映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年03月25日

『情愛と友情』ブライズヘッド再び ジュリアン・ジャロルド

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BRIDESHEAD REVISITED

最近、続けてもう一度観たいと思ったのは珍しいことだ。それもただベンを観たい為なのだが。
有名な作家の小説が原作であるこの作品の物語自体はよく出来ているとは思うがそれほど自分が大好きな味わいがあるとも言い難い。
平民である主人公が特に美を愛する感受性に富んでいたことが大きく作用して知り合った貴族階級の友人の大邸宅とその家族の持つ荘厳な美しさに惹かれていく様子は共感できる醍醐味が溢れているし、絶対的なカソリック信奉者である母親はグレートマザーとしての存在そのままに子供たちを守りながら飲み込んでしまうその威力ある女性と対峙し愛した二人(セバスチャンとジュリア)を助けられるという自信を持ったチャールズはその心の奥に願わくば美しいブライズヘッドをも手に入れたいという気持ちがあったには違いない。だが結局彼はセバスチャンもジュリアもその手から失うことになってしまう。しかし時は移り再びチャールズは羨望の思いで見つめたブライズヘッドを訪れることになる。という苦く悲しく美しい物語である。
どの人物もありきたりの表層的な表現ではなくその人格は多面的であって善人だとか悪人だとか単純に示されるものではない。怖ろしい母親ですら彼女がどうしてそのような存在なのかはまた彼女自身の歴史を見なければいけないし、聖人である妻から逃れたマーチメイン卿もカソリックに反抗しているようで最期にはそこに戻り、信仰心から離れてしまえない心理を持っているのだ。
しかしそういう宗教的な物語も美を求め二人に愛を感じながらも富や家柄にも欲望を持つ主人公の生き様も理解はするが心から共鳴するようなものは感じない。
そういうものよりもこの映画の魅力はやはり(少なくとも自分にとっては)ベン・ウィショー演じるセバスチャンの造形だった。

昨日も書いたがベンはさほど美形と言われる容貌ではないが、その眼差しや微妙に動く表情が心を捉えてしまう。
長身のマシューの側に立つと小さくて痩せすぎているようにも見えてしまうがここではそれが却って彼の精神の脆さを表していて愛おしく思える。
この作品はチャールズの目で見たセバスチャンとその家族という物語になっていてその手法は文句なく素晴らしいものだと思うがそれでも意地汚くもっとセバスチャンの生き方を見たかったと思ってしまうのだ。彼と母親との葛藤、彼のほうから見たチャールズ、そしてチャールズ以外の男性との関係なども。
セバスチャンがチャールズと別れてからも死んでしまったわけではなく、生活しているという説明があることも彼がどんな風に暮らしているのか覗いてみたい欲求を感じてしまうのだ。
それにしてもベンの描いたセバスチャンは可愛くてしょうがない。ちょっと女性的な仕草をするが、そういう繊細な動作、チャールズを見つめる目などを見ていて飽きない。ワインを飲み煙草を吸う様子、チェスを払いのけ、大雑把に運転をするやり方、ヴェニスで妹にチャールズを奪われたと知った彼の佇みも失恋したチャールズを慰めようと伸ばした手を払いのけられた切なさも見惚れてしまう。
そして母からもチャールズからも逃れて行ったマラケシュの病院で髪を切った姿のセバスチャンの痛々しさ。
カソリックから逃れたようでまるで彼は宗教の人そのものの無心の存在になってしまったかのようだ。
チャールズはここでも自分が行けばセバスチャンを取り戻せるという身勝手さを見せているが彼の魂はもうこの世にはなく、チャールズが呼び戻せることはできないのだ。
チャールズはセバスチャンを見限りジュリアとの愛を求めていくことになるが映画として彼らの映し方の対比は残酷なほどだ。セバスチャンとの愛の眩い或いは悲しい表現と違いジュリアとの愛のあからさまに現実的で突き放した最後の物言いなどは製作者の意図を感じてしまう。
私自身はセバスチャンを愛しているのでこのやり方にさほど文句はない。ジュリアは憐れだし、チャールズは滑稽でもある。思い出の象徴である蝋燭の灯を消すことができなかったようにチャールズはその思い出の中で生きていくのだろう。私はそういうノスタルジーにはあまり共感できないのだ。

とにかくもうベンである。もっと他の映画を観たい、と言っても以前そうやって観てしまったので観れるものは全部観てしまってる。
もう次の映画の予定はあるらしいのだが。
 
監督:ジュリアン・ジャロルド 出演:マシュー・グード ベン・ウィショー ヘイリー・アトウェル 
2008年イギリス


posted by フェイユイ at 00:15| Comment(6) | TrackBack(0) | ベン・ウィショー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「ジャロルド監督は・・・どこか物足りないなあという印象」〜同感です。
ほんとう☆フェイユイさん仰るようにセバスチャン中心のどろどろぬたぬたしたお話(笑)ならイイですね〜。
昨日こちらにこの作品評出てから慌ててビデオ店へ走り深夜に観たはよいが途中寝てしまい^^;〜最初は良かったのです、美しいマシュー,コケティッシュなベン、美しい衣装,典雅な映像。。しかし段々と眠気が・・。長さを感じたというのは退屈した証拠ですよね。
何より私は重点である妹役の女優がダメでした。魅惑がゼロ。そして皆も本気で恋愛してるの?という感じ。チャールズもグード自身はいい味ある美形なのですがど〜もイマイチ何考えてるんだか、て男で。。全体に“熱”がないのですよ。セバスチャンとのロマンチックなシーンはいいのだけどそれ以上心に響いてこない・・訴えたいコトは解るのだけど演出が凡庸、という印象でしょうか。
最後セバスチャンの父の臨終場面、あのヒースの『悪霊喰』思い出しました^^;たったひとついいなと思ったのはこの父の愛人役。いい女優だし説得力ある演技。〜と思っていて最後にテロップを見て納得!・・グレタ・スカッキなのでした。
Posted by フラン at 2009年03月25日 17:06
セバスチャン主人公でもう一度やって欲しいです(笑)

妹役のヘイリーさんは損な役回りですねー。これって絶対監督がベンを可愛く見せようとして彼女をブサイクに撮ってるのではないでしょうか?
ベンの時と彼女を写す時は思い入れが違いすぎるような気がします。なんとなく観客が彼女に共感できなくてベンがかわいそう〜って見えてしまうような(笑)
でもどちらにしても深い愛が感じられなくて残念な作品でした。彼女に対するチャールズの最後の言葉ってキツすぎですよね。
ただ私的には久々にベンに恋心を抱いてしまって眠気も起きず目をランランとさせて見守っていました^^;
ああもっと観ていたかったです!!!
Posted by フェイユイ at 2009年03月26日 00:45
私はひたすらマシューでしたよ^^。妹役にはスカーレット・ヨハンセン辺りを持ってきて、マシューとベンの役柄交換したら?!とか勝手に考えてました(笑い)。
映画を見ると、予想しない次へまた繋がっていくのが楽しいです。私はグレタ・スカッキ繋がりで20年位前に観た『グッドモーニング・バビロン』もう一度みたくなりました。歳を経た自分が何を思うかな・・と。
Posted by フラン at 2009年03月26日 08:04
スカーレット・ヨハンセンは判るのですがマシューとベンが交換ですか?えー考えもしなかった(笑)
グレタ・スカッキは思い出せなかったんですよねー。作品タイトルを見たら見てはいると思うんですが。でも『グッドモーニング・バビロン』ってよさそうですね。私も観たいなあ。
Posted by フェイユイ at 2009年03月27日 00:41
はじめまして。

情愛と友情で検索して辿りつきました。
フェイユイさんのレビューを読んでそうそう!
とうなずくことしきりでした。

美形ではないしタイプだとかいうことも関係なく、とにかく演じるベン・ウィショーには見入ってしまいます。
相当退屈な映画であってもベンが出ているならそこだけは付く特別なものが感じられるのではという気がします。

映画自体には一番気になったのはやはりブランシュがチャールズに「生贄になったのは云々」の所ですね。そんなこと描いているように思えなかったのですが・・唐突にセリフだけが出てきて違和感がありました。
チャールズの野望に関しては中途半端な描き方なので観ていてよく分かりませんでした。

その辺りを抜きにすればロケーションが美しくベンが魅力的なので私的には満足でしたが。

この所立て続けに日本未公開作の「my brother tom」「baby」去年のTVシリーズ「Criminal Justice 」でベンを見ることがで来ました。(このあたりの作品をフェイユイさんはご覧になっていらっしゃいますか?)

ベンの現在撮影(準備)中の作品もなかなか
興味深いものの様ですよ。

長々と失礼いたしました。

Posted by フェデリ子 at 2009年03月29日 13:12
はじめまして、フェデリ子さん。ようこそおいでくださいました!
この映画への共感や疑問を同じように感じられたということで嬉しく思いました。
ほんとにベンが出ていればどんな映画でも見入ってしまいそうです。

ところで!!
フェデリ子さんが観られたというベンの作品はどうやってご覧になったのですか?
私は勿論未見なので凄く気になります。
よろしかったら是非是非教えてください。お願いします!!!!
Posted by フェイユイ at 2009年03月29日 19:37
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