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2009年04月29日

『狼少女』深川栄洋

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深川栄洋監督作品鑑賞3作目。これもまた特に目新しい題材で衝撃を受けるというようなものではないのだが登場人物一人ひとりに細やかな演出がされていて昔懐かしい雰囲気ながら新鮮な感覚なのである。この監督だったらどんな平凡な物語でも面白くなってしまうような気がする。

話題になった作品だったのだが昭和が舞台というのが流行っぽく『狼少女』というのがまたチープだなと二の足を踏んでしまったのだがそんなことはこれもまたまったく関係ないのだった。
変に昭和っぽく見せようとかいうのではなしに子供達の関わりが心に染みてくる。
酷い貧乏のためにいつも汚れている女の子小室ヒデコ、クラスの皆は彼女を穢れたものとして忌み嫌っている。主人公アキラは普通の家庭の子のせいもあってただクラスの雰囲気に流されて生きている。
彼らのクラスに美少女手塚留美子が転入してくる。頭もよく運動神経も優れている勝気な留美子はクラスのガキ大将にも負けていない。仲間はずれのヒデコと友達になろうと頑張るのだった。

ぼんやりしてるけど見世物小屋の「狼少女」の存在を信じ見たくてたまらないアキラ。そんなアキラは転入生留美子に振り回され、なんとなく避けていたヒデコの味方にさせられる。
子供達は(大人だってそうだけど)きちんと自分の気持ちを整理して話すことができない。何が正しいのか、何が必要なのか、そして正しくても必要でも自分の意志だけではどうにもならないこともあるのだ。
何でもできる誰にも負けない留美子も「もう10歳、まだ10歳」であるがゆえにやはり誰かを頼りにしなければならない。
幼い彼女が見世物小屋で「狼少女」になることは彼女の心にどういう重荷であるのか、屈辱だとか悲しさだとかそういう葛藤はこの物語では語られない。留美子の精神は他の子供達とはかけ離れている。彼女の並外れた強さはすでに何かを乗り越えてしまった強さなのだろうか。
決して泣かない様な彼女が友達になったと思ったアキラとヒデコから拒絶され旅立ちを決意する。そこでもまだ涙を見せなかった彼女が追いかけてくる友達を見て「ありがとう」と泣いた時、彼女がまだ子供なのだとお母さんが欲しかったという言葉にも泣けてしまうのだ。

この作品は子供達の物語だが本当のことを言えない「狼少女」であることも周りの流れでつい自分を偽ってしまうこともうまく気持ちを伝えられないことも大人も同じことなのではないだろうか。
アキラが「狼少女はいない」と叫ぶ時、いつもだんまりのヒデコが「留美子ちゃんの所へ行こう」と言った時、ガキ大将が留美子のランドセルを走って持って来た時、心を伝えるためには走って叫ばなければいけないんだと涙が止まらなくなってしまうのだ。
彼らはまだ幼くて別れてしまわなければいけないけど、いつかきっと再会できる。再会することがなかったとしても心の中から友達が消えてしまうことはないだろう。
ヒデコも留美子もアキラもきっと素敵な大人になれるんじゃないかなとなんだかそんなことを考えてしまういい映画だった。

ただ、この映画でいくつかひっかかる部分は確かにあると思う。特にヒデコのお母さん。本当はヒデコの家を描写しない方がよかったのでは、とは思ってしまう。もしくはヒデコの母親が悪そうに描かれていれば疑問もなかったのだがいい人として登場してきたのでヒデコの状況がよくつかめなくなってしまった。新聞配達は仕方ないのかもしれないがあの髪はやリすぎのような気もする。
留美子の実生活の説明がないのもやや怖い。何故彼女があんなにまで身奇麗にしているのか、見世物小屋のオヤジ(田口トモロヲ)との関係も危ぶまれる。
観ていておやっと思わなくもなかったがとにかくラストで全部泣いてしまって流された。

アキラの友達くんは、ほんとに昭和な顔でよかった。

私世代は本当はこういう見世物小屋を見れたのだけど残念なことに私は体験できなかった。実際観れなくてもそういう小屋があったということだけでも知っていたら面白かったのだが。同じ年齢の相方はしっかり見たらしい。悔しい。
変なものを売りつけるオヤジはいた。こういうトランプじゃなかったが、変な石膏板みたいなのから綺麗に動物模様みたいなのを切り取れたらお金をくれるとか、言われて。私もしっかり騙されて買った(泣)

監督:深川栄洋 出演:鈴木達也  大野真緒 増田怜奈 大塚寧々 利重剛
2005年日本


ラベル:昭和 友情
posted by フェイユイ at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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