映画・ドラマ・本などの感想記事は基本的にネタバレです。ご注意を

2009年06月04日

『あなたになら言える秘密のこと』イザベル・コイシェ

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LA VIDA SECRETA DE LAS PALABRAS/THE SECRET LIFE OF WORDS

出だしから音と沈黙が交錯する不思議な感覚があり、騒音の工場内で皆が耳を塞ぐためのヘッドホンをしているのに唯一人何もつけてない若い女性がいる、と思ったら彼女は補聴器を付けていて、外へ出たらスイッチを入れるというこれも面白い表現だと思い映画の世界へ導かれた。
暗く笑うことのない女性、金髪のきれいな顔立ちなのに頑なで心を全く開かない人間のようだ。仕事は真面目すぎるほどだがそのせいで却って皆から嫌われている。その為に会社から1カ月休暇を取って旅行しろと命じられる。
そんなことがあるのか、と思いながらも全く楽しむこともなく旅立ち、唐突に看護師を探している男性と出会う。いきなり何事にも無関心だった彼女が「私は看護師です」と名乗る。
彼女が連れて行かれたのは海上の石油掘削所であり、そこに事故で大火傷を負った一人の男性が横たわっていた。

前半の謎めいた暗く重い雰囲気、補聴器を付けた彼女が聞きたい時だけスイッチを入れるという表現が心を閉ざしている暗喩にも思える。
遠海に浮かぶ石油掘削所というイメージも孤独な人間たちの吹き溜まりであるという設定も火傷を負い一時的に視力を失い身動きできずヒリヒリと体が痛む男に彼女が出会うという展開も興味深い。
そして寡黙な彼女が孤立した小さな場所の中で同じようにあまり社交的ではない男たちと過ごすうちに少しずつ表情が和らいでいく過程はどきどきするほど見惚れてしまった。こんなに魅力的な物語はないようにさえ感じた。
問題は後半からの告白からである。
前半の重苦しさ、若く美しい彼女をここまで寡黙にさせ心を閉ざさせた原因を何なのか。それは戦争によって彼女と友人が味方の兵士によって拉致され連日レイプされ続け、拷問に会い、友人の拷問を見せられ救えず、親による子供の残虐な殺害場面を見せられ、そして自分一人が生き残ったという事実である。
勿論そういう事実はあるのだろう。そういう重荷を背負って生きている人もいるのだ。
だがこれはフィクションである映画だ。作られた映画の中でまるで何かのミステリーのような展開の後で種明かしの告白に使うのは、こういう表現で使うのは空しい気がする。
例えばこれが彼女が男の手当てをする間に微笑むことができるようになり、お互い家に帰る。
その後、男はなんらかのきっかけで女性が過去にそういう事実があったのだと知る、というだけでもよかったのではないだろうか。
海の上で数日、手当てを受け、与える間にお互いが何も言わないまま心が癒されたということにしても。
途中までのティム・ロビンスがとてもよかったのに告白を聞いて泣く、という演技は演技だと判っているだけに心が冷めてしまうのだ。それは彼がいけないのではなく、こういう押しつけがましい演出にしてしまったことに冷めてしまうのである。
どうしても彼女に告白させたかったとしてもこの形で泣かせるのは白々しい。もう少し後で、とか時間を経過させてしてほしかった。さらにジョゼフが訪ねていくコペンハーゲンのカウンセラーの女性がジョセフを叱りつけ侮るかのように話すシーンは説明的過ぎてますます興ざめになっていく。もっと簡潔にまとめて欲しかった。
また二人を無理に結婚させる必要はないし、ハンナに語りかける声が最初と最後だけになっていて最後にその声の主が彼女が失ったレイプの時にできてしまった子供の死んだ声だというのも何かやってはいけない恐ろしいことのようにも思える。

途中までの素晴らしい描き方は申し分ないが、後半泣かせようと感じられてしまう部分はもっとひっそりと表現してほしかった。
作品中でも語られるように戦争の傷を負った人は本当に体験を話したくないと聞く。ジョセフの話で彼女がすべてを話してしまうことにしなくてもいいのではないだろうか。

監督:イザベル・コイシェ 出演:サラ・ポーリー ティム・ロビンス ハビエル・カマラ ジュリー・クリスティ レオノール ワトリング エディ・マーサン スティーブン・マッキントッシュ
2005年 / スペイン

日本語タイトルがすでに作品を侮っている気がする。

ティム・ロビンスはここでもやっぱりキュートだけどね。



posted by フェイユイ at 23:11| Comment(2) | TrackBack(0) | ティム・ロビンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
イキナリですが、毒吐いていいですか?^^;勿論フェイユイさんにでなく;イザベル・コイシェというこの監督にです。・・この『あなたに・・』有名だし「あらティムさん出てたのね」思い評読ませて頂いたら(私は未見)・・『パリ・ジュテーム』思い出して。フェイユイさんの感性で上記のように感じるならこの作品観ることもないだろうしやっぱり、このコイシェという人は・・嫌いだなあと思ったのです。
『パリジュテーム』では奥さんが癌で亡くなるエピのあれ。私はこれがすごく観てて嫌な感じで・・フェイユイさん仰る通り“押し付けがましく”“説明的すぎ”“・・やってはいけない恐ろしいこと”・・だってどちらも悲惨な残酷な出来事や死というものを「面白がって」ませんか?本当に、そんな地獄のような辛いことは二度と人に云いたくないものですよね当事者は。そこを興味本位な部分に持って来ている。「レイプでできて亡くなった子供の声」だと?!何か“死”をおちょくってませんか。許せない気持ちです!題名も明るい感じでフザケテますよねホント・『パリ〜』のあの作品時のイヤアな感情の意味が今日解りました。あの作品中の旦那、奥さんが癌と知ったら急にいい恋人になっちゃって、それをオモシロ可笑しく表現しちゃって(店員が声を合わせたり)本当の愛情なんて何もないじゃないですか。全く薄っぺらなニセモノ愛です。・・またそんな作品に「感動した」といっている人が意外多くいたのも悲しかった。この監督に、騙されたら、駄目だぞみんな〜〜(誰にいってる^^;;)!フェイユイさん、さすがの評ありがとうございました。フェイユイさんの西川美和嫌いに匹敵します・コイシェが私には。しかし大変な毒吐いてしまいすいませんでした。。
Posted by フラン at 2009年09月24日 21:13
フランさんは未見なのにこの映画、まさしく予見してますね。
途中までとても夢中で観てただけに余計嫌な気持ちになりました。
ほんとに観たら物凄く嫌になります。こんなロマンチックなタイトルをつけるような内容じゃないしティムが頑張って演技してるのも哀しくなってしまいました。
毒じゃないですよ全く。ほんとに酷い映画なんですこれ。多分多くの人がこれ観て感動してしまうんです。泣かせる映画というものを否定はしませんが、ここまで惨たらしい実話を露骨に持ってくるのは無神経だと思いましたね!
Posted by フェイユイ at 2009年09月25日 01:33
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