 政治 歴史
posted by フェイユイ at 22:43| Comment(2) | TrackBack(0) | 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
フェイユイさん、こんばんは。
20年位前に地元の小さな劇場でハーヴェイ・ミルクのドキュメンタリー映画を
見たことがあるのですが、たぶんこれだったんですね。
DVDが出ていたなんて思いもよりませんでした。ご紹介ありがとうございます。

ショーン・ペンは今までオスカーノミニーになっても授賞式は欠席していたような
気がするのですが、スピーチしたのはこの作品だったからこそなのでしょうかねぇ。
Posted by じえるな at 2009年02月24日 23:58
こんばんは、じえるなさん。
淡々としてますはとても素晴らしいドキュメンタリーでした。じえるなさんはずっと前にもう観ていたんですねー。

ショーン・ペンの名前は昔から知ってましたが、あまり意識してなかったんです。
ミッキー・ロークとの友情話もありましたし、一挙に興味ある人になってしまいました。
Posted by フェイユイ at 2009年02月25日 00:36
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