映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年05月11日

『宮廷画家ゴヤは見た』ミロス・フォアマン

goyas_ghosts_.jpg
GOYA'S GHOSTS

ゴヤの映画といえばまずスキャンダラスな「裸のマハ」及び「着衣のマハ」そして怖ろしい「わが子を食らうサトゥルヌス」だとか突如変わって可愛らしい「ドン・マヌエルの肖像」とか「巨人」(最後の最後に出てきたが)とかの絵画が出てきそうなものだが、そういうメジャー系でなしにスケッチ画を元にした歴史ロマンに仕立て上げているのが面白い。
 
タイトルロールは「ゴヤ」だが主人公は彼ではなくバルデム演じるカトリック修道士ロレンゾと裕福な商人の娘イネスであり恐怖の異端審問にを通して教会と市井の人々の生活と思想が描かれていく。
かつてのカトリック教会の異端審問は怖ろしい。この作品ではやや下火になった異端審問を修道士ロレンゾがもう一度復活させようと進言することから始まる。
ロレンゾの人格描写の人間臭さ、嫌らしさは見事としか言いようがない。ハビエル・バルデムが見惚れるばかりのあの図太い顔立ち(あの横顔!)で演じてくれる。神を信じれば拷問を受けても神が耐える力を下さる、と言った側からあっという間に自白してしまうのは苦笑いだったが(修道士を逆拷問というのは驚いた。凄い肝っ玉の父親だがそれでも娘を救えなかった)美しいイネスの色香に惑わされ、教会から逃げるようにフランスへ赴き、フランス軍側に立って財産家となりカトリック教会の復活により結局裁判にかけられることになる。
だがここでロレンゾはもう逃げることをやめてしまう。それが何故だったのかはっきりとは判らないが家族と対立する立場にはなりきれなかったのかもしれない。
裕福な商人の娘イネスは力なき民の姿として描かれていく。罪もなく捕らえられ拷問によって異端者だと告白し修道士ロレンゾの子供を産む羽目になり子供は取り上げられそのまま牢に15年間閉じ込められる。出てきた彼女は長年の劣悪な環境とさらに拷問も受け続けたのか顔は歪み精神も磨耗しきっている。
彼女を強姦したも同じロレンゾをずっと慕い続ける姿は悲しい。最後、処刑されたロレンゾの手を握りしめて他人の子供を抱いて歩いて行くイネスが幸せそうであるのが痛々しい。
イネスに天使の美しさを感じた画家ゴヤはここではロレンゾと対照的な存在にする為に全くの善人として描かれている。実際はもっと享楽的な性格もあったらしいが。イネスへの愛はまったく精神的なものだがずっと彼女を思い続けている。絵画に対してもイネスに対しても献身的で真面目で情愛に溢れているが、あの皮肉たっぷりの悪辣な絵画やエロティックなマハなどを見てるともっと激烈な変わり者だったんじゃないかと思うのだが本作はゴヤが主人公ではないからこういう温厚な人間として登場したんだろう。ところでゴヤが最初出てきた時、チェ・ミンシクかと思って驚いた。よく観れば違う(当たりまえ)が、ずっと観ててもミンシクにしか見えない。ただ物凄く背が高そう(ミンシクも背は高いが、この人はバルデムを見下ろすほどでかい)
画家の目を通して歴史を描き出すというのは他にもあるがとても効果的で好きだ。

監督:ミロス・フォアマン 出演:ハビエル・バルデム ナタリー・ポートマン ステラン・スカルスガルド ランディ・クエイド ミシェル・ロンズデール ホセ・ルイス・ゴメス マベル・リベラ
2006年 / アメリカ/スペイン


ラベル:歴史 宗教
posted by フェイユイ at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 欧州 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。