映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年03月11日

『迷子の警察音楽隊』エラン・コリリン

The Band's Visit.jpg
The Band's Visit

英語という第3の言語で会話はできるが互いの言葉は通じないエジプト人とイスラエル人の物語だが、政治情勢から生まれる軋轢・対立などの表現は殆ど見せない作品になっていた。

イスラエルのとある町に呼ばれてやって来たエジプトの警察音楽隊の彼らが緊張しているのは無論そういう背景があるからなんだろう。それでも若いカーレドなんかは早速女の子にちょっかいを出したりして隊長であるトゥフィークに睨まれたりしている。

トゥフィークは堅苦しい表情の規律を重んじる初老男性である。若いカーレドに道を調べさせたが案内係の女性に歌を歌ったりして結局目的地を間違って調べてしまったのだ。
彼らは言葉もよく通じないこの国で間違った町にたどり着いて途方にくれる。コンサートは翌日なのにもうバスも来ないというのだ。
厳格な隊長は渋る隊員を持て余し仕方なくたまたま訪ねたレストランの女性に助けを求める。

トゥフィークはその厳格さゆえに愛する妻子を失ってしまったという悲しい過去を持っていた。そのことを悔やんではいただろうがその性格はまだ消えたわけではなかったのだ。
道先を間違えたカーレドを厳しく叱りつけ、トゥフィークと仲良くしようとするレストランの女主人ディナの心に気づきながらも最後まで拒否してしまう。
ディナが若いカーレドと愛し合っているのを見たトゥフィークはやっと彼が何を失い続けていたのかを気づいたのかもしれない。
その後、カーレドを見てもトゥフィークが怒ったりしなかったのは彼の柔軟な心に何かをこっそり学んだのかもしれない。

イスラエル、という国は一体どんな国なのだろうか。その人々は。
エジプト警察音楽隊が迷子になってしまった小さな町は閑散とした静かな場所ででもそこでも人々は生活し、楽しみを知り、愛を求めている。
それはどの国のどの小さな町でも見られる普通の生活である。
言葉の通じない外国人が来れば戸惑いながらも一夜の宿を与え、グチをこぼしながら会話をし、食事を分ける。
親切すぎもせず追い出すわけでもなく当たり前の感情と行動に思える。
エジプト人という外国人が突然訪れた一夜を描くことで彼らの生活が身近に見えてくる。

私はエジプト人、イスラエル人の特徴というのが判らないのだが厳格で男っぽい隊長が心を開かないこを描いてトゥフィークをエジプト男性の代表にしてみせてもっと心を開いて会話をしたい、という意味合いも込めて表現しているのかな、とも思ったのだが。

ともあれ、迷子になってしまうという失敗が思いがけなくトゥフィークの心を開き、彼に人生をもう一度やり直してみよう、と思わせたのだ。
そのきっかけはどちらも問題児であるカーレドの行動だった。トゥフィークはもう一度ディナのような女性に出会えるだろうか。

監督:エラン・コリリン 出演:サッソン・ガーベイ ロニ・エルカベッツ サーレフ・バクリ カリファ・ナトゥール
2007年 / イスラエル/フランス


posted by フェイユイ at 23:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 西アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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